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褐色男子、色白女子。

もずく。

早乙女さんと戸賀くん。

「小糸…。」
最近、楽しそうね。黒川に告白されてから毎日。この一週間でもう三回目の寄り道。前までは私の部活が終わるまで、図書室で待っててくれたのに。
「…はあ。」
縛りたくない、自由にしてほしいなんて思ってるはずなのに、心の奥底から叫ぶ声が聞こえる。小糸は私のよ、と。
「いつからこんなに心が狭くなったのか…。」
晴れていた空が曇り始め、銀色の光が落ち出した。今日の部活は中止だろう。それならさっさと帰るほか選択肢などない。誰もいない教室から一人、出て行こうとした。
「おっ、やっぱりまだいた!さく、一緒に帰ろうぜ!」
出会った日から変わらない、無邪気な笑顔を浮かべたこいつによってそれは叶わなかったわけだが。
「戸賀、まだいたの。私帰るから。」
「ええ、だから一緒に帰ろうって!雨だし!な?」
「なんで雨だと一緒に帰るの。雨じゃなくても後ろからついてくるでしょ、あんた。」
「そ〜なんだけど〜!気持ち的な問題?」
また今は見えない太陽のような笑顔を見せて戸賀は笑った。
「私一人で帰りたい。ほっといて。」
だが生憎今日はその笑顔に流されてあげられるほど機嫌がよくない。置いて行こうとしたらパシリと腕を掴まれた。
「…なーんで?さく、最近なんか変だぞ?なんかあったなら話きくぜ、俺。だって俺たち幼馴染じゃん!」
その、屈託のない笑い方が今は本当に腹が立つ。何も知らないくせに、何も分かってないくせに、幼馴染なんて。
「うるさいな!もうほっといてって言ってるじゃん!幼馴染なんでしょ!?そのくらい察してよバカ!」
今まで出したことないくらいの大声が出た。違うのに、私が怒鳴りつけたいのは壮士じゃないのに。はっとして一瞬視線をやると、戸賀は見たことないくらい優しい顔をしていた。
「ん、ごめんな。じゃあさく、言い方変えるな。泣いてる女の子ほっておけないから俺に話聞かせて?」
「な、いてなんか…!」
戸賀に指摘されて初めて目元に手をあてた。すると、外に降り注いでいるものと同じものが目を濡らしていた。
「よしよし、大丈夫だぞ。さっきのが本心じゃないってことくらい、ちゃんと分かってるからな。」
いつの間にか私よりも随分大きくなった戸賀は、私をいとも容易く包み込んだ。私は安心したのか、何なのか。ぽろっと、ついつい迂闊にも言葉を漏らしてしまった。
「…小糸が、とられちゃうのっ…!」
二人だけの教室には、しとしとと雨の音だけが響いていた。

「コイツ、こんなに華奢だったかなあ。」
戸賀の心の声なんて聞こえてないわけで。

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