嘘。真実。

エビス

「お邪魔しました。じゃあな、まこと!」
 中学三年生の誠(まこと)と爽(そう)はいつものように誠の家でカードゲームをして遊んだ。誠の親友である爽はクラスのリーダー的存在で、勉強はたいしてやらなかったが、活発で聡明な男の子であり、誠にとっては爽と遊ぶ毎日がとても幸せで、かけがえのない日常であった。
その日の夜。自分のカードを整理していた誠は
「あれ、一枚足りない。」
誠の一番のお気に入りであったカードがないことに気づく。
「おかしいな。爽と遊んでた時はあったはずなんだけどな…」
いつか出てくる。そう思った誠は、あまり気にしないことにした。

次の日、いつものように爽が誠の家に迎えに来て、一緒に学校へ登校する途中
「昨日俺のお気に入りだったカードあっただろ?あれがなくなってしまったんだけど爽知らない?」
誠は何気なく聞いた。
「まじ!?俺と遊んでた時はあったよな?ちゃんと探したのか?」
爽は驚いた顔をして言った。しかし、それよりも驚いたのは誠の方であった。
「あれ、爽の頭の上が霞んで見える?何だろこれ。」
誠は目を凝らして見ると驚愕した。
「嘘?なんだこれ?」
爽の頭の上にぼんやりと嘘という文字が浮かんでいるのである。
「誠?聞いてんのか?」
状況を理解できず、黙り込んでしまった誠に爽が声をかける。
「まぁ、とりあえず俺も放課後お前の家で探してやるから心配するな」
そう言って二人は学校へと向かった。

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