その魔法は僕には効かない。

FU

意欲 7

僕は猛勉強した。
今のままだと受からない。
僕は、武川さんと一緒に仕事がしたい。


武川さんに認めて貰える存在になりたい。


ザワザワと動く心臓が僕を急かす。
その鼓動に追いつかない程、
バクバクした胸の高鳴りは
止まることはなかった。











「ちょっと勉強し過ぎじゃない?」

母は、2階に僕を迎えに行こうとしたが、
妹の空が止めた。

「お兄ちゃん、いつも人のために動いて、
自分のことは犠牲にしてきたでしょ?
こんなに自分のために
頑張っている姿、初めて見た。
ここは 見守ろう、お母さん!
ちょっと寂しいのはわかるけど!」


少し強気な口調ではあるが、
空からの愛は優しいものだった。


「そ、そうね。お母さん、応援する!」


リビングに響く笑い声が
僕の部屋にも聞こえた。

2人とも大きな声で話すから
全部聞こえてるって…
なんて思いながらも、
2人からの応援に自然と頬が緩んだ。









僕はいつものように
コンビニに向かう。

僕はいつものように
レジに立つ。

でも頭の中はずっと就職のこと。

こんなに何かに夢中になったことは
あっただろうか…

「最近牧さん、イキイキしてますね。」

そう声をかけてきたのは、
空の友達の美希。

「そう…かな?」

美希は、空の友達で家によく遊びに来る。

「恋でも、してるんですか?」

唐突だな…いや違うけど…
そう思いながら、
違うということを説明している途中で、
お客さんがレジに来た。

「いらっしゃいませー」

イキイキしてるのか…
これが周囲から恋だと言われれば、
僕は就職活動に
恋をしているということなのか?

それは、なんだか気持ちが悪い。
冷房が効き始めた店内の風が
急に僕へとまとわりつくような感覚がした。


「じゃあ、お疲れ様です。」

そう言って美希は21時に上がった。









ふと思ってカレンダーを見た。
今日は、木曜日、今は、21時…


武川さんはここ1ヶ月、
コンビニに来ていない。

それでも僕は、毎週火曜日と木曜日、
ましてやそれ以外の日まで
ソワソワしてしまう。

コンビニ、変えてしまったのだろうか。
やはり嫌われてしまったかな…


25時


今日も来なかったか…
どこかで落ち込んでいる僕がいた。

この間のお礼をまだちゃんと出来ていない。
もう、会えないのかな。

トボトボと歩く帰り道、
僕はいつものように公園を抜け道にした。

いつもは見て見ぬ振りをしていた
武川さんが座ったベンチに腰をかけ、
星が見えない暗い夜空を見ながら、
小さくため息をついた。


天体観測…


しばらく時間が経ち、
僕は、ゆっくりと重い腰を持ち上げた。
そろそろ帰らないとな。


すると、若い男達3人組だろうか、
僕に近づいてきた。
明らかに酔っ払っているのが分かる。


「なぁ兄ちゃん、1人?」


僕は思い出してしまった。
ここは治安が悪い。




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コメント

  • 水精太一

    ご家族の愛に包まれて、凌太さんはのびのび育ってもおかしくない環境なのに、何故こんなにも自己肯定感が薄いのでしょうか。自分の人生に対する心許なさ、マイナスに向かいがちな感性。それでも目の前の目標にまろびつつ歩を進める凌太さんに、何やら危険が迫っている…。
    続きがとても気になります。心待ちにしている歳上の彼は、現れてくれるのでしょうか。なかなか距離の縮まらないふたり。もどかしい思いで、次のターンへ進みます。

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