異世界闇金道~グレーゾーン?なにそれおいしいの?~(仮題

慈桜

第四話

 


 家畜は多いに越した事は無い。 先ほどのパチンコ屋に行くと高田くんはジャンプ分のお金をマサに渡していた。 2万5千だ。
「なんとか出たんで」
「そうか、じゃあやめておくか?」
「いえ、是非連れて行ってください、友達も紹介して一気に稼ぎたいです」
 貪欲なる家畜高田くんの完成である。 幹部で運転手のマサが何故こんな小口を受けているかと言うと、やはり馬鹿にならないからである。 そして本格的に詰まれば無金利月賦の借用書を巻いてさえいれば親が責任を持ってくれるので焦げ付く心配も無いのがみそだ。
「高田くんさぁ、何処に住んでるの?」
「自分は今四谷の学生マンションに住んでます」
「へえ、家賃とか高いんじゃないの?」
「はい8万円ですね」
「ふぅん、じゃあさ、住所そのままでいいからそこ解約してさ、こっちで用意したワンルームで生活してくれたら月2万あげるなんて言われたら嬉しい?」
「え?そんな事できるんですか?」
「うん、その変わり月1だけ夕方まで家に居ないで欲しい日があるって条件なんだけどさ」
「ぜ、ぜひ住みたいです」
 コレは生活保護の不正受給だ、ウチが扱ってる表向きな企業で、建築関係の人材派遣業がある。 その会社で雇ってるジジイ達はウチで金借りた家畜達だ。 ジジイ達に生活保護を受けさせて、福島南相馬の除染の仕事、飯付き寮付きで日当16000円の仕事に放りこむ、国から最低保証の金額が設定されており、3万円と数千円の日当からピンはねして2万近くの利益を頂くことが出来る。 放射能が強い日なんかは開始20分でその日の作業中止、時間を余らせて出るはずも無いパチンコ屋でパンク。 月の返済と余った金も残せずにドツボにはまるジジイ達。 そして生活保護の8万円を毎月取りに東京へ戻り、また帰っていくアンコウ共。 だが、生活保護で厄介なのは割り当てられる家だ。 生活観がまるで無いと調べが入ったりと厄介なのである。 そこで月1の調査の日以外に大学生などに住んで貰えれば、生活保護を受け続ける事ができるって算段だ。 微々たる銭だが銭は銭だ。 あのジジイ達がウチなんかからお金を借りるからこんな事になるんだ。
 しかしあんなジジイ一人頭で月に換算すると70万近い利益を齎してくれるのだから馬鹿に出来ない。
 元は南千の山谷で路上生活をしていた奴等がパチンコで勝った負けたできるのが幸せだとかなんとか言ってたけど、あまり理解したくない話しである。
 そうこうしている間に北千住のマンションについた。 この12階建てのマンションは債務者に返済の為にオーバーローンを組んで買わせたマンションを使わせて貰ってる事務所兼自宅だ。 大口の顧客だとこういう技も使えるような社会的に信用のある客とかが多いのは本当に助かる。 11階は全フロアをぶち抜いて改装した。 月の支払いはそれなりだが、調子に乗ってヒルズに住まないだけ褒めて貰いたい。 12階は2フロアを繋げて自宅として使っているが、金庫的な役割がメインで大抵は11階で過ごしている。 今日の朝に居た家なんか竹ノ塚だからな。 あの情緒溢れるアンダーな感じが住みやすくてたまらん。
「ようこそ君の新しい職場へ」
 学校等にある情報処理室を思い浮かべて頂きたい。 この部屋はまさにそれだ。
 ただ少し違うのは最高級デスクに改造PCを設置して、区画毎に冷蔵庫や電子レンジを複数台設置し、アメニティとして無料カップラーメンとジュースの自販機や冷凍食品を完備している。 高級ネットカフェと言っても過言ではないのかも知れない。
「すごい…」
 最高の褒め言葉だ。 この部屋の最奥にある鍵付きの個室それぞれが幹部専用の部屋だ。 と言ってもみんな自宅に完備している為にこの部屋を使う事は稀であるが。
「高田くんのデスクはここになるからよろしくね、わからない事は隣の木田さんに教えてもらって」
「俺が木田だ、よろしくな、新入り」
「よろしくおねがいします。高田です」
 そして高田が家畜の仲間入りを果たした。 現在この部屋で稼動中なのは52名、残りの37名はまだ来ていないようだ、深夜帯のモンスターを狙っているのだろう、それかこの時間は忙しいのか。 なんにせよ高田くんは記念すべき90人目の家畜なのだ。 あと10人はなんとしても集めたい。 めざせ家畜100人まであと少しだ。
「じゃあマサ、俺達もみんな来るまでログインしようぜ」
「そうですね、じゃあ行きますか」
 俺とマサは個室じゃなく入ってすぐのデスクを良く使う。 すぐにデスクにすわりマイクとヘッドホンを装着するとゲームを起動する。
 音声通話でやるのが一番臨場感があっておもしろいのだ。
 俺がログインすると家畜達がわなわなと集まってくる。
「おはようございますボス!!」「おざぁーす!今日もかせぎますよぉ!!みんな黒眼龍に向けて準備しまくりです!」
 部屋の中からかすかに聞こえる声がヘッドホン越しに響くすっかり慣れた感覚に頷きながら挨拶を返していく。
 そしてウチの買取担当のプレイヤー達がヘトヘトだと訴えかけてくる。
「サカエさぁぁぁん、従業員増やしてくださいよぅぅぅ、死んじゃうよぉぉぉぉ」「そうですよ!!死んじゃいます!!昨日なんて木田さんラプトルの牙何個持って来たと思います??3752個ですよ?一ヶ月ずっと集めてたとかあの人馬鹿ですよ!!232円の買取の計算で100個づつで38回!!もういやっ!!」「馬鹿とかひでぇなおい」
 全身を黄金の鎧に包んだ木田のアバターが困ったポーズを浮かべる。
「おう、木田さん、横のドワーフは高田くん?」
「は、はい!!高田です!!」
「なんでドワーフにしたの??」
「鍛冶で一攫千金を狙いました!」
「ふふ、いいね、早く上に登ってきなよ。お得意さんになってあげるから!!」
「はいっ!!で、このスターターセットはどうしたらいいですか?」
 ドワーフのキャラが?マークを浮かべて首を傾げる。 いつもなら没収するのだが、今回は個別にチャットを送り、使えと指示を出す。
「当然没収だ」
「そんな殺生なぁぁぁぁ」
「みんな通る道だ、耐えろ」
 木田のフォローも入るが裏で示し合わせた演技だ。
 気分が変わった。 生産職をファーストジョブに選ぶ奴はよっぽどの玄人か基地外のどっちかだ。 金は人間を狂わせる。 高田豚の欲はいかがなモノかと気になった。 ただそれだけだ。 スターターを使えば簡単にレベル40ぐらいまでは上がる。 そこで奴はどんな行動をとるのか…実に楽しみだ。

 そして外から青龍の装備に身を包んだ侍が入室してくる。

「遅くなりました」
 マサだ。
 皆から絶大に憧れられているTOP10入りのランカーであるマサのアバターは痺れる程にかっこいい。
 俺?
 俺はパンイチだよ。 マイルームではパンイチってのは俺のポリシーだ。 なんでかと言うと俺のプレイスタイルに関係する。
 千職師サウザンドマスター
 初心者救済支援アイテムと金を湯水の如く使い手に入れた全サーバー唯一の職業。 全職業特性と技能を併せ持つリアルチーターだ。 なぜTOPランカー独走じゃないかって? そんなもんプレイ時間が廃神達に適うわけがないからだよ。 それに器用貧乏にもなりやすい。 っていうか確実になる。 まぁそれはおいおい話すが。
「じゃあ新しく追加された西の大陸に行ってレイドを組もう。そろそろみんな集まる頃だろうし」
 そんな話しをしている間に幹部達が手錠で繋いだアタッシュケースを持ちながら集まってくる。
「あ、マサ、俺の部屋に置いてきてくれる?」
「かしこまりました、集計は?」
「明日するからほっといていいよ」
 マサはうんと頷き幹部達と共にエレベーターに乗り込む。 そんな現実より大切な世界がここにある。
「さぁ、戦いのはじまりだ」


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