Bouquet of flowers to Messiah

有賀尋

1 of the beloved person in the world

「行ってくるね、晴」

そう言って自分のメサイア、宋流を見送って数日。
俺達も日数は短いものの単独で任務に行くことが増えた。最近は海斗や愛斗の教官として一緒に任務に行くことも多くなった。
俺も任務をこなしながら帰ってくるのを待っていた時に、ふと端末を見てみた。宋流の提案で、端末をリンクさせておこうという事になりお互いの場所がわかるようになっている。
すると、宋流の場所を示すのが海のど真ん中にあることに気がつく。

...おかしい、宋は確か北欧にいるはずなのに...どうして大西洋のど真ん中辺りにいる...?

島でもあるのかと思って拡大して調べてみてもそこには島という島はなく、衛星写真でも島はなく、人が居られるような岩もない。かと言って緊急発信もない。
俺は考えるより先に部屋を飛び出して百瀬さんのところに向かう。

「百瀬さん!」
「どうしたの?」
「宋流が...!」
「え...?」

俺は百瀬さんに説明した。俺も血相を変えたが百瀬さんはもっと血相を変えていた。
大西洋のど真ん中と聞けば誰だって血相が変わる。しかも何も無いとなるなら尚更だ。

「行きなさい、稲川君、ヘリを用意するわ」
「...はい!」

百瀬さんが用意してくれたヘリに乗って、俺は宋のいる大西洋のど真ん中を目指した。潜ってみなければどこにいるか分からない。ただ、場所はここを示している。
海面スレスレでホバリングしたヘリから海へ飛び込む。それなりに深いはずだし、限界はあるが、どこかで止まっているのを期待するしかない。
体は傷だらけなはずだ。たまに来る連絡はどこに怪我をしたとかしなかったとかそんな報告ばかりだった。
必死に水中で目を凝らしながら宋流を探す。

どこかに岩があれば…!そこで止まっているはず...!

俺の予感は正しく、途中で岩があった。
近寄るとそれは人間で、漂う黒髪は俺の知っている黒髪だった。
そして確信を得る。

これは間違いなく宋だと。

あちこちにある傷が痛々しい。宋を抱き抱えて水面まで戻り、鏡を使って合図をする。ヘリからロープが下ろされて宙吊りになり、ヘリに乗り込む。すぐに心肺蘇生と人工呼吸で救命措置を始める。

「...帰ってこい...!帰ってこいよ、宋!!」

デッドラインは既に超えている。でも、藁にもすがる思いで望みをかけた。ここで宋を死なせるわけにはいかない。

「...俺は...お前がいなくなったら誰とメサイアを組むんだよ!そんな事...お前許さないんだろ!お前以外と組む気はないんだよ!帰ってこい、行くな、宋!」

必死に声をかけながら続けていくと宋が咳き込んだ。息を吹き返した。

「...宋!」
「...は、る...?」
「...よかった...!本当によかった...!」

宋を温めるようにきつく抱きしめた。
抱きしめた体は冷たくて、氷のようだった。ただ、宋を通して伝わる心臓は確かに動いていた。そっと重ねた唇も冷たかった。

「...どうして...」
「お前の端末のおかげだよ。...驚いた、大西洋のど真ん中に居るなんて」
「...そうだ、僕...」

戦闘で追い詰められて海に落ちた事、1度引き上げられてど真ん中に捨てられた事...。

「...会えないかと...」
「俺も思ったよ…でもリンクさせてたから見つけられたんだ」
「...さすが晴だね、どこにいても見つけてくれる」
「宋だからだ」

宋は微笑んでやっと抱きついた。
チャーチに戻ってから言われたのは、やはりデッドラインは既に超えていたこと、普通ならありえないことだ。それでも戻ってきたのは宋の意志で、俺の意地のおかげだと。

「まさか晴の意地だったなんてね」

少し経って宋の体が良くなった頃、笑われた。

「仕方ないだろ...」
「嬉しいよ?でもどうして?」
「...何が」
「どうして意地になったの?」
「...教えない」
「えー?どうして?」

言えるか、惚れた弱みだなんて。

しつこい質問をかわしておく。
でも、俺は最愛の人には一生、いや、死んでもかなう事はないんだろう。それでもいいか。

永遠の絆を誓い合った。誰にも切らせることの出来ないたった一つの絆だ。

俺達はずっと共に戦う。
これからも共に。

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