俺と彼女とタイムスリップと
28話「ダブルデート」後編
「それってどういう……」
ああ、ドラマとかでこういうシーンはよく見たことがある。
主人公が女の子に迫られるシーン。 あれ? あの時の主人公はなんで迫られたんだっけ?
その後二人はどうなったっけ?
俺と真柴の間に沈黙が続く。
真柴は俺を見つめたまま中々視線をずらしてくれない。
「…………なんてね」
真柴は俯きそんなことを口にする。
「え?」
「あはは、冗談だよ~。 また淳一くん騙された~」
そう言っていつもの笑顔に戻り、俺の顏の前から立ち去った。
「……またお前はそういうことを……」
「ごめんごめん、小説でこんなシーン書きたくなってね~。 でも淳一くんいい反応だったよ~」
「う、うるせえ!」
そうか。 やっぱり真柴は俺をからかっていただけなのだ。
余計なドキドキ……俺の胸の高鳴りを返せ!
……まあそうだよな俺と真柴だからな。
ありえないんだよ、うん。
それにしても、真柴は演技が上手い。
小説家より女優の方が向いてるんじゃないか?
スタイルも良いし、かなり美人だし。
……胸だってでかいし……
かなりの好物件だろう。
きっとかなりモテるに違いない。
「おっ! そろそろてっぺんだよ!」
真柴の言葉通り外を見るとかなり高いところまで登っていることがわかった。
「おう、そうみたいだな……って!?」
俺が言いかけた瞬間、いきなり真柴が俺に抱きついてきた。
小柄、ではないけれど俺よりも小さい真柴の体は十分に包み込むことができる。
……え、何だこの状況は?
めちゃくちゃいい匂い……柔らかいものも当たって……って! そうじゃなくて!
……また俺をからかってるんだろうな。
からかってるとわかってても今、こうしてドキドキしている自分が情けない。
「お、おい真柴。 からかうのもいい加減に……」
そう言いかけた時、真柴の体が小刻みに震えているのに気づいた。
「おい、どうしたんだ? 大丈夫か?」
「……ごめん淳一くん……私……実は観覧車が苦手で……ジェットコースターは大丈夫なんだけど……観覧車は怖くて……」
「そうだったのか。 言ってくれればよかったのに」
そんな言葉しかかけられない自分が情けない。
こんな時どうしたらいいのだろうか。
「…………から」
「ん? 何だって?」
「ううん……何でもない。 ねえ淳一くん、降りるまでこうしてていいかな」
「お、おう」
まいったな。
心臓がドクドクと高鳴っている。
この心臓の音は俺のものだろう。
……いつもは元気で明るくて、こう言ったら失礼かもしれないが、男並みにたくましい真柴にも苦手なものがあって。
……不謹慎だけど弱々しい真柴を見て、少しだけ抱きしめたいと思った。
気付いたら真柴の背中に手を伸ばし、抱きしめた。
確かに感じる彼女の感触、匂い。
顔が熱くなる。 真柴の体も少し熱い気がする。
同時に俺は唯のことを思い出していた。
*
「お疲れ様でしたー」
係員が観覧車の扉を開け、俺たちは観覧車から外へと出た。
「いやあー、ごめんね淳一くん。 昔から観覧車って苦手でさあ〜」
「お、おう。 別に俺はいいけど」
真柴はいつもの調子に戻っていた。
まるでさっきのことはなかったように。
まあ、ただ観覧車が怖くて俺に抱きついただけ……なんだよな。
「お前らお疲れ! 悪いけどこれから先は別行動な!」
石田はそう言うと富田さんとどこかへ行ってしまった。
二人で手を繋いでいた。
「ねえ淳一くん、あれってもしかして……」
「ああ。 どうやら成功したらしいな」
「おーっ! めでたい! こりゃあめでたい! ……けど、私たちもう用ないね……」
「本当だな……」
「帰ろっか」
「おう、一応石田にはメールしとく」
*
「いやあ石田くん凄いね〜。 初デートで告白しちゃうなんて」
「だな。 俺も今日はデートするだけだと思ってたし」
帰りの電車中、俺と真柴は隣り合ってそんな話をしている。
懐かしい、11年後にはない遊園地。
もう少し思い出に浸るのかと思っていたが、真柴との一件や石田の一件でそれどころじゃなかった。
それにしても石田は凄いやつだ。
俺にできないことを簡単にやってのける。
俺が唯と出会ってからずっと言えていないことを簡単に……
いつまでたっても素直になれない俺とは大違いだ。
「ねー、淳一くん。 聞いてるのー?」
思わずボーッとしていたらしい。
真柴の言葉で我に返る。
「あ、ああ。 石田は凄いよな」
「うん、私もあれだけ素直になれたらなー」
「真柴は十分に素直じゃないか?」
いつもの真柴なら素直なはずだ。
明るくて元気で素直で。
「うーん、肝心なことは素直になりきれなくて言えないんだー」
「肝心なことって?」
俺が尋ねると真柴は人差し指を口元に当て、
「それはひみつっ」
と口にした。
どうやら真柴には秘密が多いらしい。
ああ、ドラマとかでこういうシーンはよく見たことがある。
主人公が女の子に迫られるシーン。 あれ? あの時の主人公はなんで迫られたんだっけ?
その後二人はどうなったっけ?
俺と真柴の間に沈黙が続く。
真柴は俺を見つめたまま中々視線をずらしてくれない。
「…………なんてね」
真柴は俯きそんなことを口にする。
「え?」
「あはは、冗談だよ~。 また淳一くん騙された~」
そう言っていつもの笑顔に戻り、俺の顏の前から立ち去った。
「……またお前はそういうことを……」
「ごめんごめん、小説でこんなシーン書きたくなってね~。 でも淳一くんいい反応だったよ~」
「う、うるせえ!」
そうか。 やっぱり真柴は俺をからかっていただけなのだ。
余計なドキドキ……俺の胸の高鳴りを返せ!
……まあそうだよな俺と真柴だからな。
ありえないんだよ、うん。
それにしても、真柴は演技が上手い。
小説家より女優の方が向いてるんじゃないか?
スタイルも良いし、かなり美人だし。
……胸だってでかいし……
かなりの好物件だろう。
きっとかなりモテるに違いない。
「おっ! そろそろてっぺんだよ!」
真柴の言葉通り外を見るとかなり高いところまで登っていることがわかった。
「おう、そうみたいだな……って!?」
俺が言いかけた瞬間、いきなり真柴が俺に抱きついてきた。
小柄、ではないけれど俺よりも小さい真柴の体は十分に包み込むことができる。
……え、何だこの状況は?
めちゃくちゃいい匂い……柔らかいものも当たって……って! そうじゃなくて!
……また俺をからかってるんだろうな。
からかってるとわかってても今、こうしてドキドキしている自分が情けない。
「お、おい真柴。 からかうのもいい加減に……」
そう言いかけた時、真柴の体が小刻みに震えているのに気づいた。
「おい、どうしたんだ? 大丈夫か?」
「……ごめん淳一くん……私……実は観覧車が苦手で……ジェットコースターは大丈夫なんだけど……観覧車は怖くて……」
「そうだったのか。 言ってくれればよかったのに」
そんな言葉しかかけられない自分が情けない。
こんな時どうしたらいいのだろうか。
「…………から」
「ん? 何だって?」
「ううん……何でもない。 ねえ淳一くん、降りるまでこうしてていいかな」
「お、おう」
まいったな。
心臓がドクドクと高鳴っている。
この心臓の音は俺のものだろう。
……いつもは元気で明るくて、こう言ったら失礼かもしれないが、男並みにたくましい真柴にも苦手なものがあって。
……不謹慎だけど弱々しい真柴を見て、少しだけ抱きしめたいと思った。
気付いたら真柴の背中に手を伸ばし、抱きしめた。
確かに感じる彼女の感触、匂い。
顔が熱くなる。 真柴の体も少し熱い気がする。
同時に俺は唯のことを思い出していた。
*
「お疲れ様でしたー」
係員が観覧車の扉を開け、俺たちは観覧車から外へと出た。
「いやあー、ごめんね淳一くん。 昔から観覧車って苦手でさあ〜」
「お、おう。 別に俺はいいけど」
真柴はいつもの調子に戻っていた。
まるでさっきのことはなかったように。
まあ、ただ観覧車が怖くて俺に抱きついただけ……なんだよな。
「お前らお疲れ! 悪いけどこれから先は別行動な!」
石田はそう言うと富田さんとどこかへ行ってしまった。
二人で手を繋いでいた。
「ねえ淳一くん、あれってもしかして……」
「ああ。 どうやら成功したらしいな」
「おーっ! めでたい! こりゃあめでたい! ……けど、私たちもう用ないね……」
「本当だな……」
「帰ろっか」
「おう、一応石田にはメールしとく」
*
「いやあ石田くん凄いね〜。 初デートで告白しちゃうなんて」
「だな。 俺も今日はデートするだけだと思ってたし」
帰りの電車中、俺と真柴は隣り合ってそんな話をしている。
懐かしい、11年後にはない遊園地。
もう少し思い出に浸るのかと思っていたが、真柴との一件や石田の一件でそれどころじゃなかった。
それにしても石田は凄いやつだ。
俺にできないことを簡単にやってのける。
俺が唯と出会ってからずっと言えていないことを簡単に……
いつまでたっても素直になれない俺とは大違いだ。
「ねー、淳一くん。 聞いてるのー?」
思わずボーッとしていたらしい。
真柴の言葉で我に返る。
「あ、ああ。 石田は凄いよな」
「うん、私もあれだけ素直になれたらなー」
「真柴は十分に素直じゃないか?」
いつもの真柴なら素直なはずだ。
明るくて元気で素直で。
「うーん、肝心なことは素直になりきれなくて言えないんだー」
「肝心なことって?」
俺が尋ねると真柴は人差し指を口元に当て、
「それはひみつっ」
と口にした。
どうやら真柴には秘密が多いらしい。
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