Bouquet of flowers to Messiah

有賀尋

The first generation and the next era

「なに、お前の実力そんなもん?」

上から声がかかってくる。
俺は海棠さんに稽古をつけてもらっていた。
万夜が居なくなってからというもの、俺の中にはぽっかり穴が空いた感じがしていて、空白を埋めるために海棠さんに稽古をお願いした。

その前に...

「...なんで怪我上がりなのにそんなに動けるんスか...」
「伊達に戦場動き回ってねーよ」

怪我上がりの海棠さんにも勝てないなんて...!
いや、勝てるなんて思っちゃないけど!

「つかさ、お前そんなに動きトロかったっけ?もっと動けてたはずじゃん、1人で任務してたんだろ?よく死ななかったな」
「それは...」
「ま、いいけどさ。で、なんで俺に稽古つけてくれなんて言ってきたんだ?」

海棠さんが俺の上から退いて隣に座る。
俺も起き上がって座った。

「...万夜がいなくなってから...落ち着かなくて...」
「新しいメサイアいるんだろ、そいつは?」

そう言われて俺は俯くしかなかった。
埋められない隙間は新しいメサイアになっても埋まることは無く、逆に溝は深まっていくばかりだった。
そして、少し前に見えた天喜が誰かと立ち去っていくあれは。
間違いなく俺の前のメサイアだ。
それでいいと思う俺がいる反面、「今のメサイアは俺なのに」と思う俺もいる。

その葛藤が分かるのか、海棠さんは俺が話をするのを待っていた。

「...お前の葛藤はよく分かるよ。そういう奴らを見てきたしさ。...けどさ、お前それでいい訳?
神代が選んだのかも知んないだろ、それを無下にすんのか?お前それで神代の理想の世界作れんのかよ」
「...分かんないっすよ、失ったことない海棠さんには分かんないんすよ!」
「...てめぇもっかい言ってみろや」
「何度でも言いますよ!分からないんすよ!海棠さんに俺の気持ちなんて!」

すると海棠さんは俺の額に自分が愛用しているハンドガンを当てた。
目が怒っている。
逆鱗に触れた。

そこから俺は何も覚えていない。
ただ、本物を使って本気でやりあった事くらいしか。
気がついたら海棠さんは御津見さんに、俺は百瀬さんに止められていた。

「なにやってんの!あれほど使うなって言ったでしょう!雛森と瑠衣じゃないんだからやめなさい!」
「離してください!」
「熱くなりすぎだぞ鋭利」
「うるさい離せよ珀!」
「...いい加減にしなさい!」

2人で百瀬さんのスリッパビンタを食らう。
しばらくの間俺と海棠さんの頬からスリッパの形が消えなかったし、ドクターからはお互い肋を折る大怪我だったこともありそれぞれ見張りをつけられて安静になったことは余談だ。

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