だんます!!
第184話
おいおい俺だよダンマスだよ、おはこんばんちには。ラビリだよ、ラビリ。
なんか頭軽いな。なんでだ?
髪切ったっけ? いや、長いよな。
まぁいいや。
てか誰だ! 主役息してないとか言った奴!ってそんなのはどうでも良くてだな、一先ずはカブトの所から地球に戻ってきた。
じゃあ早速冒険者達にフェリアースのラディアルをぶち込もうかって言いたいが、そんな簡単な話ではない。
ラディアルは命が持つ純然たる力であるが、俺が干渉することによって、それは俺が扱い易いラディアルであるダンジョンポイントと変換される。
つまり……なんて言えばわかりやすいかなコア。
『冒険者の存在位階上昇に必要なラディアルはDPをDM結晶に変換した際に生じる活動生命力、つまり希薄なラディアルの吸収によるものです』
うん、専門用語を並べられると、混乱してしまうかもしれないが、つまりそういうことなんだ。
DPを1としてDMが100になるとしよう。あくまで仮定だが、いまは気にすんな。
そのDMを三つの魔石に変換して、お馴染みのゴブリン君を作ったとする。
冒険者はゴブリンをビシバシとしばきまわしてブチ殺した後は、メニューに魔石をブッ込んでDMに変換する。
33.3333って端数が出るけどキリがないから30DMとして小数点以下を過剰ラディアル、ゲームでいうところの『経験値』として冒険者のエネルギーに加算する。
簡単な仕組みはこんな感じなんだ。
難しく言えば魔物に命を与える式を結晶化の際に漏れ出るよう設定して活動生命力を冒険者に云々と小難しい話になるからしない。
まぁ、もっと簡単に言うと毎日トレーニングをして力がついて行くと、感覚も共に慣らしていくから、自分の肉体が研ぎ澄まされて行く感覚が理解できるが、寝て起きたらアメコミヒーローみたいな超人になってました、見るもの全てワンパンです。なんて状況になったらまともに歩く事すらできんだろう? マグカップ粉砕不可避だ。
いや、違うな。
『冒険者としての存在維持が困難になる、と言いたいのですか?』
確かに存在改変も行える程の過剰エネルギーとなるだろうが……って、俺は思考の渦に飲まれて誰と話しているんだろうな。
『ご心配なく。いつものマスターですよ』
さて、小馬鹿にされた気もするが、上位冒険者を閻魔とのダンジョンバトルで戦えるようにラディアルを付与するのは時間がかかるのはいい。
それを即座に可能とできるのは時を司るクソウサギことグランアースのレイセンぐらいだろう。
それはヤムラ、いや、あっちの俺に頼むとしても、此方もただ指を咥えて黙ってるわけにはいかない。
「コア、冒険者権能の位階上昇を経験してる連中にフェリアースの過剰ラディアルをゆっくりと流してくれ。150層から250層程度の領域になってからは更にゆっくりだ」
『かしこまりました。存在維持可能範囲でのラディアル流入を開始します』
じゃあ、お次はあのチョンマゲの馬鹿の所に行って『マスター、閻魔による攻撃です。札幌、仙台、名古屋、大阪に死霊雲が発生しました』
えぇ……なんで今更死霊雲? ただのパンデミック攻撃じゃん。
国とか襲うなら有効的でも、ダンジョンバトルで使っても無駄にラディアル撒き散らすだけだろうに。
「東京は?」
『ヤムラ、レイセン、ジャイロの3名により死霊雲の消失を確認しております』
「あらそう。じゃあ俺たちも仕事しなきゃな」
と言っても五都市同時襲撃は対処するのに面倒この上ない。
パンデミック必須のゾンビ雨降らすとは嫌がらせとしては満点クラスだな。
『民間人がゾンビになればラディアルも奪われますしね。日本人はDPが高いですから放置すると面倒なことになります』
流石コアちゃん、言いたいことを言ってくれるじゃないか。
じゃあ、行こうか。
先ずは札幌。
時間との勝負なので急ぎたいのだが、札幌に到着すると眼前には別世界が広がっていた。
思い描いた北の大都会は氷に閉ざされた永久凍土のような有様である。
叩き割ったら顔面狼の熱いバンドの連中が出てきそうなぐらいに氷に閉ざされている。
にも関わらず民間人は普通に街を行き交っている。
その不釣り合いな絵面に目眩がしそうだが、答えは早々に理解できる。
「オラオラオラオラァ!! 死体が偉そうにはしゃいでんじゃねぇぞぉ!」
「あははは! 貫け雪月花ぁ!! あははは!!」
「喰らえ喰らえ氷雪龍! 試される大地を舐めてんじゃねぇぞぉ!!」
北海道の冒険者が氷雪系の超高級アークス振り回してゾンビごと街を凍らせまくってやがる。
あのケットシーのマロンが持っている氷雪姫の召喚石クラスのとんでも武器をみんなが持っていると言えば凶悪さは伝わるだろうか……。
『殺戮大臣信長がプレゼントしたようですね。彼は何手先まで読めるのでしょうか』
「いやいや、読んでないだろ。どうせ適当にあしらって渡したとかが関の山だろ。コア、仙台に飛んでくれ」
そして仙台に転移すると、そこでも似たような光景が広がっていた。
札幌ほど酷くはないが、仙台の冒険者達がゾンビを誘導して燃やす作業を繰り返しているので、俺の出る幕は無さそうだ。
『逆に稼げて嬉しそうですね』
「ねぇ、コアちゃん知ってたよね? 助けが必要な所に飛ばしてくれない?」
『命令に従ったまでですが? 早期解決が目的であれば札幌、仙台、名古屋、大阪共に援護が必要ではありますが、冒険者でも対処は十分に可能です。特に名古屋、大阪などは高位階の冒険者が多く存在していますし』
「はいはい、わかるよ。その心は閻魔が動いたからゾンビ雨のその裏を読めって言いたいんだろ?」
『そこまでは言っていませんが、さすがマスターです。思慮深いですねっ』
「やめて。その萌え萌えの声でハートとか音符がついてそうな感じやめて」
『ラブブレイブの花火の声ですよ。こわいいでしょ?』
ここで否定すると、松岡君ばりにラブブレイブについて語り出すからな。
コアちゃん恐ろしい子。ガクブル。
『心外です。ラブブレイブは至高なのに』
あれ? 聞こえないようにしてたはずなのにな。
さて、またもや話が逸れてしまったが、本題は閻魔の狙いについてだ。
アンデッドの雨を降らせるのはビッグサプライズな嫌がらせではあるが、閻魔はそれに乗じて何かを企んでいる筈だ。
もしくは騎士を混ぜて投下するかと思ったが、札幌、仙台でも確認は取れなかったし、東京は勿論のこと、名古屋、大阪に関しても『問題ありません。全てアンデッドです。特段危険な個体は存在しません』とのことだ。
奇襲の裏で何を狙ってる?
誠に不本意だが俺が閻魔の立場なら目くらましをして何をするか……。
俺を封じたい、ヤムラが存在するかどうかの確認、いや、閻魔はその辺の事情はわかっていない筈だ。俺をヤムラとして扱っていた。
ゲームメイクとしては? 
まず信長の存在の有無は大きいが、アフリカで数億を越える人間のラディアルを回収し、更には米国で大虐殺を行なったアイツは、現状不可侵領域にある。
力が不完全な閻魔なら、大駒は狙わずに玉を狙う。
「世界樹?」
『魔女が集結し始めている世界樹に手を出しますか? フルムーンガーゴイルも存在しているのに』
可能性は低いな。
世界樹を取り込むのが狙いであれば、いくらなんでも仕掛けるのが早すぎる。
少なくとも数年単位で力を溜め込む必要がある。
いや、シンプルに冒険者狙いか?
「コア……存在が確認できない冒険者はいないか? いや、夢幻に囚われたと言うべきか」
『いえ、問題ありません。誰も欠けることなく存在しています。』
「よし、わかった。じゃあ、とりあえずはゾンビ雨の軽い補助をしながら、閻魔の狙いを探ろう。此処からは我慢比べだ。カブトから世界式を重ねられてからが本番……あれ? イナバは?」
此処にきてようやく俺は重大な事実に気づいた。
レィゼリンの宮司であるカブトから預かった祈りの具現化、巫女であるイナバが消えている。
確かに俺の頭にしがみついて転移したのは間違いない。
だが、カブトを思い出すまでにスッポリと頭からイナバの存在が抜け落ちてた。
やけに頭が軽いと思っていた違和感はそれだ。
だが……俺の感覚、記憶に干渉できる存在はたった一つ。
「コア、イナバをどうした?」
『んにゃっ、えっ? えっ? コアちゃんどこなのん? ありゃ? ほえ?』
勘のいいヤツは嫌われるとはよく言ったモノである。
俺は頭の中から聞こえるアホ狐の声に呆れを通り越した絶望を覚えて頭を抱えてしゃがみこんでしまった。
「イナバ、落ち着いて聞け。そこに何か書き置きやメッセージはないか?」
『ラビリ? あ、あるのん。えと、気になる事があるから少し家出します。雑務はイナバちゃんにお任せ下さい? い、いやなのん。イナバはコアのお仕事は嫌いなのん!』
あぁ……あぁぁぁぁぁ……そりゃわかるよ、そうだよな。鳥さんって籠にずっと閉じ込めてたら脱走願望出ちゃうよな……けどさ、ダンジョンコアが家出ってなんなのぉ? もう、なんで俺って貧乏籤ばっかり引くんだろ。
もうダンジョンバトルどころじゃないぞこれ。
頼むからヤムラのとこに行っといてくれ。
お前の代わりは他にはいないんだから……。
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