その魔法は僕には効かない。

FU

夢中 1

朝起きると、
ベッドのシーツは汗でびっしょり。

僕は夢を見ていた。

どんな夢だったかは、ほんの少し、
やんわりと覚えているくらいだ。

ただ一つだけハッキリと見えた顔、
その顔は、僕を優しく見つめた。

その顔が静かに消える時、
手を伸ばして「消えないで。」
そう言葉にした。

何故そのような状況であったのだろうか。
その時の僕にはまだわからなかった。






大学を卒業するまであと1年。
高校生の僕は、
やりたいことが見つからないまま、
友達がいるからという理由で
入学した大学に3年間に通い、
単位を取得してきたが、
今もまだ僕は、何も見つけられていない。






大学4年の6月。
周りは就活を初めて、
内定を貰った友達もいた。

僕は、何をしたいんだろう。僕は、どうしてこんなにもやる気がないのだろう。そう思う毎日の中でも、生きているという事だけは、陽の光を浴びる度に感じるのである。陽の光が眩しいほどに僕の白い肌を赤くする。まだ6月だというのに。





ピロピロピローン

「いらっしゃいませ。」
ほとんど3年で取得した単位が、
僕を暇にさせた。
ほぼ毎日17時から25時までコンビニで
アルバイトをしている。

いつも来るお客さんばかりで
新鮮な感じも何一つとしてない。

こんな人生、どうにかなってしまえ…
そんな風に思いながら僕はピッとビールのバーコードを読み取った。




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コメント

  • 水精太一

    最新9話迄拝読し、読み直しをしています。凌太くんの夢から始まるこの作品は、彼ともうひとり、のちに現れる人間の葛藤と成長、そして「ひとを愛するとはどういうことか」を問う物語です。凌太くんは「自己肯定感」の低い青年。もうひとりは「幸せになることを諦めた」人間。ふたりがどのように出逢い、どのような行く末を辿るのか。
    大昔なら“moratorium”という言葉が相応しい凌太くんが、無気力の殻を脱ぎ捨て、どうしても欲しいと思える何かを掴まえようとする日は来るのでしょうか。
    そして現れるもうひとりの人間。歩んできた道は、決して「光に満ち溢れた」ものでは無かったかも知れない。過去は過去と割り切って、目の前の「光に満ち溢れた」存在を掴まえようとする日は来るのでしょうか。
    ふたりの出逢いはもう始まっています。心通わせる日々はいつになるのか。彼らふたりが「光に満ち溢れた」世界を知るのはいつになるのでしょうか。

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