Lemon

あゆゆっくり

苦いレモンの匂い

……はぁ、とため息を零す。
先日私こと苅谷愛瑛は、新崎充希という男をふった。
中学二年の時に付き合い始め、今はそれぞれ大人になっている。
…だけど、会う度に喧嘩は勿論、2ヶ月も連絡をしない状態が続いた為か私も充希ももう限界だった。
それならお互い好きな状態で別れようと決意し、先日充希をふったのだ。
勿論心は傷んだ。何せもう10年近く付き合っていたのだから。
でも、別れでもしないと私はお互い嫌いになってギクシャクしたまま自然消滅なんて絶対に嫌だったから。
……だけどふった次の日。
見計らったかのように充希は事故で無くなった。充希の両親からはたった一言「あんたがふったからいけないんだ。あんたがふったから充希は死んだんだ。」と。
…………もう私は全て嫌になった。
別れなきゃよかった。
こんな事になるならずっと彼を想い続けていればよかった。
あの日の悲しみさえ……あの日の苦しみさえ……充希は愛していたんだ。その全てを。
私と一緒に。それは私も同じだったんだ。
それは苦いレモンの匂いの様に心に張り付いて動かない。
…あぁ、こんな事を思っていたら雨が降ってきたな。



雨が降り止むまでは……帰れない。

コメント

  • ノベルバユーザー601499

    雨が止むまでの続きが気になるので楽しみに待ってます。
    描写しているような感じも好きです。

    0
コメントを書く

「恋愛」の人気作品

書籍化作品