だんます!!

慈桜

第百十八話 遊びと共に動き出す?

 掲示板はいつになってもやかましくていいな。
 DMの紙幣化は順調に進んでる。 今は国との取引でしか使っていないが、これから阿国の特産や冒険者の増加によりジワジワ浸透していくだろう。 デザインは黒くて光沢のあるお札だが、ミダ○マネーではないからな。
 DMショップの使用権限開放も、全商品を購入出来るのは、日本人のみにさせてもらっている。 変に日本人に成りすました世界各国の在日外国人に兵器購入をされるのも邪魔くさいからな。 精々漠天やママゾンが便利になった程度だと思って使ってくれるといい。 地上の資産がDMに変換されて行けば、よりスムーズに紙幣化が行われるからな。
 日本人でも武器を買えるのは良くないと思うかも知れないが、当然冒険者の武器などは買えない。 買えるのは銃火器だ、それぐらいの武装はしておいても心配ないだろう。日本は強引にでも動かなければならない状態になってしまったからな。 原因は俺だが。
「ダンマスゥ!!待ってよぉ!!」
 おや? ミュースが物凄い勢いで走ってくる。 アスファルトのコールタールが摩擦熱でドロッと溶けてるんだが、少し加減して走れないのだろうか。
「どしたミュース。悪いけど今日は遊んでやれないぞ? 傍目にはご当地ラーメンガチャガチャをコンプリートしようとしている奇特な奴に見られてるかも知れないが、こう見えても思考の渦との格闘中でだな」
「なぁ、ダンマス。鶫の妹のヒタキって奴の事知ってるか?」
「って聞けや!しかし鶫の奴やっと思い出したか?」
「うん、多分って。多分妹がいたんだと思うって言ってた」
 まだ疑問符が残ってるラインか。 それなら意味がないんだよな、俺的には鶫に関しては鶲を完全に思い出すまで放置と決めているんだが、それだとミュースが騒いでうるさそうな気がする。
「鶲はいま悪い奴に捕まってて、みんなの記憶から消されてるんだ。取り返してやろうと思って戦ってるんだが、まずはこの記憶干渉を跳ね除けるぐらいの力が無いと太刀打ち出来ない。危険に巻き込みたくないから鶫には言ってないんだけどな」
「うぉぉ!! そうだったのか!! わかった!鶫に教えてくる!!」
 すこぶるチョロくて大変結構。 鶫はしっかりしてそうだが、意外と残念なところが多いからな。 努力はしているようだが、自分から強くなろうとしなければ、五天五柱は認めてくれん。 だから今は放置するのが一番だ。 記憶干渉に抵抗できなければ、夢幻に飲まれるのが目に見えるしな。
 それより問題は閻魔とのダンジョンバトルだな。 冒険者を増やすのは簡単だが、向こうがどれぐらいの手駒を揃えてくるのかが全く検討がつかん。 下手に手駒を増やしすぎて変な気を起こす奴らを生み出す結果になるのもつまらんし、力量差があり過ぎて大量のラディアルを失うのもアホらしい。
 となれば残存勢力の底上げが必要不可欠になるが……。 コア、90層のリリースは行けそうか?
『80層でも苦戦しているので難しいかと。それならば10、20、30層ダンジョンを大量にリリースし、新規冒険者を増加する方が効果的です』
 じゃあ仕方ないな、それで行こう。 次は都道府県別に30名ずつぐらいで冒険者の認可をしておいて。 少しでも変な動きをしたら随時直ぐに教えくれ。 後は敵対判別のゴーグルと、個別認可用のデバイスをTOP50の冒険者に5つずつぐらいわたしておいてくれ。 取り巻きや旧友を冒険者にしてやったら安全に冒険者が増えるだろうからな。 旧友や取り巻きがいなくともデバイスを使用して新たにルーンを取得したりもできる、前回の露国遠征の追加報酬だとでも言っておいてくれ。
『かしこまりました。件の中高生の冒険者認可はいかがいたしますか?』
 先ずは札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、広島、博多にコアがサポートアバターで教師役を務める冒険者の育成機関を設立してくれ。 親の承認、本人の希望を絶対条件に、後はコアの選考基準で合否を出してくれたらいい。 孤児や施設に預けられている子供の場合は、未来予測で将来可能性のある職業を見せてから決断を迫ること。
『かしこまりました。しかし思いきりましたね、死に戻りの訓練用チャイルドダンジョンのテンプレを使用しますか?』
 いんや、それも必要ない。 生徒は3ヶ月間の強化合宿と集中講義で冒険者のなんたるかを徹底的に叩き込んでくれ。3ヶ月間で巡り巡ってガキの冒険者を認可しまくる。 何者にでもなれるからこそ触れて来なかったが、冒険者になると覚悟していると言うならキッチリ冒険者として扱ってくれ。
『かしこまりました。シズクはずっと狙っていたので喜ばしいです』
 あのパイパン厨房か。 まぁ、それはいいとして、そんな事よりも気になる冒険者申請が来てるので其方を優先しよう。 コア、北海道建設って所に飛ばしてくれ。
『了解しました、それでは』
 色々と頭を使う事が多いので、最近では廃人的な扱いをされているが、日向ぼっこばかりして無駄に過ごしてるわけじゃないんだ。 人知れずに来たる戦いに備えてアッチコッチ飛び回っているのだよアハハン。
 しかし到着してみたが意外と小さい会社の建物だな。 北海道で一番デカい道路やトンネルやらを作ってる会社って聞いていたから巨大なビルとかを予想してたんだが、普通に田舎の工場街なら何処でもありそうな会社だ。
 会社のビルと資産は比例しないと言うからそう言う事なんだろうな。 そんな大会社の社長さんから従業員500名全員からの冒険者申請が届く異常事態に驚いて訪れてみたんだが、なんか閑散としていて入り辛い。
 ええいままよと。
「ごめんくださぁい。通りすがりのダンジョンマスターですけどぉ」
「フゴボッホッ、ケホッ、カホォ」
 目の前でパンチパーマの紫色のサングラスかけたジムのババアがどら焼き噴出したんですけど。
「大丈夫ですか? っていいから、今は俺はいいからお茶飲んで! 鼻から餡が出てるから!!ハリーハリーハリー!!」
 暫くお待ち下さい。 本当に暫く待ってたら落ち着いたおばちゃんがお茶持ってきてくれた。
「こんな所まで遠路遥々ご苦労様です。導き様が来られるなんて思っておりませんでしたから」
「みちびきさま?」
「あぁ、いえいえ、こちらの話です。大丈夫だよ、お茶にどら焼きなんて入ってないから。ダンマスさんが来るなんてね、本当にビックリです。社長も飛んで帰ってくるって言ってたから、ちょっと待っててね」
 なんて言うんだろう。 すげぇのほほんとしてるけど、一応職場だからピリッとはしてるけど、土産屋にしかないようなテナントとか、古びた地方のマッチ箱とかのマニアックなコレクションとか、熊の置物とか緑苔が生えたらんちゅう飼ってる汚ったない水槽とか、窓から差し込む西日に照らされて埃がちらほら飛んだりとか、そんなの全部引っくるめて、ホーム感がやばい。
 今ここで寝っ転がったら幸せだろうなぁ。 こんな厚紙みたいな皮がカチカチのソファ何処に売ってるんだろうか。 とりあえず手で押してみようか。
 ポフ。
 あぁぁぁ……なにこの意外とポフッて弾力が帰ってくる感じ。 ちょっとだけ、ちょっとだけ寝っ転がってみはぁぁぁ……しあわせぇ……。
「うん?あぁ……くそ、寝てもた」
 睡眠を必要としないはずの俺が最も容易く爆睡してしまうとはな。 是非このオフィスの一画だけ買い取らせて貰いたいものだ。
「疲れでたんだべや。小腹減ったべよ、ぇっ」
 起きたら対面に座ってる作業着姿のおっさんに更に山盛り置かれたスルメイカのイカめしを勧められたのだが、一体今ここで何が起きてるのだろうか?
「ありがたくいただこう。うん、もごっんご、うまっ、うんまっこれ。あ、すいません。あなたが社長さんかな?」
 やっぱりイカめしはスルメイカだよな。マジでうまいんだけどこれ。
「んだ。導き様がロシアで暴れだからウチの株がえれぇ事になったんだ。大領地のインフラ整備の受注も来てらんだけど、だどもしたとこでもほら、規模がデカ過ぎてよ。したっけほら、導き様の子分になったらすげぇ力つくってネットさ書いてあったんだ。樺太さトンネル掘って鉄道繋げるんだば、そったら力に頼らねばなんもでぎねっぺよ」
「それで冒険者の申請を? でも本当に従業員のみんなも了解しているのか? 聞けば社員は大卒の高給取りが多いとも。こう言ってはなんだが、冒険者は泥臭いと言うか血生臭い職でもあるんだが」
「泥臭ったってオラ達さ敵わねぇべよ。発破で山削ってトンネル掘ってらんだからゃ。学歴あったって歯抜けや糖尿のおっさんばっかりだべ、今更見た目でやんやん騒ぐえふりこきなんていね゛っ」
 そんな所にお茶のおかわりを持ってきてくれるどら焼きのおばちゃん。
「通訳いる?」
「いや、大体わかるからいい」
 ゆっくり反芻して理解してくれ。 俺は早口一発だからもっと難易度高いぞ。
「それでインフラ整備に冒険者の力を使いたいと。確かに多くは本心で求めている者が多いのもわかっているが、拒絶している者を無理に説得しないで欲しい、それが約束出来るならデバイスを渡してもいい」
「命賭けて穴こ掘ってらんだ。山の男は約束守る」
 ん? これは了解してくれたのかな? コア、真剣に冒険者になってもいいと考えて申請した北海道建設の従業員達のデバイスを頼む。
『かしこま?!これは……マスター、やっと見つけましたよ特殊式』
 マジか、まさかのトンネル工事業者だったか。 まだまだ新人類をデバイスで認証する際に必要な式は発覚してないものがあるのだが、ここで1つ発見したようである。 いつまでも魔女頼みだから、これは喜ばしい。
『しかもドワーフの特殊式ですね、トンネル工事業に従事する者が持っていたとは予想外でした。これでデバイスでのドワーフの認証が可能になります』
 キタコレ。鍛冶屋細工屋鑪場に採掘屋まで探したのにトンネルて。 そら見つからんわ、でも問題ありだな。
「木嶋さん、今新たに発覚したのですが、あなた達の職にうってつけの種族があるのですが、もしそれを選ぶと、怪力や大地との対話が出来る能力と引き換えに、ずんぐりむっくりの髭もじゃのおっさんになる可能性があると言う事だけは伝えておきます。デバイスで見た目を弄ればスマートなドワーフにもなれますが、美的感覚が本能に引っ張られるのでスタンダードなドワーフの方をお勧めしてるだけなんですけど」
「どわーふ?オラぃは仕事が出来て導き様の役に立てたらそれでいいべや。インフラば整備して新幹線ば通れば、日本は世界一の大国さなるべよ」
 こう言った気質になるからトンネル屋がドワーフの因子を持つ結果になったのかな? でも好都合だ。 ドワーフはマイクラみたいに土弄りが出来る大地との対話能力がある。 通常数十年規模の工事でもおっさんらに任せてたら瞬く間に終わるだろう。 冒険者は竜舎の飛竜で飛んだりDMを支払ってゲートを使えば問題ないが、インフラは国力と直結するからな。
 思わぬ事態だが非常に喜ばしい。
 よし、新幹線の駅を造るに相応しいダンジョンパークの開発を急ごう。 日本から新たに冒険者を送り込めば、変な結託をさせずに新たに冒険者を認可させる事が出来る。
 今の秋葉原みたいに冒険者の中でも格差が出てくると、停滞してしまう者も少なくないからな。 一都市平均500人ペースで点在させるのがベストだ。 俺はスーパードエスな大臣よりも何方かと言えば深雪寄りの優しさ混じりの行政故の心配事でしかないが、やはり冒険者は冒険者らしくあれた方がいいからな。
 なんてったってダンマスは愛と優しさでできている。
『近々100層到達しますが、保険はいかがなさいますか?』
 反日活動してる奴ら適当に間引いてラスボスはデバイスモンスターのボーナスダンジョンをリリースしておいてくれ。 参加資格はTOP50で、いや面白そうだから俺が行こう。 大臣のとこに飛ばしてくれ。
『彼はヨハネスブルグの制圧で本当に忙しいので連れ歩くのはお勧めしません』
 うーん、まじか。 じゃあその制圧手伝っちゃおう。 そろそろあいつに俺の力渡してやってもいいしな。

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