褐色男子、色白女子。

もずく。

戸賀くんと早乙女さん。

あれから毎日レオンを呼んで練習を重ねた。レオンはコミュ力低いけどその辺は俺が頑張った。うん。あいつ圧がすごいとこあるんだよな。チームメイトがみんないい奴なのもあってすぐ馴染んでたからそんなに手間はかかんなかったけど。
「壮士、これ。」
俺はさくが家から出てくるのを待ちながら朝の空を見上げていた。すると家から出てきたさくが同時に包みを俺に手渡した。これは、もしかして噂の、
「お弁当…?」
「…そう。」
目線をそらすさく。その指は傷だらけ。さくって不器用なのにこういうとこ頑張ってくれるんだよなあ。本当に可愛い。
「ありがとう!マジで嬉しい!!今日の試合絶対勝つから!」
「ん、頑張って。」
心なしか嬉しそうなさく。耳が真っ赤だ。
「戸崎ってサッカー強いの?」
「あー、なんて言うか、急成長したって感じ。」
「…どういうこと?」
「さくのチームにさ、強い人っている?」
テニスをやっているさくにそう聞く。するとさくは何人かの先輩を思い浮かべたらしく頷いた。
「うん、いる。」
「その人達って試合でいい動きするだろ?それが戸崎は多分、あのサイハラサンなんだよ。あの人は去年の大会で戸崎と当たったときいなかったけど今年の春にはいた。途中入部ってやつ。めっちゃうまくていきなりエースだったしな。」
「ふうん…。壮士はどうなの、その辺。」
「俺?俺はまあ、ずっとサッカーやってるし…さくも知ってるだろ?」
「まあ。伊達に3年抑えてエースじゃないもんね。」
ふっと頬を緩めたさくに思わずキスをしたい衝動に駆られた。
「さく、こっち向いて?」
「何で、…!」
俺を見上げたさくの額にキスを落とした。
「な、なにっ」
「んー、勝利のおまじない?勝ったら唇にさせてー。」
「ばっかじゃないの!?」
真っ赤なさくはそう言って俺の胸板を叩いた。痛くなくて逆に可愛い。
「いいだろ、ご褒美!」
「…勝ってね。」
「えっ」
「なに。」
「いーえ?」
さくさん、それは反則だと壮士くんは思います。それじゃあキスしてほしいみたいに聞こえるぞ。
「じゃあ僕が勝ったら早乙女さんに告白させてもらいますね。」
突然そんな声が頭上からふってきたんだ。

「は?」
「え?」
俺とさくは同時に声を出していた。
「今日の試合、全力を尽くさせてもらいます。」
「…こっちの、セリフ。」
俺はこのどこにでも湧く男を睨みつつ、さくを白崎さんの所へと向かわせた。あまり一緒にいさせたくない。
「はは、用心深いですね。」
「当たり前です。」
火花を散らす。そのまま俺は更衣室へと足を進めた。2人しかいない更衣室は、殺伐とした雰囲気に包まれていた。

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