Bouquet of flowers to Messiah
The doctor's intuition
師が走ると書いて師走。
師とは各々が考える師であり、俺も分類されるのは「師」に当たるらしい。
研究、学会が目白押しで梓音とはすれ違い気味だ。本当は連れてこようかと思った学会も、梓音に任務が入ったおかげで俺一人。
「...あーまた1人か...」
「何よ、寂しいならついてってあげましょうか?」
百瀬さんとのそんなやり取りもただ虚しいような悲しいような。
「残念、俺は梓音しか連れていかないって決めてるんで」
「つれないわね、冗談よ。ごめんなさいね、任務入れちゃって」
「梓音はそれが仕事でしょ、分かってるって」
「今日は早く帰るの?」
「さぁ?...あ、でも梓音帰ってくるの今日だよな?」
昨日から任務に行った俺のメサイアは、今日帰ってくるはずで、どうせ梓音の事だ、怪我をして帰ってくるに違いない。
「そうね」
「何がなんでも帰る」
「...分かったわ、終わったら連絡ちょうだいね」
「はいはい、んじゃ行ってきます」
そう言ってチャーチを出る。俺は今からゴーストドクターじゃなく、研究の第一人者、「有栖川駿介」に変わる。もちろん偽名。
会場に着くと、まぁ某医大の先生やら、教授やらが既にビジネスの話で盛り上がっていた。
「あ、雪斗...」
「有栖川せーんせ、やっほー☆」
1番聞きたくなかった声の方を振り向くと、結城兄弟、そして、俺の天敵、神楽坂遥人がいた。悠隼の方は兄の怜に口を塞がれていた。
遥人は上手く使い分けている。
「...いたのか」
「もっちろーん。俺はくそじじいを論破するためにね」
「俺達はただの傍聴だ、悠隼の後学のためにな」
「真面目だな。そろそろ離してやれ、苦しそうだぞ」
怜が手を離すと悠隼が深呼吸した。
「もう!お兄ちゃん酷いよ!」
「酷くない、こいつは今有栖川駿介っていう名前なんだ」
「悪い、教えてなかったよな?俺はここに出る時はその名前になってるんだ」
「そうだったんですか...知らなくてすみません...」
「いやぁ、それは教えてない怜が悪いんじゃなくて?」
「...教育者2人に責任ありということにしといてやるよ」
そんな会話をしつつ会場に入る。会場の雰囲気はそうでも無いのに話がつまらない上に長くて眠くなる。そんな話をする方が悪いんだ。
「有栖川さん」
振り向くとそこには衛藤昴がいた。
「昴」
「あーれー?クローン研究の第一人者の引きこもりが出てきたの?」
「...げ、神楽坂いたのかよ」
「うるさいなぁ、同期だからってー」
「うるさいぞ、静かにしろ」
学会が始まると遥人はどんどん教授クラスを論破していった。俺の時は大人しかったが。
学会が終わって会場を出ると、遥人が飲みに行こうと言い出した。
「あー終わったー、ねー雪斗ー、飲み行こーよー」
「悪いな、帰る」
「何なにぃ?梓音君としっぽり?」
「んなわけあるか、任務だから帰ってきてるはずなんだよ。怪我してな。んじゃ」
そう言ってチャーチに向かって歩き出す。
梓音がいればこんな道も暇じゃないのに、と考えつつ歩いていると、微かに血の匂いがした。
ここら辺はそんなに治安がいいわけじゃない。
どっかのバカが喧嘩でもして野垂れてんのか?
路地裏を歩いていくと、人が倒れているのを見つける。
わざわざこんなところで、と近寄るとそれはどこか見慣れている姿。
「...梓音?」
まさかと思って駆け寄ると、紛うことなき自分のメサイアだった。
「梓音!おい、しっかりしろ!」
持っていた道具でとりあえず応急処置を行う。すぐに百瀬さんに連絡を取り、チャーチに連れて帰る。治療を終えて集中治療室に入れて目を覚ますのを待った。
帰って正解だったと思うと同時に、連れていけばよかったと心の底から後悔した。
「...梓音...頼むから...目ぇ覚ませ...!」
俺はこの時ばかりは神様に祈った。
どうか、俺が愛する人を取らないでくれ、と。
数日経った昼下がり、様子を見に寄った時に目を覚ました。
「...あれ...?」
「梓音!」
「...雪...?...ここは...?」
「チャーチだ、全く、お前は...」
「...俺...任務で...路地裏に...」
「知ってる。助けたのは俺だからな」
「...雪...が...?」
梓音に事の顛末を話す。
学会の帰りの血の匂いを辿ると倒れていた事、数日目を覚まさなかったこと。
「...俺...もう...ダメかと...雪にもう会えないと思ってた…」
「ばーか、何言ってんだよ。どんなにダメになっても俺が見つけるよ」
「...え...?」
「俺はお前のメサイアで、医者だろ。何があっても助けてやるよ」
「...うん...」
梓音の傷が治るのは結構長いことかかった。それだけ深手だったし、色々と併発したからである。だからか今回は大人しかった。
まぁそれもそうだろう。なんせ梓音は俺が生きようとしないやつに厳しいことは知っているのだ。それに梓音も変わった。その成長は褒めるべきだろう。
「...なぁ、雪、気になったんだけど…」
「どした?」
徐に梓音が問いかけてきた。
「あのさ、俺路地裏にいたよな、何で見つけられたんだ?」
「...あぁ、その事か。...医者の勘、ってやつだよ」
「...勘かよ...」
「なんだ、愛の力とでも言って欲しかったか?」
「はぁ!?違うし!」
実際に勘だったのだから仕方がない。
こればかりは説明のしようがないのだ。
「ほら今日も忙しくなるぞ、梓音。なんせ無茶する人達が帰ってくる」
「...そうだった...」
師が走ると書いて師走。
俺はいつも走り回る。
1人じゃない、最愛の人と一緒に。
師とは各々が考える師であり、俺も分類されるのは「師」に当たるらしい。
研究、学会が目白押しで梓音とはすれ違い気味だ。本当は連れてこようかと思った学会も、梓音に任務が入ったおかげで俺一人。
「...あーまた1人か...」
「何よ、寂しいならついてってあげましょうか?」
百瀬さんとのそんなやり取りもただ虚しいような悲しいような。
「残念、俺は梓音しか連れていかないって決めてるんで」
「つれないわね、冗談よ。ごめんなさいね、任務入れちゃって」
「梓音はそれが仕事でしょ、分かってるって」
「今日は早く帰るの?」
「さぁ?...あ、でも梓音帰ってくるの今日だよな?」
昨日から任務に行った俺のメサイアは、今日帰ってくるはずで、どうせ梓音の事だ、怪我をして帰ってくるに違いない。
「そうね」
「何がなんでも帰る」
「...分かったわ、終わったら連絡ちょうだいね」
「はいはい、んじゃ行ってきます」
そう言ってチャーチを出る。俺は今からゴーストドクターじゃなく、研究の第一人者、「有栖川駿介」に変わる。もちろん偽名。
会場に着くと、まぁ某医大の先生やら、教授やらが既にビジネスの話で盛り上がっていた。
「あ、雪斗...」
「有栖川せーんせ、やっほー☆」
1番聞きたくなかった声の方を振り向くと、結城兄弟、そして、俺の天敵、神楽坂遥人がいた。悠隼の方は兄の怜に口を塞がれていた。
遥人は上手く使い分けている。
「...いたのか」
「もっちろーん。俺はくそじじいを論破するためにね」
「俺達はただの傍聴だ、悠隼の後学のためにな」
「真面目だな。そろそろ離してやれ、苦しそうだぞ」
怜が手を離すと悠隼が深呼吸した。
「もう!お兄ちゃん酷いよ!」
「酷くない、こいつは今有栖川駿介っていう名前なんだ」
「悪い、教えてなかったよな?俺はここに出る時はその名前になってるんだ」
「そうだったんですか...知らなくてすみません...」
「いやぁ、それは教えてない怜が悪いんじゃなくて?」
「...教育者2人に責任ありということにしといてやるよ」
そんな会話をしつつ会場に入る。会場の雰囲気はそうでも無いのに話がつまらない上に長くて眠くなる。そんな話をする方が悪いんだ。
「有栖川さん」
振り向くとそこには衛藤昴がいた。
「昴」
「あーれー?クローン研究の第一人者の引きこもりが出てきたの?」
「...げ、神楽坂いたのかよ」
「うるさいなぁ、同期だからってー」
「うるさいぞ、静かにしろ」
学会が始まると遥人はどんどん教授クラスを論破していった。俺の時は大人しかったが。
学会が終わって会場を出ると、遥人が飲みに行こうと言い出した。
「あー終わったー、ねー雪斗ー、飲み行こーよー」
「悪いな、帰る」
「何なにぃ?梓音君としっぽり?」
「んなわけあるか、任務だから帰ってきてるはずなんだよ。怪我してな。んじゃ」
そう言ってチャーチに向かって歩き出す。
梓音がいればこんな道も暇じゃないのに、と考えつつ歩いていると、微かに血の匂いがした。
ここら辺はそんなに治安がいいわけじゃない。
どっかのバカが喧嘩でもして野垂れてんのか?
路地裏を歩いていくと、人が倒れているのを見つける。
わざわざこんなところで、と近寄るとそれはどこか見慣れている姿。
「...梓音?」
まさかと思って駆け寄ると、紛うことなき自分のメサイアだった。
「梓音!おい、しっかりしろ!」
持っていた道具でとりあえず応急処置を行う。すぐに百瀬さんに連絡を取り、チャーチに連れて帰る。治療を終えて集中治療室に入れて目を覚ますのを待った。
帰って正解だったと思うと同時に、連れていけばよかったと心の底から後悔した。
「...梓音...頼むから...目ぇ覚ませ...!」
俺はこの時ばかりは神様に祈った。
どうか、俺が愛する人を取らないでくれ、と。
数日経った昼下がり、様子を見に寄った時に目を覚ました。
「...あれ...?」
「梓音!」
「...雪...?...ここは...?」
「チャーチだ、全く、お前は...」
「...俺...任務で...路地裏に...」
「知ってる。助けたのは俺だからな」
「...雪...が...?」
梓音に事の顛末を話す。
学会の帰りの血の匂いを辿ると倒れていた事、数日目を覚まさなかったこと。
「...俺...もう...ダメかと...雪にもう会えないと思ってた…」
「ばーか、何言ってんだよ。どんなにダメになっても俺が見つけるよ」
「...え...?」
「俺はお前のメサイアで、医者だろ。何があっても助けてやるよ」
「...うん...」
梓音の傷が治るのは結構長いことかかった。それだけ深手だったし、色々と併発したからである。だからか今回は大人しかった。
まぁそれもそうだろう。なんせ梓音は俺が生きようとしないやつに厳しいことは知っているのだ。それに梓音も変わった。その成長は褒めるべきだろう。
「...なぁ、雪、気になったんだけど…」
「どした?」
徐に梓音が問いかけてきた。
「あのさ、俺路地裏にいたよな、何で見つけられたんだ?」
「...あぁ、その事か。...医者の勘、ってやつだよ」
「...勘かよ...」
「なんだ、愛の力とでも言って欲しかったか?」
「はぁ!?違うし!」
実際に勘だったのだから仕方がない。
こればかりは説明のしようがないのだ。
「ほら今日も忙しくなるぞ、梓音。なんせ無茶する人達が帰ってくる」
「...そうだった...」
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俺はいつも走り回る。
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