褐色男子、色白女子。

もずく。

白崎さんと黒川くん。

「…ご、めん、ね…」
震える手を必死に抑えてレオンくんに謝る。きっと、迷惑をかけた。
「私、やっぱり駄目みたい。今見るだけでも本当に、苦しいし辛い。」
聞こえるか聞こえないかくらい小さな声で言う。止まらない涙を必死になって止めようと目をこする。すると、褐色で大きくて、ゴツゴツした手が私の手を包んでそのまま自分の頬にピタリと当てた。
「小糸。大丈夫だから、そんなに目をこするな。痛いだろう?」
「っ、でも、止まんない…!」
ぼろぼろとそのまま流れる涙で視界がぼやけて、レオンくんがどんな顔をしているか私には分からなかった。
「大丈夫だ、そのまま聞いてくれ。小糸、お前はきっと辛くてしんどくて、苦しいんだろう。だけど、今は俺がいる。前に話してくれたとき、言っただろ?俺に話せる時がきたら話してくれって。俺はこれ以上何も聞かない。お前が話せる時でいい。今無理する必要はどこにもない。10年後、20年後でもいい。お前は、1人じゃない。」
目を見開いた。どうして、この人は私の欲しい言葉をいつもいつもくれるのだろうか。拓けた視界に映ったのは、優しく微笑むレオンくんだった。暖かいレオンくんの頬は少しだけ赤くなっていたような気がした。
「ありがとう…。うん、私は、もう1人じゃないよね。大丈夫、きっともう平気。いつかきっと話すから…だから、それまで、待っててくれますか…?」
目線だけ上に上げてレオンくんを見ると、レオンくんは満足そうに目を細めて頷いた。
「当たり前だ。」
いつのまにか、手の震えは止まっていた。

「ところでレオンくん、さっき10年後も20年後って言ってたよね?」
私はふとさっき言っていたことが気になってレオンくんに聞いてみた。するとすぐにレオンくんは気まずそうに顔を背けた。
「いや、なんていうか…その、」
「それって…、10年後も20年後も私と一緒にいてくれるってこと…?」
ちらりと目を見るとすぐにそらされた。
「あ〜…まあ、そういうこと、だな。」
「そっか…嬉しい、一緒にいてくれる友達がまた1人増えた。」
私にとって、告白された日から変わらない友達という立ち位置。
「そうだな。彼氏とか小糸にいねーといいなあ。」
「え〜、そこは…どうだろっ!」
今は、このままで。

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