Bouquet of flowers to Messiah

有賀尋

蓮の花

『蓮の花のように強く育ちますように』

名前の由来はそうだと母は言った。
母は外国人だったけど日本語が達者な人で、父の愛人だった。その父と母の間に生まれたのが僕だ。
父にはちゃんとした奥さんがいた。奥さんは僕のことや母の事を知っていたし、むしろ歓迎してくれていた。そこにいたのが、2つ上の異母兄弟の兄に当たる幸仁兄さんだ。
僕は最初のうちは引っ込み思案で人見知りで、泣き虫で、いつも幸仁兄さんの後ろをついてまわるだけだった。そんな僕でも幸仁兄さんはそばにいてくれた。異母兄弟と言えど本当の兄弟に見えていたと、あとから聞いた。
良く家に泊まりに行ったりもしていた。夜寝る時は決まって幸仁兄さんと一緒だった。

「幸仁兄さん...」
「...どうしたの、蓮?寝れないの?」
「怖い...」
「怖い?何が?」
「...1人で寝れない...」
「いいよ、一緒に寝よ?」

いつも一緒にいてくれて、いつも一緒に寝てくれる。優しくて強くて、一緒にいると安心する兄さんが大好きだった。

...なのに、どうして...?
どうしていなくなったの?
どこにいるの?

兄さんは突如姿を消した。失踪事件として扱われたけど、結局は捜査の目処も立たずお蔵入りとなってしまった。後に兄さんは死んだことになった。
でも、僕は疑った。
兄さんは死んでない、どこかで絶対に生きてる。

数年後に会うなんて、まさか兄さんにあんなことをされるなんて思いもしなかった。

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