褐色男子、色白女子。

もずく。

黒川くんと庇護欲。

本日の俺は過去最高におかしい自信があった。トガもおかしかったけど俺もおかしかった。
「見ろ、トガ。今日も小糸が可愛い。」
「ん〜そうだな〜。」
絶対に話を聞いていないであろうだらしなく頬を緩ませる友人戸賀壮士は適当に相槌をうつ。
「さっき抱き上げた時から思ってたことなんだがあいつ軽すぎないか?大丈夫か?そこも可愛い。早乙女のために頑張る姿も可愛いし、最初のうちは名前呼んだだけで真っ赤になって…肌が白いからすごく可愛かった。あとは、」
「…なんかレオン、気持ち悪さプラスされてないか?」
俺の異常事態に気が付いたらしいトガが怪訝そうに眉を顰めた。
「…俺もそう思う。けど、抱き上げたときからなんか…こう…気持ちが溢れて止まらないっていうか…守りたいって思って…」
それは俺が常日頃から思っていることが表に現れただけなのだろうか?それとも、あんなに小さな体で友人のために一生懸命頑張り、真っ白な頬を染めて笑う小糸に恋心を加速させただけなのだろうか?いや、俺は知っている。俺の亡くなった父が言っていた。これを「庇護欲」というと。
「守ってやりたい、助けてやりたい、全部全部小糸にだけ。あいつだけ。」
「…なんでそこまで白崎さんに固執するんだ?好き以外に何か理由があるのか〜?」
トガが首をかしげる。たしかにそうだろう。彼氏でもないのにおかしい。でも、俺にはれっきとした理由があるのだ。
「俺はあいつを、知ってるんだ。」
「…は?」
小さな時からずっと。初対面みたいな顔して、本当は知ってたんだ。
「ずるい奴だから、俺はそれを小糸には教えない。」
「…俺には?」
「今から話してやるから黙って聞けよ。」
「ひでえ!!!」
「俺と小糸は、ずっと昔に出会ってるんだ。」
「無視かよ!!」
喚くトガを無視して俺は話し始めた。俺と小糸の、出会いの話を。恐らく小糸は覚えていないであろう、俺が初恋に落ちた日を。

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