だんます!!

慈桜

第五十三話 やはり島国は鼻が効く?

  はぁ…腹痛い。 なんで腹痛いのって? そりゃホリカワが一瞬で叩き潰されたからに決まってるだろう。 40層クラスのトップダンジョンで補助を任せられるまでに急ピッチで育てた鳳凰みたいな火の鳥を物量で押し切られてタコ殴りにされるんだから爆笑しか感想はない。
『また一名、冒険者の反応が消えました』
 ジンジャー、ホリカワ共にNTRの代名詞にもなってるぐらいに爆笑の渦が巻き起きたんだから腹も痛くなる。
 しかし強いな、あのガキ共。 暗黙の了解で一対一で戦うって感じだったのに、群にして個、個にして群を地で行くんだから大したもんだ。
 狂ってるkids達、嫌いじゃないぜ。
『また一名、冒険者の反応が消えました』
 だがしかし、残念な事に突出し過ぎると様々な方面からの圧力がかかる。 出る杭は打たれると言うのは伊達じゃないってことだ。
 ちびっ子達は百獣昼行と呼ばれるようになり手がつけられない危険分子だと報道され社会問題に発展しているのだ。
 連日テレビをつけたら、ちびっ子達にはモザイクが掛かってるが、強そうでかっこいいモンスターの群れはバシバシとフォーカスされちゃってる。
『また一名冒険者の反応が消えました』
 当然火の無い所に煙は立たず、渦中のちびっ子達は国の権力闘争に巻き込まれようとしているなうである。
 当然と国会議論となる。
 すごいよなぁ、インターネットで中継されてるんだぜ? そこまで丸裸にしなくてもいいだろうに。 掘って掘ってスケベ根性丸出しで掘り下げようとするから、嫌気の差した老害の政治家は裏でこそこそし始めるんだろうよ。 それで政治家がそんなんだから、みんなバレなかったら何してもいいってなって、もしもし詐欺みたいな実態が見えない犯罪が主流になるんだろ。
 昔みたいに不良はバイク乗って走り回って、ヤクザは堂々と恐喝してた時代の方がよっぽどマシな気がするな。
 閑話休題。
 今回の議題の焦点は、ガンプライズに関しての新法設立の有無らしい。
 オブラートに包み込んでいるが、要約すると、軍事利用か、対象年齢の設立、または兵器所持を妥当としての銃刀法適用で検挙を目指すか。 大雑把にはこんな感じだ。
 新法設立には時間がかかるし、出来ても少年ならば補導止まり、その頃には軍でも対応出来ない事態になっている可能性があるってのが、軍事利用を主張する意見、こいつらの多くは俺らとの共存派と牽制派。
 対象年齢を制定し節度のある遊びとして認めるべきだってのが、ダンジョンマスター関連は触らぬ神に祟りなしで行きましょうって保守派。
 銃刀法適用、兵器所持としての刑事罰を適用すべきって奴らは、面倒くさがりのなすりつけて知らぬ存ぜぬを通したい否定派。
 ほぼ同じ回答の堂々巡りで、メリットデメリットの足し算引き算が繰り返されて答えには辿り着きそうにもない。
 そこで、ふと立ち上がった見た事も無い議員がエロそうな笑顔を浮かべながら発言をする。
『もう決まりそうにもありませんし、超異例として、自国民ではありますが、来賓扱いで招き、話し合いの場を設けてみては如何ですか?』
 終わりの無い話はウンザリだと冗談めかして男が言うと、罵声なども投げかけられるが、次第に方向性がその発言よりにシフトされて行く。
『インターネット上で、冒険者にも引けを取らないと言われる子供達の姿をこの目で見て来ました。彼らは猛獣すらも可愛げがあるように思えてしまう恐ろしいモンスターに囲まれており、幼少ながらに、件の冒険者とやらにも引けを取らない武力を持っていると感じました。しかし、相手はまだ小さな子供達です、ですから一度親御さんとの会談を設けてはいかがでしょうか?』
『下手に干渉して迷宮主とやらに国会を潰されない事を祈るばかりだな』
 そうだそうだ!!と声が上がるが、俺はそんな事しない。 しないったらしない。 警察はあまりにもしつこかったからドラゴン嗾けただけだから。
 政治家達の集中力が切れ始め、議論の言葉が乱雑になり始めた所で中継は中断される。
 国家が一個人に対して交渉すべきだなんて、とんでもない方向で話は固まっていたがちびっ子達は大丈夫だろうか?
 最終的に親御さんとの相談…いや、商談になるだろうな。 そうなると、ある程度戦える魔物が国に流れるのは時間の問題か。 魔物への魔石投与による進化を制限するのは簡単だが、そうなると冒険者達の娯楽が減るのは頂けない。
『マスター?聞いてますか?』
 聞いてるよ、聞いてるよコアちゃん。 どうせ54名のリストはできてるんだろ? システマがやってる事は大体把握できてきてるから、心配いらんよ。
 とりあえずは中国くんだりまで行って、めっ!するのもダルいので今は放置だ。 海外に散らばった4期の冒険者達との会話ログを集めて繋ぎ合わせたら、システマが俺を曲解して敵視すら向けてるのもわかったけど、濡れ衣もいいとこだ。 俺は冒険者を絶対殺さない。 冒険者同士で殺し合いが起きただけで、心臓に鉛玉を撃ち込まれたような痛みが走るし、コアなんて取り乱して暫く機能しなくなる。 世界式を利用して冒険者を消滅する事は確かに可能だが、それをしたら恐らく俺もタダで済まない。 システマの言い分は俺からすると濡れ衣以外の何でもない。
 あいつどんだけゲーム脳なんだよマジで。
 ってなワケだから暫く自由にさせといてコアちゃん。 それと6期の選出も始めておくれ。 流石に50人単位で抜けると、手の回らないダンジョンが出てきそうだ。 タダでもノリで全国に初級ダンジョン展開したばかりだからな。
『かしこまりました。地方での選出もしておきます』
 よろしく頼みますと。
 後はエルフの森の守護者を選ばなきゃだなぁ。 ハクメイがモモカに武器プレゼントしたから、仮の守護者でモモカが選ばれてるけど、あいつおばあちゃんっ子だから守護者には向いてないだろう。 現状の仮契約にとりあえずは甘えておくつもりだけど、いつかはちゃんと選ばなきゃなぁ。
 あぁ…やる事多い。
 コア、早送りして。 政治屋とチビのオカン達の交渉が気になる。
『よろしいのですか?』
 よろしいのですよ。どうせ時間損するのは俺だけで他の誰も迷惑かけないんだから。
『かしこまりました。それでは』
 停止した空間で時間だけ流れて行く。 この間、俺だけはテレビを見る事もゲームをする事も、昼寝をする事も出来ずに、じっと時の流れを待つしか無くなる。
 早送りと言っても、意識を保ったままに自身の時間を停止、時が訪れたら停止解除だ。 言うなれば、俺の体感だけの早送りってワケだな。 長生きしてるとね、待つのが辛い事もあるのよ。
 いよいよ悪ガキ5のママ達との交渉が始まるようだが、鉄扉に閉ざされたナイトラウンジの一室で話し合うようで、監視用に飛ばした虫型カメラは入室のタイミングを見失って鉄扉の前を右往左往している。
 コア、どうにかできないか?
『かしこまりました。それではスマートフォンを通話状態にします。よろしいですか?』
 おけ、内容が聞けたらそれでいい。
『そうです、息子さん達が所持しているモンスターの一覧です』
『最近先生とか警察とか児童相談所からと色々連絡を貰ってて、流石にげんなりして来てるんです。用件はなんですか?』
『ごほん、では単刀直入に申し上げます。我々としてはご子息が保有するモンスターの買取を提案したいのです』
『買い取り…ですか?』
『そうです。体裁上は譲渡して頂き、謝礼として金銭を対価にと申し上げたいのですが、単純に言えばモンスターの売買が望みです。此方のリストに買い取りの提示額を記しています』
『いちじゅうひゃく……ひゃくま、 え?何かの詐欺ですか?あの子達が捕まえてるのはそこらにいるモンスターですよ?』
『はい、ですがご子息方は、我が国のブラックボックスとも言える冒険者と同様の特殊な育成方法でモンスターを強化しており、その能力の高さは筆舌にし難く……』
 最終的にチビ達にも電話をして、主戦力ではないモンスターを買い取る方向で話が決まったようだ。
 あいつら一気に小金持ちだな。 サンダーバードで300万なら俺も売りたいわ。 別に金いらんけど。
 しかしこれで国も、殺すまでは出来ないが冒険者に対抗する手段を手にした事になるな。
 葬儀屋の種を仕込んでる奴はもういるから別に其処まで脅威は感じないけどな。
 かかってこんかい。
 しかしそうなると、国の偉いさんや自衛官様達がオープンダンジョンに押し寄せそうだよな。 そうなったら、警察の客しかいないハードコアな場末のスナックみたいな寒さになりそうだから、防衛省あたりにダンジョンプレゼントしておこう。
 コア『ゴブリンダンジョン、5つ置きました』
 ふぁっ!?5つ!?






コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品