異世界闇金道~グレーゾーン?なにそれおいしいの?~(仮題

慈桜

第十三話

 ワタシ・・・とお姉ちゃんは双子の姉妹で、このネオスラムで生まれ育った。 生まれた時からサーカスの団員で、物心付いた頃から芸の訓練をしていたの。 そのサーカス団の名前がティアードロップ。    代々続くサーカス団で団長は涙の刺青を入れるのが慣わし。    父である団長は受け継いでもしばらくは涙の刺青を入れなかったみたいだけど、ピエロのメイクが楽になるようにって目の下に涙の刺青を入れた時に、お姉ちゃんとおそろいで真似して入れてひっぱたかれたり…話しがそれたね。 表向きは張りっぱなしのテントで週末に笑いと感動と驚愕を届けるエンターテイナー。 でも裏の顔は闇ギルドの奥深くに存在する殺し屋集団だった。 壁を道のように歩き音も無く殺す。 腕の良さを買われて国からの依頼も来る程だった。
 でもそれがいけなかった。
 次第にファルトムントはティアードロップを危険視するようになったの。 闇ギルドが手にしてもいいような情報じゃない殺しの依頼が多かったから。 そして遂に国はティアードロップを消す為の依頼をした。 当時ワタシ・・・達は14歳、お姉ちゃんはその時すでに界隈では有名な凄腕だった。
 依頼はファルトムント王国第三王子の殺害。
 ワタシは臆病者で殺しの依頼はさせて貰った事は無かったけど、この時は子供ながらに嫌な感じがしてお姉ちゃんに色々聞いて回った。
「ねぇお姉ちゃん!!なんかみんなおかしくない?」
「え?気のせいじゃないの?」
「おねえちゃんが一番変だよ?」
「ボクが?いたって普通だけど?」
 そしてこれがお姉ちゃんと交わした最後の言葉になった。
 おねえちゃんと団員のみんなの打ち首が並べられて、第三王子の殺害未遂が罪状で挙げられた。
 そんなの成功しようが失敗しようが同じ結末になっていたのはわかりきった事なのに。 内容を知っていればみんなを止められたかもしれない、止められなくても一緒に死ねたかもしれない。
 でもどうせワタシも殺される。
 遅いか早いの差だって。
 でも探されなかった。
 大きくなってステージに立てるようになってからは、まるで二人いるかのようなイリュージョンがワタシとおねえちゃんの芸当だったから、本当に二人いるとは思われてなかった。 幕を下ろす時の挨拶もどっちかが出る風に徹底してたから。 けど後で気付いた。 おねえちゃんは自分の最後がこうなるんじゃないかって気付いてたんじゃないかなって。 ワタシの為に徹底してたんじゃないかって。
 考えたら、この演目も考えたのはおねえちゃんだった。
 全てワタシのタメ?
 そう考えたら涙が止まらなかった。 おねえちゃんと変わってあげたかった。 死にたいって嘆き続けて、でも死ねなくて。 おねえちゃんの分も生きようって。
 生きる覚悟を決めてからは早かった。 目を隠せる眼鏡を盗んで、髪もばっさり切って、おねえちゃんならこうしたはずって、いつもお姉ちゃんの事を思いだしながら真似をして生きた。 そして、次第にあの日の事を調べるようになった。
 誰がどうやってお姉ちゃん達を殺したんだろって。
 そして簡単にわかった。
 全員金属の糸のような物で殺された。
 そんな芸当ができるのはあいつしかいないって。
 ボク・・はシクラールの名をシクラと変えて、貴族街に出入り出来るまでのし上がった。
 ボク・・はそいつを……。
「とまぁ、こんな感じで話しすぎちゃいましたね、できればここを手に入れた報酬として黙っていてくれるとありがたいです」
「シクラちゃん…復讐するの?」
 シクラちゃんは少し俯いた後にそっと笑った。
「そんな怖い事できません!ティアードロップのみんなでも敵わなかったんですから」
 触れただけで割れてしまいそうな儚い笑顔に俺はなんと言葉をかえしていいかわからなくなっていた、ここで手を貸すのは簡単だがシクラちゃんが納得するわけないだろう。
 思い返せば俺はこの時ここまで深くは考えていなかったと思う。
 ただ金貸しなら金貸しらしい回りくどさが必要だとは考えたはずだ。
「ありがとうシクラちゃん、今回の報酬はどうしたらいい?」
「報酬だなんて、こんな不良物件紹介したなんてばれたら辞めさせられちゃいますよ!!ただ初めての仕事だったんで頑張っただけです!!」
「そうか…」
 無理に明るいシクラちゃんの笑顔を本物の笑顔に変える為には…。
「じゃあシクラちゃん、話しは変わるんだけど、一つゲームをしないかい?」
「ゲームですか?」
「そうだ、俺は今からシクラちゃんに金貨100枚を貸す。5日後の夕方最後の鐘から夜、月が真上に来るまでの間、約6時間、鐘3回分の時間シクラちゃんは俺から逃げ切れば金貨100枚ゲット、捕まれば5割利息つけて金貨150枚返してもらう。どう?」
「どんだけ暴利なんですか!?でも、ボク逃げ足普通じゃないですよ?」
「壁を道のように歩くってやつか?おもしろそうじゃね?金持ちの道楽だと思ってやってみるか?」
 目の前で金貨100枚ずつで分けて貰った袋を一つ取り出し、シクラちゃんの胸元に投げてみる。
 日本円で一千万だ。 例えて言うならトップアスリートの外国人が黒髪黒眼の金だけ持ってる普通の奴にソレ持って俺と駆けっこして勝ったらやるよって言ってる構図だ。 シクラちゃんが普通の女の子ならお断りってなるだろうけど。 普通じゃないんだから。
「いいですよ!!やりましょう!!」
「毎度あり」


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