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その魔法は僕には効かない。
何処 11
1〜2件 / 全2件
水精太一
2018/07/13
一方の武川さんはどうだったでしょうか。凌太くんへの想いは自覚していました。しかしその想いは叶わないと諦めてもいました。少なくとも今までがそうだったからです。けれどその諦念は呆気なく覆されます。自分が望む事すら出来なかった言葉が凌太くんの口から発せられた時、彼の頭は「思考停止」に陥ったことでしょう。年若い凌太くんを傷付けないように、大人の男としてなんとかその場を取り繕ったものの、彼に背中を向けて去ってゆく武川さんの心は揺れに揺れていたのだと思います。その日を境に凌太くんのバイト先にも足を向けられず、密かに彼を待った公園に行くことすら出来なかったでしょう。頭の中の大部分を凌太くんに占領されながら、うわの空で仕事をこなし、職場や自宅、自分に関わる全てを美しく完璧に整えながら、表面上は周囲に何の異変も感じさせない。しかし心の中の自分は、もの凄まじい嵐の中にいる。それが、遂に爆発してしまったのです。
告白されて、自分もその相手を憎からず思っていたとしても受け入れられなかった(受け入れてはいけないと思った)武川さん。凌太くんを傷付ける事はせずに、やんわりと大人な対応を見せました。謝意はしかし、凌太くんには拒絶と受け取られてしまいます。大切な入社試験の日まで、彼の心の中には、あの日の武川さんの言葉が刺さったままでした。それでも母親に促され、試験会場へ向かいます。凌太くんは「自己完結型」の青年。起こった事を心に落とし込んだら、言葉のまま素直に受け止める事が出来ない。(こうなんだ。多分こうだろう。きっとこうに違いない)とマイナスの方向へねじ曲げて行きます。しかしそれは「防衛本能」でもある。現に試験の際は、緊張したかも知れませんがありのままの自分を出す事が出来ました。武川さんを好きな気持ちと、今しなければならない事を分けて考えられた。武川さんの拒否は、その時の凌太くんにとっては最善の答えだった。
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その魔法は僕には効かない。
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コメント
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水精太一
一方の武川さんはどうだったでしょうか。凌太くんへの想いは自覚していました。しかしその想いは叶わないと諦めてもいました。少なくとも今までがそうだったからです。けれどその諦念は呆気なく覆されます。自分が望む事すら出来なかった言葉が凌太くんの口から発せられた時、彼の頭は「思考停止」に陥ったことでしょう。年若い凌太くんを傷付けないように、大人の男としてなんとかその場を取り繕ったものの、彼に背中を向けて去ってゆく武川さんの心は揺れに揺れていたのだと思います。その日を境に凌太くんのバイト先にも足を向けられず、密かに彼を待った公園に行くことすら出来なかったでしょう。頭の中の大部分を凌太くんに占領されながら、うわの空で仕事をこなし、職場や自宅、自分に関わる全てを美しく完璧に整えながら、表面上は周囲に何の異変も感じさせない。しかし心の中の自分は、もの凄まじい嵐の中にいる。それが、遂に爆発してしまったのです。
水精太一
告白されて、自分もその相手を憎からず思っていたとしても受け入れられなかった(受け入れてはいけないと思った)武川さん。凌太くんを傷付ける事はせずに、やんわりと大人な対応を見せました。謝意はしかし、凌太くんには拒絶と受け取られてしまいます。大切な入社試験の日まで、彼の心の中には、あの日の武川さんの言葉が刺さったままでした。それでも母親に促され、試験会場へ向かいます。凌太くんは「自己完結型」の青年。起こった事を心に落とし込んだら、言葉のまま素直に受け止める事が出来ない。(こうなんだ。多分こうだろう。きっとこうに違いない)とマイナスの方向へねじ曲げて行きます。しかしそれは「防衛本能」でもある。現に試験の際は、緊張したかも知れませんがありのままの自分を出す事が出来ました。武川さんを好きな気持ちと、今しなければならない事を分けて考えられた。武川さんの拒否は、その時の凌太くんにとっては最善の答えだった。