Bouquet of flowers to Messiah

有賀尋

ありがとうから始めよう

ありがとうを知った日。

その人は俺にはない顔で笑ってそう言った。

初めて知った言葉は、どこか温かい綺麗な言葉。

おはようと声を返せばおはようが返ってくる。

おやすみと言えばおやすみが返ってくる。

どうしてこんなにあったかいんだろう。

この人と、たくさんの初めてを経験していくんだろうか。
この人と一緒にいられるのだろうか。

この人は…誰…?





「…る、衛」

自分の名前が呼ばれていることに気がつく。

そうだ、この声は…あの時に聞いた声だ…。

「…伊織…?」
「おはよう、衛。少し長めでしたね」
「…長め?」

そうだ、任務で腕を飛ばして、それでも帰ってきて倒れたまでは覚えている。

…また生きてた。

「…帰ってきたんだ…」
「えぇ、帰ってきてくれました」
「…ごめん、驚かせて」
「いいえ、帰ってきてくれただけでも十分です。帰ってきてくれてありがとう、衛」

…ほんの少しの夢に出てきたあの声は、やっぱり伊織だった。
伊織が最初に教えてくれたんだ。

2人で一緒の時間はきっと少ない。
その中でたくさんの経験が、空っぽの俺を満たしていく。

『ありがとう』

その一言から始まった。

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