だんます!!

慈桜

第百十四話 バトルのルール?

    あぁ、平和だ。 新しい年号平和にしてもらおうかな。 土下座したらオッケイしてくれそう。
「よぉ、ダンマス。閻魔のクソは見つかってないんかい」
「だなぁ。全然見つからんわ。グレイルちょっと走って探してこいよ」
「無茶苦茶走ったっちゅうねん。何や知らんけど日本てそない広ないよな。走ってみておもたけど」
「今は露国も日本だからあっちも走ってこいよ」
「広すぎて足もげるわ!」
 あぁ、俺が見つけたベストプレイスである雑居ビルの屋上の昼寝スポットに何故グレイルが毎日特攻してくるのだろうか。
 確かに閻魔が今も尚暗躍しているのだろうし、此方は葬儀屋アンダーテイカーですら奪われているから一大事ではあるが、露国の一件から半年ばかり何の動きも無いのでやりようがない。 他の権能持ちにもビンビンに警戒網張り巡らせてるけどかすりもしないし、ぶっちゃけお手上げでござる。
 どうせあのジジイの事だから、その時が来たらデュエルしようぜ!ってシャカリキで登場するだろうから放置してるんだが、グレイルとしては殺戮衝動が抑えきれないと毎日不機嫌に登場するのだ。
「もっと本気出せや!! 本気出したら見つかるんちゃうんかい!!」
「コアが本気出してるよ。もうぅ、ちょっと暑苦しいからあっち行って」
「毛布とれや! そないに暑ないぞ今日!」
 戦闘モードに入ると暑苦しいこの上無い奴である。 戦場では頼もしいけど、平時は本当にうるさい。割とまじで。
 ヒルコを使って一本釣りしてみようかとも考えたけど、無駄に閻魔の力を増やす事になりそうなので保留したのだが、そろそろ追い出す手立てを考えないとマイプレイスが台無しである。
「閻魔が動いたら当然グレイルにも伝える。だから今だけは放っといて。今の気温と日差しが最高」
「そんなん言うて毎日ゴロゴロしてるやん!この半年もっと色んな事あったやろ!なんでそんなグータラしとんねん!」
「あのなぁ、物語とかなら一大行事が終わったら閑話とか後日談入れてからスタートするだろ?それと一緒で今は俺的の閑話時期なの。わかる?ドゥーユーアンダースタン?」
「あぁーあぁーそうでっか。そら何すんのんにもコアさんに言うたら終いやもんな! そこで死ぬまで寝腐っとれや!」
 そのままピョンと屋上から飛び降りて行くグレイル。 あの子生意気だし喧嘩っ早いけど、ああ見えて凄く心優しい良い子なのよ。 って自分に言い聞かせておこう。 グレイルいいやつ、うん、おけ。
「真面目だねぇ」
『非常にグレイルらしくて微笑ましいです』
 鶲との約束があったのならグレイルがああなるのは仕方ない。 あいつは昔からスッキリするまではガチモードで臨むタイプの奴だからな、例えたら甲子園優勝するまで笑わない!みたいな。
『それはどうかと。ストイックな性格ではあると思いますが』
 けど見つからないのも仕方ないっちゃ仕方ない。 相手は閻魔だ、あのジジイがダンジョンマスターの使用する式をダンジョンに限定せず、世界にそのまま適用させる世界式の基礎を作ったんだから、ある程度出し抜かれるのは計算に入れといて良いんだ。
 出来れば封印なんかじゃなく、ちゃんとぶっ殺したいけど、まだなんか色々隠してやがるから、今回をいい機会だと思って泳がしてるってのもある。 ごめん強がった、何処にいるのかマジでわかんないの。 いずれ白黒はっきりさせようとは思ってるけどって……。
「いた?!」
 なんか閻魔目の前にいるんですけど? けどこれ術式臭いな。
『非常に曖昧です。逆探知できません。グラフィカールコールの下位互換ですね』
 閻魔はいつも通りにニコニコ笑いながらに何も言わずに佇んでる。
「で、何しに来た? ダンジョンバトルの申請か?」
「おや? 随分横柄だね。この前は敬語を使ってくれたのに」
「書庫に入るって言ったのに其処に居る奴を敬おうとは思わんよ。俺お前嫌いだしな」
「私はちゃんと書庫にいるよ?もうグレイル君に聞いただろう? これは思念体、魔素の中に私の思念の因子を組み込んでいるに過ぎないよ」
「ねぇ、やめて? 魔女ウィッチ生まれなかったら俺マジで怒るよ?」
 しかしそんなやり方もあるのか。 なら魔素を枯渇させればって無理か。 もうかなり充満してるからな、今更魔法の無い世界になんて出来ない。
「それは心配ないよ。思念は不確かなものであるからね。魔素にはなんら影響はないよ」
「まぁ、あんたがそう言うならそうなんだろうけど、取り敢えずそろそろ日陰になっちゃうから早く要件言ったらどう? 俺陽気な気分忘れちゃいそうだわ」
「そう焦らないで欲しいね。ただ挨拶に来ただけなんだ。そろそろ下地も出来てきたからね、ゲームルールの提案に来たのだけど、話を聞いてくれるかな?」
「どうせ喋るんだからお好きにどうぞ」
 実体が無い奴って卑怯だよな。 消しても意味ないし、触れる事も出来ないし、けど弱々しいな。 俺の知ってる閻魔は、もっとラディアルが溢れ出してて俺Tueeeの化身みたいなダンジョンマスターだったんだけどな。
「では、まず初めにアメリカ大陸を私にくれないかね?」
「いや、やらんけど話だけは聞こう」
「勿論それはわかっている。だからこそ、私がアメリカ大陸を私の世界式で征服する。その間にヤムラ君は、他の全大陸を完全に征服する。そうすれば二極化するだろう?」
「それでヨーイドンで戦争しましょうってか? 話にならんな。乗ってやる必要が無い」
 馬鹿げた提案だ。 今から迷宮をコツコツ作って地力固めをしようとする奴を見逃してやる必要が無い。 実体化したら瞬コロしてやるのがせめてもの優しさだ。
「それじゃあ私は雲隠れし続けるよ? 実体化せずとも、この世界はやはり面白いからね。悠久の書庫で本を読み続ける事が出来る私が雲隠れすると言えば本当に雲隠れするからね?」
 それはそれでウザすぎる。 なので此方からも条件を出してみよう。
「お前の存在そのものだけでなく、次はその眼も対価にするなら考えてやらんでもないぞ」
「勿論そのつもりだよ。どうせ消えるなら全てを君に託してから消えたいと思ったからこそ、数百年もの間あの狭い書庫で待っていたのだからね。君の怒りや悲しみが色褪せるまでにずっと待ち続けたのだよ」
 忘れたとは言わない。 けど、確かにこいつに殺された仲間や冒険者達の事は僅かにだが記憶が薄くなっているのは確かだ。 こいつに対しての嫌悪感は消えた事は無いが、現在では復讐よりも単純に消し去りたいと考えてる方が大きい気がする。
「何故アメリカ大陸だけでいいんだ? 雌雄を決したいなら前回同様世界を二分にしたいんじゃないか? 」
「それで対、いや、この星の地形ならそれがいいのだよ。下手に接地すると、阿国の生産者軍団がジワジワ効いてくるからね。それに、ヤムラ君は既に3つの世界が手の中にある、言うだけ無駄だよ」
 なんか引っかかるなこいつ。でもそうだよな、貴族システムの侵略に関しての優位を知っていたら接地は避けるべきだ。 星2個くれと言われて渡すわけもないしな。 やはりこいつは嫌いだが、ダンジョンマスターとしての考え方は否定出来ない部分が多い、それがまたムカつくけど。
「だからこそのアメリカ大陸だよ。互いに切磋琢磨して地球を賭けてダンジョンバトルをする。最高に燃えるじゃないか」
「確かに言いたい事はわかった。先輩のわかりやすい世界式なら、すぐに書き換えられるし、継続して運営も出来るからアメリカ放置で済むなら悪い話じゃない。だが断る」
「おや、何故と聞いてもいいかい?」
「雲隠れするならしといてくれ。腹ただしいのは否めないが、それならそれでマイペースに征服する方がいい」
 こいつの口車に乗せられると、単純な話ですら見落としがちになるからな。 合理的にダンジョンマスターを務めるには話半分で聞くのが吉。
「はぁ、ヤムラ君。私の事も忘れてしまっているのかい? 雲隠れした私が単独で冒険者を1人1人消して行った悪夢を忘れたわけではないだろう?いくら実体化してないとは言え、この眼は使えるのだよ?」
 夢幻の魔眼か。 気持ち悪い眼だけど、いつか俺のものにしてやろうと必死になった時期もありました。 ごめんなさい、今でも欲しいです。
「ゲリラ的に襲われるストレスにイライラし続けるか、正々堂々とダンジョンバトルするかはヤムラ君に任せるよ」
「お前がダンジョン一つでもリリースしたら瞬殺してやるよ」
 別にそれも反則じゃないからな。 ダンジョンバトルにはつきものだ。
「それは難しいんじゃないかな? もうかなりの数のダンジョンをストックしてるからね。後は駒が育つのを待つだけなんだよ」
「じゃあ勝手に征服して宣言したら良かっただろうが」
「それだとつまらないだろう? ちゃんと話し合って戦った方が気分がいい。これは宣戦布告だよ。君の大切な権能持ちを借りた対価だと思って貰えばいい」
「貸してやった覚えもないがな。もうあの頃とは違う、泣き喚こうが慈悲を乞おうが死んでもらうからな。ダンジョンバトルの宣言条項に入れるのを忘れるなよ」
「勿論だよ。私は約束は守るからね」
「そう言って世界式しか賭けなかったの誰だったかなぁ?」
 閻魔は小さく笑いながら消えて行く。
「次はちゃんと存在も賭けるよ、そうじゃないとダンジョンバトルが開始されないようにしているのは知っているしね」
 さっさと消えろ。
 やっぱり閻魔がダンジョンバトルの為に裏でこそこそやってたんだな。 自ら招いたミスではあるが、ワクワクしてしまうのは間違っているのかな? でもそれも仕方ないだろう。
 世界を渡り続けるのにも、スリリングな戦いを求めている事も無きにしも非ずだ。
 たまたま地球に来てしまってテラフォーミングの様相となってしまったが、本来ならば各世界の大魔王様と血湧き肉躍る戦いが待っていたはずなんだ。 自信満々のダンジョンマスターを圧倒的俺tueeeで叩きのめすのが最高に気持ちいい。
 それに勝ったとは言え、何か蟠りが残るような終わり方だった閻魔との決着をつけるには悪くない舞台とも言える。
 よしコア、一気に拡張を進めるぞ。 80層ダンジョンのフォーマットを出してくれ。それと冒険者の認可を頼む。
『かしこまりました。マスターの勝利を心より祈ります』

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