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Bouquet of flowers to Messiah

有賀尋

I protect you even how many times 2

「...伊織を...殺す...?」
『そうです。正確には、連れて帰ってくるにあたり殺しても構わない、という事です』
「...そんな...そんなの...」
『衛、衛藤君がいます。治ります。死んだとしても』
「...でも...でも...!」
『それが、1番安全な方法です。...衛、草薙伊織を殺し、チャーチに連れ帰りなさい。命令です』
「...分かった」
『...ですが、殺さなくてもいいでしょう。あなたの状況判断に任せます』

それだけ言うと一嶋からの通信が切れる。

...伊織を殺す...。

どこかで殺したくないと思う反面、殺さなければ伊織を連れて帰れないということも分かっている。そして、殺せるのも俺だけだと言うことも、もちろん知ってる。

「...伊織...」

そんなこと考えたこともなかった。だってずっと一緒に戦うと思っていたから。

俺は伊織を殺せるのか。

ただその事だけが頭をぐるぐる巡る。
北方に着いてヘリを降りる。中に潜入すると伊織が待ち構えていた。

「...伊織!」
「...うるせえ」

伊織の言葉じゃない。伊織はそんなことは絶対言わない。

「...伊織...帰ろう...?」
「...帰る?何を言ってる、俺に命令するな!」

伊織が引き金を引く。

俺は避けてナイフを伊織に向かって振る。

「...目を覚まして伊織!」

伊織はそれを避けて俺の腹部を蹴る。さすがに堪えた。俺は蹲った。

「目を覚ます?ふざけるな、俺は何も変わってない!」
「っ、変わった…!伊織は...伊織はそんなんじゃない!」

足を引っ張って転ばせる。でも瞬時に伊織は転がって俺の上に乗るとナイフを振り下ろした。

「だったら…だったらそれは俺じゃない!」
「じゃあ誰!今までのは...誰!」

俺も転がって起き上がり距離を取って伊織を払いのける。それでも伊織は撃ちながら接近してきた。俺はそれに対抗して撃っていく。

「そんなの知るか!」
「...お願い...目を...目を覚まして伊織!」
「…うるさい、何度も同じこと言わせんな!」

多少傷つきながら接近してきて銃身で殴られた。腹を蹴られるのも銃身で殴られるのも痛くない。そのはずなのに...どうして痛いんだ...?

俺は殴られて意識を失いかけるも引き金を引いた。

「ぐあっ!...伊織...!」

伊織は避けるも弾は頬を掠っていった。

「…飽きた、楽にしてやるよ」

俺を転ばせて踏みつけ銃を向ける。
銃と一緒に向けられた「殺意」と「虚無の目」。

「...な、んで...」

俺は負けじと銃を向ける。ただの虚勢でもいい。時間を稼ぎたい。

「…往生際が悪い、この期に及んで命乞いか?」
「...ち、がう...百瀬さんに...一緒に...帰るって...約束した...」
「…そんなの、俺には関係ねーんだよ。...終わりだ」

引き金を引く指に力が入るのがわかる。

...でも。

「...関係なく...ないんだよ!」

俺は起き上がって銃を蹴り飛ばし逆に突きつけた。伊織は少しよろめいた。

「…形勢逆転、って訳か」
「...一緒に帰るって、約束した...。だから...一緒に帰ろう...!」

引き金を引く指に力を入れる。でも、いつもあんなに軽く引いていた引き金が、なぜか重たい。体が撃つのを拒否してるかのようだった。

「…撃てよ」

伊織が手を挙げて降参の姿勢になった。

「...伊織...」
「早くしろよ、そんなに連れて帰りたいなら殺してけ」

連れて帰りたいなら殺せ。
連れて帰ってくるにあたり殺しても構わない。

伊織を危険な目に遭わせないようにと命令されていたのは俺。でも、伊織が危険人物になってしまった以上、俺は伊織を殺さなきゃいけない。
でも...殺せない。

「...撃てない...!伊織のこと...撃てない...」
「…興醒めだ!」

伊織が俺の腕を蹴って銃を飛ばす。俺は銃を手離した。伊織が銃をキャッチした瞬間に俺に向ける。
でも、俺だって丸腰じゃない。

「…サクラってのは、随分用意周到なんだな」

隠し持っていた銃を伊織と同タイミングで突きつける。伊織は口元に笑みを浮かべていた。

「...伊織が教えてくれた。何があるか分からない、だから用意が必要なんだって」
「…生憎、それは俺とは別人だな!」

懐からナイフを引き抜き一瞬で接近してきた。でも伊織は伊織だ。

『...伊織、それじゃ敵に撃たれる、ガラ空きだよ』
『そうなんですか?じゃあどうすれば...』
『...こう。そうしたらがら空きにはならない』

いつか手合わせの時に教えたはずなのに。

ガラ空きの場所を狙って俺は引き金を引いた。
引き金は重くない。いつもの軽さに戻っていた。伊織は避けることなく受け、ナイフを振り上げるも落とした。

「…甘かったのは俺か」
「伊織!」
「…お前の言う伊織は、俺とは違うみてーだけど…幸せもんかもな」

俺は伊織に駆け寄る。伊織は近寄らせないように銃を向けてきた。でも俺は知ってる。俺は臆せず近づいた。

「...引き金を引く力は残ってないはずだよ、伊織」
「…やっぱお見通しだよな」

口の端に笑みを浮かべると腕を下ろした。伊織も俺もボロボロだけど、伊織にはもう引き金を引く力は残ってない。

「...ごめんね、伊織」

俺ははまた銃を向けた。泣きそうになるのを堪えつつ、真っ直ぐに伊織を見据えて。

「気にしねーよ、これが俺の運命ってだけだ」
「...ちょっと寝てて。...またすぐに会えるから…」

躊躇い無く引き金を引くと、伊織は崩れ落ちて足元に倒れた。

俺は伊織を殺した。この手で。伊織のそばに膝をついて崩れる。伊織を抱きしめると、涙がこぼれた。どんどん冷たくなっていく伊織が怖かった。
俺は通信を入れる。喋れる自信はなかった。

『衛ちゃん!?』
「...百瀬さん...終わった...でも...でも伊織が...!」

俺は通信を気にせずに大泣きした。叫んだ。伊織をこの手で殺した罪は重い。
伊織を守れと命令された。伊織を守るために「衛」と名前がつけられたはずなのに。それなのに殺してしまった。

「...伊織...!伊織...!ごめん...伊織...!」
『...衛、戻っておいで。僕が衛も伊織も助けるから』

昴が通信に入ってきた。

「...昴...?」
『よくやったよ、衛。約束したんだろ、一緒に帰るって。...誰も衛を責める人も怒る人もいないから。...戻っておいで、チャーチに』
「...うん...」
『衛ちゃん、約束、守ってくれたのね。戻ってらっしゃい、みんな待ってるわ』
「...うん...!」

伊織を抱きかかえてヘリと合流する。伊織は止血の処置をしてある。俺の怪我も傷も開いていたりしていた。
血を流しすぎたのか目の前がぼやける。意識を保っているので精一杯だ。
でも、分かる。まだ再生不能なまでじゃない。

「...伊...織...行かな...で...」

俺はぼやける視界を最後に見て意識を手放した。

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