Bouquet of flowers to Messiah

有賀尋

One of only you

ある日夢を見た。
そこには沢山の伊織が居て、俺を取り囲んでいる夢。

『この中から本物を探してみろ』
『絶対に探せない』
『俺達は沢山いる』

...だからなんだ。
だからどうした。
俺が知ってる伊織はただ1人だ。

「...邪魔だ、ここにいるのは伊織じゃない。...ただの容れ物人形だ!」

俺は空っぽの伊織をかき分けて進んだ。
その間にもたくさんの伊織が声をかけてくる。

「衛、私が本物です」
「衛、私はここです」
「...うるさい!お前じゃない!」

伊織はそんなこと言わない。
言ったとしても、それは俺の知る伊織じゃない。

しばらくして、またひとつの塊を見つける。その中に小さく蹲る伊織を見つけた。

...いた。

これが俺の知ってる伊織だ。

「...伊織、見つけた」

俺は取り囲む奴らに銃を放つ。
俺はお前たちを相手にしない。
俺はその真ん中にいる伊織にだけ用事がある。

「...伊織」

俺は伊織に近寄り、手を伸ばす。

すると後ろで動く気配がして伊織を庇うと俺が撃たれる。


─もう何度この悪夢を繰り返しただろう。

はっと目が覚めてそこに伊織がいないことを確認する。

伊織に会いたい。
俺はきっと何かを言えずに、伊織が言って欲しい言葉を言えずにいる気がする。

「...伊織...会いたい...愛してる...」

その言葉は遠く北の空の寒空の下に誰に聞かれるでもなく消えていった。

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