Bouquet of flowers to Messiah
Angel Wings rest
季節が一周して、また春が来た。
俺達を象徴するあの花が咲き始める頃だ。
「ねぇ雅志!これ行こ!」
オフの前日に颯空がワクワクしながら紙を見せてきた。
珍しく揃ってオフが取れるなんて久しぶりで、次に被ったら颯空が行きたいところに行こうと言っていたのだ。
「どこに?」
「これ!」
「...動物カフェ?」
猫カフェ、フクロウカフェ、ハリネズミカフェのチラシを持って目をキラキラさせている。
そういえば、颯空には真っ白な九尾がついているんだっけ。
「動物好きなの?」
「うん、大好き!北方にいた時は猫をあまり見なかったから…触れなかったし…だから行きたい!」
「分かったよ、じゃあ明日行こう」
「...ほんと!?」
「あぁ、本当に。颯空の行きたいところに行こうって決めてたしね」
あんなに目を輝かせている颯空には勝てない。
約束をしていたから尚更だ。
「ほら、今日は早く寝な?明日起きられなくなるよ」
「楽しみで寝れないよ!早く明日にならないかな!」
遠足前の子どもを見ているようで微笑ましかった。なんというか、かわいい。
夜は強制的に寝せて、翌日少し早く目が覚めた。まだ隣で寝ている颯空を起こさないようにそっと起き出し準備を始める。少しくらいゆっくり寝せても問題ない。
「...今何時...?」
颯空が目を覚まして体を起こす。時間は朝の7時。
「おはよう、まだ7時だよ」
「7時...」
「うん、まだ少し早いから大丈夫だよ?」
そう言うと颯空はむっすーとしながらベッドの自分の隣を不機嫌そうに叩く。
...そうだ、忘れてた。
隣に座ってそっと唇を重ねる。
「おはよう、颯空」
「...おはよう、雅志」
これをしなければ颯空は不機嫌なのだ。
「ごめん、忘れてた」
「...昨日は寝る時にしてくれなかった」
「それ以上の事をしたのに?」
「...それよりもおやすみのキスがいい...」
「わかった、ほら、着替えて着替えて」
そう言って着替えさせてから朝だけ食堂に食べに行く。一緒の席について食べていると、百瀬さんが声をかけてきた。
「あら、今日はオフじゃないの?」
「百瀬さん、今日雅志と...」
「お出かけ?ならおめかししなきゃね!」
「...おめかし...?」
「そうよ!可愛くしないとね!」
「百瀬さん、可愛くしなくても...」
「いいから任せておきなさい、颯空ちゃん行くわよ!」
そう言うと百瀬さんは颯空を引っ張って行った。残した分は透明なケースに詰めてもらって部屋に持っていく。
俺も準備を済ませて部屋で待っていると、ドアがノックされた。
ドアを開けるとそこには百瀬さんがいて、その後ろに、颯空がいたが…
「百瀬さん、颯空...ですよね...?」
そこには春らしいモスグリーンのロングスカートに、白のニット、赤のスニーカーを履いている颯空がいた。上は薄手のベージュのコートを羽織っている。心做しか薄くメイクもしてある。
「そうよ、可愛いでしょ?並ぶとカップルに見えるわよ?」
「...こんな身長大きい女の人居ないよ…それにスカート...」
「いるわよ、モデルなんてそれぐらいあるじゃない?ほら早くデートいってらっしゃいな、楽しんでくるといいわ」
「...行こ、雅志...」
颯空が俺の袖を軽く掴んで引っ張る。
なんというか、これはこれで可愛い。
要約すると、『俺のメサイアは可愛い』
チャーチを出て自然と手を繋いで歩く。
俺の方といえば、ベージュのパンツにネイビーのジャケット、白い長袖のインナーに薄手の黒いコートダッシュの効く某ブランドのスニーカー。コートは着ないで持ち歩いている。
颯空はしきりに気にしながら歩いている。
「気になる?」
「...だってスカートだし...中にインナーは履いてるけど...スースーする...」
「大丈夫だと思うよ?...最初どこがいい?」
そんな会話をしつつ電車に乗り向かった先は猫カフェ。最初に猫カフェがいいと言ったのだ。
「...わぁ...!猫がいっぱい...!」
中に入ると沢山のお客さんもいたが、それ以上に猫が多い。颯空は目をキラキラさせてその場に座る。すると、自然と猫が寄ってきて、数分しないうちに複数の猫が颯空の周りに集まっていた。
颯空が手を伸ばして撫でると猫は気持ちよさそうに撫でられていて、大人しかった。
「すごいふわふわしてる...!可愛い...!ねぇ雅志、可愛いよ!」
終始目を輝かせている颯空に周りは癒されていた。俺もそのうちの一人で、写真を撮ったり触ったりしていた。もちろん、盗撮されることも考えてあったし、盗撮する人が多かったのも想定内だ。絶対にSNSにあげないことを条件として残すことを許可したが、大体は削除させてある。
3つをちゃんと行って、帰りに少しだけ寄り道をした。と言っても、俺が注文していたものを取りに行くだけだったけど。
「...雅志、ここは?キラキラしてる...」
「アクセサリーの店。ちょっと待ってて」
少し颯空を自由にして取りに行く。颯空はショーケースの中を見つめていた。
「お待たせ、行こう。今度はほんのちょっと俺に付き合って?」
「...うん、いいけど…」
そう言って連れていった先は、教会。
「...教会...?なんで...?」
「颯空、こっちこっち」
教会の祭壇に手招きすると颯空は恐る恐る近寄ってきた。俺はポケットから小さな箱を取り出してその場に跪いた。
「...雅志...?」
「ベタだけど、これ、貰ってくれないかな」
開けるとそこには指輪が2つ。もちろんペアリングだ。
「...指輪...?」
「うん、俺からの気持ち。ずっと颯空と一緒に居るって、一生守るって証」
受け取ってくれますか?
颯空は指輪を見てぽろぽろ涙をこぼした。
「...僕...こんな...幸せでいいのかな...」
「...いいんだよ、もう幸せになって」
「...え...?」
「私の事はもういいんだ。だから、幸せになりなさい」
「...父...さん...?」
「この人は幸せにしてくれる。だから安心して幸せになりなさい」
もちろんこの会話は聞こえているし覚えている。体を養い親に貸したからだ。ずっと見ていたのを知っている。ずっとそばにいたのを知っている。だからこそ、伝えたい事があるのだと、そう言った。俺は立ち上がって颯空を抱きしめた。
「...でも...でも...」
「大丈夫。手を離したりしない。彼はそう約束してくれた。何があっても、どんな事があっても、彼は手を離したりしない。颯空を1人にしないと。...颯空、顔を上げて?」
そう言うと颯空は泣いている顔を上げた。
涙を指で拭い、微笑む。
「颯空、お前はもう昔のお前ではないんだよ。前を向いて、ちゃんと立って彼の隣を歩いて行ける。...そうだろう?その指輪は彼の決意だ。彼の決意を無駄にしてはいけない」
「...うん...」
「いつでも見守っているよ、颯空。早くこっちに来ないようにね…」
そう伝え終えると「その人」は俺の中から出ていった。出て行ったというよりも、「安心した」という方に近い感覚なのだろう。
俺は颯空に問いかけた。
「...話せた?」
「...うん...ありがとう、雅志...」
「颯空、左手、出して?」
颯空に左手を出させて指に嵌める。もちろんサイズはぴったり。指輪には颯空の誕生日ラピスラズリを埋め込んである。
「...きれい...」
「良かった、似合ってる」
「いいの、これもらって?」
「いいの、俺があげたったから」
颯空が俺の肩に顔を埋めた。俺は自分にも指輪を嵌めて、抱きしめる。
こう考えると、颯空に出会えてよかったと思う。昔の俺はあんなにも死ねればいいとかくだらないことを考えていたのに。今は颯空のために生きたいと思うし、どこに行っても颯空のために帰ろうと思う。俺にとっての颯空はそういう意味だ。
「...帰ろうか、長居も出来ないだろうし」
「...うん、雅志、今日はありがと...」
「どういたしまして」
そっとキスをして手を繋いで教会を出る。
夕焼けがビルの間から顔を覗かせつつ、俺と颯空の長い影を作らせていた。
俺達を象徴するあの花が咲き始める頃だ。
「ねぇ雅志!これ行こ!」
オフの前日に颯空がワクワクしながら紙を見せてきた。
珍しく揃ってオフが取れるなんて久しぶりで、次に被ったら颯空が行きたいところに行こうと言っていたのだ。
「どこに?」
「これ!」
「...動物カフェ?」
猫カフェ、フクロウカフェ、ハリネズミカフェのチラシを持って目をキラキラさせている。
そういえば、颯空には真っ白な九尾がついているんだっけ。
「動物好きなの?」
「うん、大好き!北方にいた時は猫をあまり見なかったから…触れなかったし…だから行きたい!」
「分かったよ、じゃあ明日行こう」
「...ほんと!?」
「あぁ、本当に。颯空の行きたいところに行こうって決めてたしね」
あんなに目を輝かせている颯空には勝てない。
約束をしていたから尚更だ。
「ほら、今日は早く寝な?明日起きられなくなるよ」
「楽しみで寝れないよ!早く明日にならないかな!」
遠足前の子どもを見ているようで微笑ましかった。なんというか、かわいい。
夜は強制的に寝せて、翌日少し早く目が覚めた。まだ隣で寝ている颯空を起こさないようにそっと起き出し準備を始める。少しくらいゆっくり寝せても問題ない。
「...今何時...?」
颯空が目を覚まして体を起こす。時間は朝の7時。
「おはよう、まだ7時だよ」
「7時...」
「うん、まだ少し早いから大丈夫だよ?」
そう言うと颯空はむっすーとしながらベッドの自分の隣を不機嫌そうに叩く。
...そうだ、忘れてた。
隣に座ってそっと唇を重ねる。
「おはよう、颯空」
「...おはよう、雅志」
これをしなければ颯空は不機嫌なのだ。
「ごめん、忘れてた」
「...昨日は寝る時にしてくれなかった」
「それ以上の事をしたのに?」
「...それよりもおやすみのキスがいい...」
「わかった、ほら、着替えて着替えて」
そう言って着替えさせてから朝だけ食堂に食べに行く。一緒の席について食べていると、百瀬さんが声をかけてきた。
「あら、今日はオフじゃないの?」
「百瀬さん、今日雅志と...」
「お出かけ?ならおめかししなきゃね!」
「...おめかし...?」
「そうよ!可愛くしないとね!」
「百瀬さん、可愛くしなくても...」
「いいから任せておきなさい、颯空ちゃん行くわよ!」
そう言うと百瀬さんは颯空を引っ張って行った。残した分は透明なケースに詰めてもらって部屋に持っていく。
俺も準備を済ませて部屋で待っていると、ドアがノックされた。
ドアを開けるとそこには百瀬さんがいて、その後ろに、颯空がいたが…
「百瀬さん、颯空...ですよね...?」
そこには春らしいモスグリーンのロングスカートに、白のニット、赤のスニーカーを履いている颯空がいた。上は薄手のベージュのコートを羽織っている。心做しか薄くメイクもしてある。
「そうよ、可愛いでしょ?並ぶとカップルに見えるわよ?」
「...こんな身長大きい女の人居ないよ…それにスカート...」
「いるわよ、モデルなんてそれぐらいあるじゃない?ほら早くデートいってらっしゃいな、楽しんでくるといいわ」
「...行こ、雅志...」
颯空が俺の袖を軽く掴んで引っ張る。
なんというか、これはこれで可愛い。
要約すると、『俺のメサイアは可愛い』
チャーチを出て自然と手を繋いで歩く。
俺の方といえば、ベージュのパンツにネイビーのジャケット、白い長袖のインナーに薄手の黒いコートダッシュの効く某ブランドのスニーカー。コートは着ないで持ち歩いている。
颯空はしきりに気にしながら歩いている。
「気になる?」
「...だってスカートだし...中にインナーは履いてるけど...スースーする...」
「大丈夫だと思うよ?...最初どこがいい?」
そんな会話をしつつ電車に乗り向かった先は猫カフェ。最初に猫カフェがいいと言ったのだ。
「...わぁ...!猫がいっぱい...!」
中に入ると沢山のお客さんもいたが、それ以上に猫が多い。颯空は目をキラキラさせてその場に座る。すると、自然と猫が寄ってきて、数分しないうちに複数の猫が颯空の周りに集まっていた。
颯空が手を伸ばして撫でると猫は気持ちよさそうに撫でられていて、大人しかった。
「すごいふわふわしてる...!可愛い...!ねぇ雅志、可愛いよ!」
終始目を輝かせている颯空に周りは癒されていた。俺もそのうちの一人で、写真を撮ったり触ったりしていた。もちろん、盗撮されることも考えてあったし、盗撮する人が多かったのも想定内だ。絶対にSNSにあげないことを条件として残すことを許可したが、大体は削除させてある。
3つをちゃんと行って、帰りに少しだけ寄り道をした。と言っても、俺が注文していたものを取りに行くだけだったけど。
「...雅志、ここは?キラキラしてる...」
「アクセサリーの店。ちょっと待ってて」
少し颯空を自由にして取りに行く。颯空はショーケースの中を見つめていた。
「お待たせ、行こう。今度はほんのちょっと俺に付き合って?」
「...うん、いいけど…」
そう言って連れていった先は、教会。
「...教会...?なんで...?」
「颯空、こっちこっち」
教会の祭壇に手招きすると颯空は恐る恐る近寄ってきた。俺はポケットから小さな箱を取り出してその場に跪いた。
「...雅志...?」
「ベタだけど、これ、貰ってくれないかな」
開けるとそこには指輪が2つ。もちろんペアリングだ。
「...指輪...?」
「うん、俺からの気持ち。ずっと颯空と一緒に居るって、一生守るって証」
受け取ってくれますか?
颯空は指輪を見てぽろぽろ涙をこぼした。
「...僕...こんな...幸せでいいのかな...」
「...いいんだよ、もう幸せになって」
「...え...?」
「私の事はもういいんだ。だから、幸せになりなさい」
「...父...さん...?」
「この人は幸せにしてくれる。だから安心して幸せになりなさい」
もちろんこの会話は聞こえているし覚えている。体を養い親に貸したからだ。ずっと見ていたのを知っている。ずっとそばにいたのを知っている。だからこそ、伝えたい事があるのだと、そう言った。俺は立ち上がって颯空を抱きしめた。
「...でも...でも...」
「大丈夫。手を離したりしない。彼はそう約束してくれた。何があっても、どんな事があっても、彼は手を離したりしない。颯空を1人にしないと。...颯空、顔を上げて?」
そう言うと颯空は泣いている顔を上げた。
涙を指で拭い、微笑む。
「颯空、お前はもう昔のお前ではないんだよ。前を向いて、ちゃんと立って彼の隣を歩いて行ける。...そうだろう?その指輪は彼の決意だ。彼の決意を無駄にしてはいけない」
「...うん...」
「いつでも見守っているよ、颯空。早くこっちに来ないようにね…」
そう伝え終えると「その人」は俺の中から出ていった。出て行ったというよりも、「安心した」という方に近い感覚なのだろう。
俺は颯空に問いかけた。
「...話せた?」
「...うん...ありがとう、雅志...」
「颯空、左手、出して?」
颯空に左手を出させて指に嵌める。もちろんサイズはぴったり。指輪には颯空の誕生日ラピスラズリを埋め込んである。
「...きれい...」
「良かった、似合ってる」
「いいの、これもらって?」
「いいの、俺があげたったから」
颯空が俺の肩に顔を埋めた。俺は自分にも指輪を嵌めて、抱きしめる。
こう考えると、颯空に出会えてよかったと思う。昔の俺はあんなにも死ねればいいとかくだらないことを考えていたのに。今は颯空のために生きたいと思うし、どこに行っても颯空のために帰ろうと思う。俺にとっての颯空はそういう意味だ。
「...帰ろうか、長居も出来ないだろうし」
「...うん、雅志、今日はありがと...」
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