褐色男子、色白女子。

もずく。

黒川くんと元同級生。

帰り道、怯える小糸を庇うように俺は小糸を背中に隠した。そしてそのまま、やつらに視線を向けた。
「どうも。俺は高校の友人の黒川レオン。よろしく。」
突然声をかけてきた小糸の同級生たちにそう挨拶をした。努めて冷静に、友好的に。でもきっと、小糸にはバレてる。俺がマウント取って、敵意剥き出しにしてること。
「あーっと…白崎の、友達?」
「ああ。変か?」
1人の男子が戸惑ったようにそう聞く。何だよ、くそ。
「あ、いや、あんまりそうは見えないって言うか…なんて言うか、白崎も男友達とかいたんだなって…。彼氏かと思ったから。」
「ああ、そういうことか。残念だけどまだ彼氏にはしてもらえないらしい。いつかなるからそのときはまた。」
サラッと告白を意識させるようなことを言った。すると背中に可愛い痛みを感じた。
「ちょ、ちょっとレオンくん…!」
真っ赤になった小糸が俺のブレザーの裾を引っ張っている。
「悪い、そろそろ行こう。」
「う、うん…」
ぎゅうっと裾を握って離さない小糸の手をそっと撫でてやると力が抜けたようで、大人しく離してくれた。
「じゃあ、また。」
そう言って俺は、見せつけるみたいに小糸の小さくて柔らかい、可愛い手をとった。
「お、おい!白崎!」
「…!」
小糸はびくりと肩を震わせる。まだ何か言うのか。すると男は意地悪そうに口元を歪めて言った。
「お前、まだ男遊びしてたのかよ?中学でも告られてはふってを繰り返してたよな?次はそいつ?」
小糸のもともと白い顔がもっと白くなっていくのを感じた。
「ち、ちが、レオンくんは、私の大事な、違う、中学でも、そんな、私、遊んでなんて、」
俺に握られた手をきゅうっと強く握り返し、壊れたように繰り返す小糸を見て、俺は更なる怒りが湧いてきた。
「…おい。」
自分でも驚くほど低い声が出た。もともと低い声に更に拍車がかかっていたように思う。地を這うような声ってやつ。
「な、なんだよ。」
「お前、これ以上小糸を傷付けるんなら容赦しないぞ。」
「は?暴行沙汰にでもする気かよ?ばかかよ。」
どこまでも神経を逆なでしてくるこいつに俺はもう我慢できないことを悟った。
「暴行沙汰?そんな馬鹿なことはしない。でも、これ以上俺の友人に暴言を吐くならそうなるかもな。俺は小糸みたいに頭が良くないから。」
そう言って睨みつければたちまち尻尾を巻いてやつらは逃げ出した。周りの女連中も見ていただけでろくな関係でもなかったんだろうな、と勝手に推測した。だがはっとして小糸に目を向けると、小糸は涙をこぼして俯いていた。俺は慌てて小糸を連れて近くの喫茶店へと入ったのであった。

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