だんます!!

慈桜

第五十一話 ランドセラーの残虐性?

【東京】ダンジョンマスターに一言物申す?Part920【迷宮】
 0456 夜爪猫@(´・ω・`) だんますー、あの小学生どうにかするにゃ!ファンと戯れてたら魔物けしかけてきやがったにゃ
 0457 罪シシオ喰@(´・ω・`) おめぇ、安定で嫌われてんな。めしうますぎるんですけど
 0458 夜爪猫@(´・ω・`) シシオ絶対闇討ちしてやるにゃ。 許さないにゃ。
 0459 銀爾@(´・ω・`) 俺なんて育てようと思ったわんわんおすぐとられたぞ
 0460 金楽@(´・ω・`) >>459 てめぇ、自分から襲われに行ってたじゃねぇか!!
 0461 罪喰ホリカワ@(´・ω・`) 漫才してんじゃねぇぞもふもふども
 0462 銀爾@(´・ω・`) てめぇ言ったなトカゲ野郎
 0463 ジンジャー@(´・ω・`) あの、自分の育ててる黒馬、結構強いんすけど、お仕置き行ってきましょかね?
 0464 †漆黒聖天†@(´・ω・`) >>458 ギルマス、揉め事ダメ絶対。ですからね
 0465 松岡君@(´・ω・`) >>463 絶対にやめとけ。今のあいつらは災害だ
 0466 迷宮好きな名無し@(´・ω・`) 僕はディザスターwww
 0467 迷宮好きな名無し@(´・ω・`) ディザスターフラグキタコレ
 0468 メタニウムダイゴ@(´・ω・`) 俺なんてシステマ探しに歩いてただけで焼かれたからな。あいつら冒険者見たら嬉々として襲ってきやがる
 0469 ジンジャー@(´・ω・`) やっぱ許せないですよ。自分指導してきます。ohanashiしてきます
 0470 龍アルガイオス王@(´・ω・`) 儚く散る道を選んだか糸使い。 南無
 0471 マーズたん@(´・ω・`) マーズも猿の魔物にパンツ脱がされた(    )
 0472 松岡君@(´・ω・`) >>471今から殺しに行ってくる
 0473 ダンジョンマスター@(´・ω・`) 松岡絶対殺すなよ?絶対殺しちゃだめだからな?!
 0474 くろあしにゃんこ@(´・ω・`) だんますいるじゃん!てかみんなグラナダいるんだから集まって喋れば?
 0475 夜爪猫@(´・ω・`) にゃ!をつけるにゃ!!
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 掲示板を見て、傍若無人な小学生達を懲らしめようと、輓馬のように逞しい大きな黒馬に跨った男が秋葉原を駆ける。
 ミルクティーベージュの長い髪を総髪に結った冒険者。 多くは糸使いの名で知られるジンジャーである。
 冒険者以前からハクメイの友人と言う事もあり、鳴り物入りの冒険者デビューであったジンジャーは社交的な性格も相まって人気者の1人となっているが、彼はどうにも常人よりも正義感が強い傾向にある。
 元々が警察であった記憶はハクメイ同様に消されているのだが、これは彼の性格そのものなのだろう。
 人が困っていて、自分の力でどうにか出来そうな事は、進んで解決しようと行動してしまうのだ。
「コクロウの力を見せつけてやるんだぞ」
「ぷるん、ぷるるん」
 ジンジャーが首を叩くと、黒馬はご機嫌に鼻を鳴らす。 ガンプライズのリリース間も無く、彼は捕獲銃を購入し、今日に至るまで、ひたすらに魔石を食わせ続けてきた。
 大概が膝丈の魔物しか捕獲対象には存在していないのに、彼が使役する魔物が此処まで大きいのはそれが理由だ。
 今ではジンジャーと共に前衛として迷宮に潜る程に、戦闘に特化した黒馬を使い、小学生相手に俺tueeeをしようとしているのだから、正義とは実は程遠いのでは無いかとも思ってしまうが、それは言わぬが花であろう。
 小学生達の聖地とすら呼ばれる芳森公園に辿り着くと、そこは辺り一面魔物に囲まれた5人の小学生達が占拠していた。
「お前ら!魔物を冒険者にけしかけるのはやめろ!!みんな迷惑してるんだぞ!」
 ジンジャーの言葉に、寝ぼけ眼の寝癖が跳ねた少年がめんどくさそうに立ち上がる。
「チカラ、やばくね?あいつジンジャーだよ!」
「あのエクリプスゲット出来たら俺たち最強じゃね?」
「確かに。やっちゃう?やっちゃおっか?」
「マジで?ガチバトル!?燃えてきた」
 その寝ぼけ眼の少年に呼応するようにランドセラー達が皆々立ち上がる。
「でぃさいしぶ…ばとる!!」
 少年の宣言と共に、公園に溢れかえる魔物達は戦闘態勢に入り、命令を待つ。
「受けて立つ!!コクロウ!好きに暴れろ!!」
 ジンジャーの指示に黒馬は魔物達に襲い掛からんと駆けるが、突如その足を止める。
「タマちゃん!!水猿にもっと沼を広げるように言って!!タロウは炎鳥と雷鳥で集中砲火!!」
「おっけいっ!チル!氷熊で足狙え!串刺しにしろ!!」
 地獄絵図。 単純にその一言に尽きるだろう。 それら単体では可愛らしいペットのようにしか見えない。 だが、何匹もの同じ個体が力を合わせて一斉に攻撃をする事により、地形が変わる程の攻撃を容赦無く浴びせるのだ。
 ジンジャーは一方的に痛めつけられる愛馬の姿に堪らなくなり、指先から伸ばした糸で沼から引き摺り出してしまう。
「あーあ、殺しきれなかった。手出したからジンジャーの負けだよ。エクリプス可愛がってあげるから冒険者がんばれよ!」
 プライザーの対戦で、プレイヤーが手を出すと、反則扱いとなり即試合終了となる。
 痛めつけられる愛馬の姿に堪えられずに手を出してしまったが故、ジンジャーは文字通り、何も出来ぬままにトボトボと肩を落として帰る結果となったのだ。
「絶対に勝つ。次は絶対に勝つ」
 ジンジャーは大人気なく泣きながら新たに魔物を捕らえようと、銃を握る。
 その一方、冒険者が鍛えあげた黒馬に小学生達は群がっていた。
「やべー、チル。よく戦おうと思ったな。こんなのまともにやったら勝てなかったぜ」
「エクリプスは嚙みつき、突進、体当たり、踏みつけ、ダークボールが特技だけど、ダークボールは一回放ったら待ちが長いから、おれの氷熊と黒犬を壁にした。その間にはめちゃえば勝てると思った。チカラの沼が鍵だった。チカラのおかげだよ」
「よせやい!照れるじゃねぇか!でもよ、この黒馬がいれば迷宮潜れるよな?ちょうどそこの教会にゴブリンダンジョンあるしよ」
 悪ガキ5人はニヤリと嗤い、そのまま迷宮へと潜ってしまう。 そこからは圧巻の一言だった。
 ジンジャーから没収した黒馬が次々とゴブリンを薙ぎ倒し、魔物達がそれらを全て胃袋へと平らげて行く。 初めは子供達も顔を顰めていたが、魔物達の姿が逞しくなって行くに連れて、夢中で狩りをするようになったのだ。
 幸か不幸か、この5人組はいつもの小学生の群れの中でも特殊な家庭の子達ばかりである。 母子家庭で母親達は古くより馴染みのある夜の店に勤めているママ友であり、そのせいか転々と内々の家で集まり留守番をしている為に兄弟のように仲が良く、しっかり者で男ばかりなので学校に申請を出さず、学童保育に通わないで遊び歩いている悪ガキ達なのである。
 当然門限の概念など持ち合わせていないので、警察と補導員だけ気をつけていればいいので、時間を忘れて狩りに勤しむ事が出来るのだ。
 同刻夜の街灯の下で怒りに血相を変えて松岡君が待ち伏せしていた事など知る由も無く、リポップが間に合わない程に狩りを楽しんでいたのだ。
「すげぇ、みんなでかくなってる」
「てかやばくない?もう1時になるよ?」
「あり?今日ってリンリンの家だっけ?」
「違うよ。マルん家」
「じゃあ近いじゃん!母ちゃん達帰ってくる前に帰ろっ!!」
 狩りは深夜1時まで続き、我に返った子供達は帰路に着く。 モンスター達を公園に放つと、一目散に裏道を通って家に帰るのだ。
 母親達の店は深夜1時に閉店となる。 客が残っていたりすると、席についている者だけが居残りしたりもするが、誰かしらの母親は真っ直ぐに帰ってくる。 羽振りのいい客がいる時は、全員がアフターに行ったりもするが、滅多に無いので安全策でこの時間に帰るのだ。
 しかし小学生の裏道たるは、筆舌にし難い。 道無き道を最短ルートで駆け抜け、よもや猫しか知らぬような道を使い、ボロアパートへと飛び込んで行くのだ。
「風呂はいろーぜ風呂ー」
「ガス止まってるかも?昨日止まってたから忘れてないかな?」
「水でいーよ!てか水がいーよ!」
 ユニットバスの浴槽に所狭しと5人で並びキャッキャ騒ぐ姿は微笑ましい。
「明日もゴブリン殺しまくろうぜ!」
「最強になったら魔石集めて冒険者に売ろうぜ!!」
「いいなそれ!俺たちの家買おう!」
「いた!ちんこたたくな!」
「あははははは!!!」
 会話の内容が所々極悪な点を除いてだが。



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