だんます!!

慈桜

第三十九話 力の誇示と知識欲の変態?


 
 てなわけで、ラーメン屋ダンジョン前なワケだが、とりあえずレベル30超えてる冒険者がわんさか集まってますなう。

「さぁさ、お集まりの皆様。これより多大なる犠牲を払い、忌まわしきダンジョンマスターが生み出したダンジョンの開放をいたします」

 自分で自分disるのって結構ダメージあるわぁ。

「不安に思ったでしょう。どうにかして欲しいと思ったでしょう。ご安心ください!!今、この街には我々冒険者がいます!!」

 ギャラリーの歓声、カメラのストロボ、大量のビデオカメラ。
 普通なら緊張で心臓爆発するようなシチュエーションではあるが、俺は無駄にこういう場面に強いからなんとも思わん不思議。

 すっかりスギコと有良の番組のおかげで一躍時の人となっているメタニウムの面々、ダイゴ、暗黒騎士、あんこきなこ、ヒカル、システマが拍手喝采を浴びてそれに答えている。

 すまんなお前ら。

 既にミッションの方向性はシフトチェンジしてしまっているのだよ。
 一ヶ月無理をしたダイゴにはもちろん約束通りデバイスを渡してやるが、何もかも思い通りにはさせてあげられん事をここで謝っておこう。

「んじゃまメイズ、俺が開けるぜ?」

 ダイゴが大剣を担ぎ、自身の肩をポンポンと叩くが、これが開始の合図となった。

「ぃひ」

 すまん、悪い笑い声が漏れてしまった。
 こんな美味しい場面をダイゴなんかに渡すわけがない。

 とりあえず俺が影掌で即座に握り潰す。
 コンクリートで塗り固められたダンジョンの入り口は不壊に属しているので、全力で握り潰せば自ずと顔を出すからだ。

 入り口が顔を出すと同時に、そこからは待ってましたと言わんばかりに、ゴツゴツの岩のような皮膚を持つ鬼がズブズブズブと音を立てて異界から飛び出してくる。
 ゴブリンキングには似ても似つかない。
 まるでベプシのCMの鬼のような不気味さだ。いつの話やねん。

 敢えて名付けるならば岩鬼といったところか。

「ホリカワ」

「予定通りだな」

 罪喰いシンイーターの制服を着込んだリザードマンは、体が軋む程に深く全身を縮めると、一気に解き放ち加速する。
 まるでゴム毬のように全身のバネを使い音を置き去りにすると、双腕に握られた短槍が岩鬼の胸を貫く。

「ぐぉっ!硬い!」

 だが、それを引き抜くにあたってモタついてしまう。

 ホリカワは岩鬼がもがき腕を振り回す為に何とか一本は回収出来るが、もう一本の短槍は左胸に突き刺さったまま回避する事を余儀なくされてしまう。

  「はっは!!固ぇのはお前の頭だろうがよ!」

 ワーレオン、シシオが飛び上がると胸を貫かれてもがいている鬼の肩に乗り、首の後ろの付け根に真っ直ぐに剣を突き立てると、岩鬼は即座に目の光を失う。

「ちゃんと見とけばウィークポイントわかんだろうがバーカ!!トカゲー!!ほれ、お前の宝物」

「いいだろう、老け猫。ぶっ殺してやる」

「そりゃまた後でのお楽しみにしておくよ」

 シシオから回収した短槍を受け取ると、2人は一気にその場から飛び上がると、地面が轟音と共に弾け飛ぶ。
 既に後方から後続の岩鬼が来ているのだ。

「遊んでいないで集中して下さいよ。罪喰いシンイーターの恥ずかしい所を見せるつもりですか?」

 肩を落としながら前に出たのは、ブチ柄の猫耳と尻尾を持つ猫獣人。

 罪喰いシンイーター日本本部長ブッチーだ。
 まだこいつらしかいないけど雰囲気出るかなって思って言い方盛りましたすいません。日本って言うよりジ・アースとかの方がいいかなって思ったりもしたけど4人しかいないしなぁとか思ったりして日本支部と……すまん。

「詠唱破棄・術式起動」

 ブッチーは両の手を繋ぎ合わせお椀のようにすると、其処に闇のルーンが組み重なって行く。
 本来であれば、詠唱破棄と術式起動を使うのは熟練の魔法使いの技術である。
 ハクメイのように庭師ランドスケーパーの力と持ち前の謎センスを用いて創り出したオリジナルであれば、この動作は自動化されるが、ブチ猫のような一般的冒険者が第三位階魔法の詠唱破棄と術式起動を使うには相当な研鑽が必要となる。
 多分、俺が思うに相当な努力をしたんだろう。
 それか、ただの天才かのどちらかである。

「アサルトキャット!!遊んでおいで!!」

 その手に現れたのは、闇のルーンで形成された黒い猫だが、所々に光のルーンが組み込まれ白と黒のブチ猫のようにも見える。
 第三位階の本来これに属する魔法はアサルトクロウという黒い鴉をルーンで組み立てるのだが、これはオリジナルではないだろうか?
 ぶっちゃけ見た事ない。
 さすが異世界拉致確率No.1の日本とも言うべきか。
 反属性の光のルーンを組んでいるのも中々憎い。

殺人事件遭遇率ギネス級の小学生名探偵ぐらいに業が深い人種である。

 シャリーンっと鳴き声のような鈴の音のような何とも言えない音を発しながらアサルトキャットが駆けると、後続の岩鬼の心臓部が土管のような風穴を開ける。

「いきなり本気かよブッチー!!」

「打ち合わせではその手筈ですよねシシオ!!」

 ブッチーがアサルトキャットを操作し岩鬼達に致命傷を与え、ホリカワ、シシオでトドメを刺すを繰り返すが、徐々に打ち損じた岩鬼達が冒険者の群れの中に歩みを進める。

「おいメイズ!!!なんで罪喰いシンイーターだけで狩ろうとしてんだよ!!こいつは貰うからな!!」

「クフッ」

 あかん、またキモく笑ってしまった。

 ダイゴが大剣を構え、その鬼に向かおうとするが、それは敵わない。

 ダイゴに向かっていた筈の岩鬼は十字に斬り裂かれてしまったのだから。

「すんません、ちょっと譲る気ないんですよ、すいません」

 ガンジャである。

 いつものオドオドとしている態度は変わらないが、心無しか一回り体が大きくなったかのような威圧感がある。
 ガンジャより圧倒的に戦闘力の高かったブチ猫、シシオ、ホリカワがなんとか倒している岩鬼を一瞬で四分割にしてしまったガンジャに罪喰いシンイーターの面々は戦いを忘れて顎が外れそうになっている。

「みんな、待たせた。ごめん」

 ガンジャがペコっと頭を下げると、祝福の花火のように岩鬼が爆散する。

「できるようになったのかよガンジャ!!」

「すごいですよガンジャさん!!」

「さすが罪喰いシンイーターの大剣使いを名乗るだけはあるな」

 俺が罪喰いシンイーターの面々に出した指令は、他の仲良しギルドを圧倒してゴブリンキングの変異種を狩り尽くせだ。

 確かにダイゴには、メディアと通じる大仕事をして貰ったが、既に冒険者の地位は確立されてきている。
 ならば、俺はこの機を利用して、民衆から眉唾だろうと思われている罪喰いシンイーターの実力をまざまざと日本人、そして冒険者の全員に見せつけてやろうと考えた。
 実際こいつら同様に前線で戦っている初期の冒険者は、罪喰いシンイーターがやはり一線を画しているとは理解している。
 だが、その中でもガンジャはお荷物なイメージが強かったはずだ。

 俺はグレイルがガンジャに日向とキイロと共にダンジョンへ潜るように言ってから毎日ログを見てこいつの成長を見てきた。
 そしてこいつは見事にスキルのディレイ無視を成功させ、他の冒険者が遊んでいる時、眠っている時にひたすらその腕を磨いていたのを俺は知っている。
 それこそハクメイと同等、もしくはそれ以上に鬼気迫る努力と研鑽を重ねていたのだ。

「これで、みんなの邪魔にならないで済むよ。やろう、罪喰いシンイーターの強さを見せつけよう」

「だっはっは!!そうだな!!そうだなガンジャおい!!」

「し、シシオ、痛いよ」

 シシオがガンジャの肩を掴み振り回すように抱き寄せると、ほのぼのとした空気が流れるが、この一瞬の隙を見逃すようでは冒険者のTOPランカーにはなれないだろう。

「じゃあリポップ空けて貰ったみたいだからもらうぜぇぇぇぇ!!!」

「ホモかよお前ら気持ち悪い」

 この一瞬の隙を逃さずにラーメン屋前に駆けつけたのはアルガイオスと松岡だが、当然こいつらだけじゃない。

「うぅーーにゃーーー!!!!!」

「ギルマス!!突出しすぎです!!」

「言っても無駄だよ!そいつ馬鹿なんだから!ニャ」

 ビルの上から夜爪、漆黒聖天、黒足が降ってくる。
 どんだけ目立ちたがり屋なんだよこいつら。
 気を抜きすぎた、もうしばらく前線は空かないだろう。

「あーあ、先陣取られてやんの」

「仕方ねぇだろメイズ、こんなの先に言っといてくんねぇと」

「はぁ。まぁ、いいとしようか。お前らの宣伝にはなっただろうしな」

「だな、けどあいつらもやべぇぞ」

 振り向くと結構派手に目立ってるあいつらの姿が視界に飛び込んでくる。

「おい馬鹿鳥!!炎牢出せ!!上にあげろ!!」

「嫌だよ!羽何枚使うと思ってんだよ!!」

「また生えてくるだろ」

「毛根死んだらハゲ鳥だよ?!」

「いいから早くしろ!!!」

「あーもー!!」

 アルガイオスは岩鬼を蹴り飛ばした反動で、翼を何度も羽ばたかせると、器用にバク転をして少年の姿を取る。

「あー、俺の羽ぇ」

 肩をガックシと落としながらにも、超高速で指先に込めた魔力で描くルーンを組み上げていくと、宙を舞っていた羽から噴出した炎が岩鬼を包み込んで行く。

「はい石焼けたよ、ラーメンどこ?」

「石焼きラーメンじゃねーだろ馬鹿鳥、上に上げろ」

「はいよっと!!」

 そのまま燃え盛る炎の球体は宙空に打ち上げられると松岡は指を鳴らす。
 いや、ちょっと待て、これ解説してる暇ないかもしんないこれ。

 パチン。

 指の鳴らす音に反応して、松岡の手に圧縮された空気の球体が浮かびあがる。

 松岡はそれをなんの躊躇いも無く炎の球体に投げつける。

 あかん、これ大爆発する奴や。

 一気に俺が爆発を閉じ込めてやるしかないぞ。

「メイズ!!手ぇ出すな!!」

 俺の術式起動を感じ取ったのか、松岡は俺にズビシッと人差し指を向けてくる。

 炎の球体に松岡の放った空気の塊が吸い込まれると、ドゴンと鈍い爆発音が響くが、その球体はそのまま炎を消し去ると中から粉々になった岩鬼が転がり落ちる。

「あれ、割れないから」

「俺の羽が燃え尽きおったぁぁ! なんちゃってぇ!!」

 砕け散り燃え盛る岩鬼の亡骸を巻き込みながらに再び形成された炎の球体を、次は鈍器のようにして何度も殴り続けると、後続の岩鬼は溶岩のように溶け落ちていく。

「こっちの方がはえぇだろうがよ!」

「五月蝿いぞ馬鹿鳥。殴るだけとかお洒落じゃないだろ」

 相変わらずの奴らである。
 しかし話は変わるが、銀の手シルバーハンドの紋章を松岡はちゃんとニット帽につけているのは嬉しい限りだが、あの鳥は何故頭にヘアゴムで止めているのであろうか。
 いたずらされた奴みたいである。

 そこで夜爪の方はと視線を移すと、いつも通りにスピードで翻弄し、黒猫が縛りトドメを刺す堅実な戦いかたをしているんだが、ここで突如背後から銀色の雷撃が走り岩鬼を瓦解させる。

「誰にゃ!!横槍禁止にゃ!!」

 振り向くとそこには電動の改造した車椅子に乗った黒髪の少年がいる。

「失礼しました夜爪姫」

「システマにゃら許すにゃ、もうやめるにゃ」

「もちろんです」

 その車椅子の少年は俺の前に車椅子を走らせると、薄く笑みを浮かべて一礼をする。
 彼が件のシステマだ。
 俺のキャラメイクのテンプレートやルーン解体真書を作り、突如メタニウムに電撃参入した謎の冒険者であるシステマである。

「これは我が神メイズ様、ご機嫌麗しゅう」

「あぁ、神様になったつもりはないが、こうやって喋るのも最初のオフぶりだな」

「はい、あの時は知識欲に溺れ、メイズ様とまともに会話が出来なかった事、今では後悔しております」

 なんか気持ち悪いんだよなぁ、こいつ。

「てかなんで車椅子に?別に歩けるだろ?」

「えぇ、ですが目の前にデスクが無いと落ち着きませんので」

 システマが何やら指紋認証をすると其処には複数のビジョンが宙空に浮かぶ。
 明らかにオーバーテクノロジーだ。

「やっとこれをお見せする事が出来る……烏滸がましい話ですが、メイズ様に並びたく研究を重ねTRY&ERRORを幾度と繰り返し、やっと完成したのです……ですが……」

 俺の目の前に表示されたのは、複合魔法のルーンと、その派生ツリー、そして対を成すスキルツリーと個々に存在する付与術式の基盤だ。

 俺から見るとリンクの無いURLのような不安定さを感じるが、確かにうまく書けているような気もする。

 《なかなか良く出来ていると思います。本当にこれを世界基盤にすると、力は使えなくなりますが、術式をよく理解しているのは見てとれます。素晴らしい才能です》

 コアちゃんも褒める程だ。
 これで亜空間の式を理解すれば、六畳一間の小部屋程度のダンジョンなら作れそうだが、亜空間式が飛び抜けてめんどいからな。

「おわかりいただけましたか?ショップにミスリルが実装されたので、ダイゴ氏に10万DMを借り、先程の雷属性ルーンを刻んだ魔道具を造る事は出来ました。ですが、一度使えばこの通り」

 焼け焦げたミスリルの塊を見せてくる。

「私には……理解できないのです……」

 システマは突如ボロボロと泣き出す。

「上位世界の構築式はおろか、亜空間の構築式すら全く理解出来ないのです……」

 いや、俺はダンマスだから出来るし、恥ずかしい話であるが講師をつけて勉強をした時代だってある。素面でここまで辿り着いたのであれば正直大したもんである。
 俺よりは遥かに頭が良いのは確定だ。たまにいるんだよな、こういう天才な奴。

 サイコロ程度の亜空間式を理解する事が出来れば、複合魔法の雷を何度も打ち出せる魔道具を造る事は可能となるだろうが、難しいだろうな。

 なんて声かけてやろうか。

「まぁ、すごいと思うぞ。ここまで理解したなら」

 そこでなぜかシステマは更に絶望したような顔になる。

「私に解けない理があるなんて……そんな、そんな……」

 こうしてる間にも、冒険者達は岩鬼やゴブリンキングを狩りまくって楽しそうなのに、なんで俺は変な奴に泣きつかれているんだろうか。

 コア、どうしたらいいの?
 《理解できません。尋ねてみてはいかがでしょうか?》

「システマ、お前それでどうしたいんだ?」

 コアちゃんが言うなら間違いないと問いかけてみるとシステマは目をギョロギョロさせて壊れてしまった。

「…て…だ……さい」

「はい?」

「お…く…….さ…い」

「え?くさい?」

 システマはガクンと力を抜き放心する。

「おじえでぐだざい」

「教えて欲しいのか?」

 コクコクとシステマが頷くがどうしたものか。
 冒険者が学ぶ自由を俺が奪うのもどうかと思うが、どうにも教えてわかるとは思えない。
 コアが制御しなきゃ、ブラックホールを産み出すだけの結果とかになりかねん。
 こいつがダンジョンマスターになりたいとか思ってても別にいいが、恐らく自壊するだけに終わるだろう。

 コア、こいつが嘘をついてるかどうか今から調べてくれ。
 《了解しました》

「システマ、お前は亜空間式を解いたとして、何がしたいんだ?」

「え?何を……?知らぬ事を知りたい事に理由が必要ですか?」

 コア?
 《嘘です》

「嘘だな、俺は嘘がわかる。素直に言ってくれ」

「………笑い…ませんか?」

「あぁ、笑わない、教えてくれ」

 そう言うとシステマはそっと振り返り、メタニウムの面々が離れている事を確認して俺に近寄る。

「私は……私はこれまで全てを理解する為だけに生きてきたのです。理解できないことが耐え切れなかった。だから私はこの冒険者の能力を与えるシステムを読み解く為に全てを尽くしてきた、何故なら知りたくなってしまったからです。だが、そんな私にケモミミ旅飯店で毎日話しかけてくる冒険者がいたのです。私には理解が出来ませんでした。外見も冒険者であれば特に目立たない見た目にしているにも関わらず、私に会えばコーヒーを奢ってくれたりする冒険者が全く理解出来なかったのです。そこで私は不可解な感情が生まれている事に気付きました。その冒険者を前にすると、脳波と心拍数が異常をきたす状態異常にかかってしまったのです。私は焦りました、早急にこの問題を解決せねばなるまいと、ですが私の手元には既に解読を始めている論文があった。混乱しました、混乱したのです。この状態異常に関しての問題は、まず冒険者システムを読み解いてからだと考えました。この車椅子や魔道具はその産物です。テクノロジーの進化は目覚ましいものがありました、ですが答えには辿り着けなかった。私はこれを知る事ができなければ自身の状態異常に関しての解を求める事が出来ないのです」

 なげーよ。
 コア、こいつの言ってる事は?
 《残念ながら全て真実です》

「んで?その冒険者は誰?」

 それを聞くとシステマは顔を真っ赤に染める。

「ヒカル氏です」

 どうしよう、目の前に本当の馬鹿がいる。
 なんて声を掛けていいのか全くわかんないんですけど。

「いいか、システマ。答えは簡単だ。お前はヒカルが好きなんだ、だからお前はヒカルといたくてメタニウムに入った。お前はヒカルにいいところを見せたくて魔道具や、その車椅子を造った。簡単な話だ。お前は恋をしているんだ」

 システマは突如、ぬおぉぉぉう!!とでも叫ばんばかりの変顔でショックを受けている。
 そしてぐるぐると目を回してしまう。

「とりあえずダイゴに渡す分のデバイスと、亜空間式が付与されてるキャンディボックス、これをお前にやる。とりあえずこのキャンディボックスの構造を解いてみろ。それが出来たらもっと面白い式も教えてやる。だからとりあえずヒカルにはアタックしてみろ。それで全て真実がわかるはずだ」

「い、いやだ……それでヒカルに嫌われたら私は……」

「それが全部の答えだろ。当たって砕けても、砕け散るまで当たるんだよ」

 肩をポンポンと叩いてその場を後にする事に成功する。
 なんとか撒けたのだ。
 変な奴に目を付けられたものである。

 しかし安心も束の間、お次は取材陣に囲まれてしまう。

「メイズさん!!お話しよろしいですか!」
「メイズさん!写真お願いします!!」
「メイズさん!記者会見お願いできませんか!」

 あっ、この女子アナ見た事ある。
 可愛いってかいいにほい。

「あーあーもーもー!聖徳太子じゃないんだから一回にしゃべらないで!!君たち3人限定で順番にいこ!じゃあ君!何!」

 とりあえず一発目は小太りの男のアナウンサーから聞いてみよう。

「は、はい!!一部ではメイズさんがダンジョンマスターだと言われているのですが本当ですか?」

「いいえ、ケフィアです。ハイ次」

 次はおばちゃんアナウンサーだ。

「ありがとうございます。機を改めて記者会見をお願いできませんか?」

「ちょっと何言ってるかわからないです。ハイ次」

 そして最後にいいにほいのお姉さんだ。

「はい!!メイズさんの力を見せていただけませんか?」

「オフコース!!おいガンジャ!!ここにゴブリンキング連れてこい!!」

 岩鬼は既に出てこなくなり、ゴブリンキングだらけになってるので、なんとか逃げ出したゴブリンキングをこちらに誘導して貰う。
 とりあえず美人のお願いは聞いておこう。

「〝影喰シャドーイーター〟」

 発動と同時に俺の影は獣の姿を型取り、そのままゴブリンキングの影を喰らい尽くすと目前のゴブリンキングの実態も喰い散らされる。
 一応回避不能の即死技だ。

「こんな感じでいかがかな?お嬢さん」

「あ、ありがとうございます!!大ファンです!」

「本当に?じゃあ居酒屋いこ!!」

「本当ですか!!行きたいです!!」

 今日も秋葉は平和だ。
 ずっとこうあって欲しいものである。

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