青いビー玉

くま之助

青いビー玉。

照りつける太陽。騒々しいのにどこか心地よく響く蝉の声。背中に張り付く白いシャツ。

毎日鬱陶しく思ってたそんな何気ないものが
今思い返すとキラキラ輝いている。


あの夏、まだ子供だった俺は
今では絶対にできないような
壮大な冒険をした。

初恋と言う名の冒険を。




梅雨もようやくあけ
やっと自分の出番だと言わんばかりに
太陽が街をギラギラと照らしている。


高い山がいくつも聳え(そび)
その麓には住宅地が広がっている。
そこから街の中心を流れる
大きな川をはさんだ反対側には
大きな駅と商店街があり
そこから少し歩くとすぐに海岸にでる。


山と川と海
それらを全部独り占めしたような街。
それがこの壮大な冒険の舞台となる街であり
中学生の俺が住んでいた恵美須町(えみすまち)。



そんな街並みをぼんやり眺めながら
僕は山の中腹に建つ学校まで続く坂道を
せっせと登る。

ツンツンした髪と
濃い眉毛、丸っこい輪郭で
例えるならマスコットみたいな中学二年生。

友達も多いし
成績も悪くはない。
家族とも仲がいいし
いたって普通の男の子。

ある一点を除けば。


トボトボと歩く僕のそばを
ゆっくりと走り抜ける一台の青い車。
窓が開いて真っ黒に焼けた顔がこっちを見る。

「おーい!大地!  
        そんなペースやと遅刻やぞ!」

体育教師で担任の武田先生だ。

最後まで言い切らないうちに
すぐに坂道を駆け上っていく
先生の車をみつめる僕の顔は真っ赤になる。


あんな何気ない一言で
鼓動が早くなり顔を見るだけで
緊張してしまう。


そう、僕は担任の先生に恋をしている。

男の先生に。




コメント

  • ノベルバユーザー601499

    小さい頃の話や先生とのやり取りなど未熟だけど一生懸命なんです。
    まだまだ続きが読みたいです。

    0
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