Bouquet of flowers to Messiah

有賀尋

Christmas tragedy

「じゃあいってきまーす」
「気をつけていくのよー?」

百瀬さんに見送られて僕は私服でチャーチを出た。
珍しく僕はオフを貰った。雪とはオフが合わなかった。雪に何かを買ってあげたくて、外に出たはいいものの、いざ出てくると迷ってしまう。

電車に乗って行き当たりばったりでもいいか。

そう思いながらぶらぶら街を歩く。
世間はもう冬で、クリスマスが近い。街の中はクリスマス一色だ。もちろん僕達サクラにはそんな世間様の行事なんて関係ない。だから年末年始も、長期休みもお盆も一切ないのだ。
海棠さんや御津見さん、他の人達は特別な扱いをしているみたいだけど、僕達はそんなのは一切なかった。正直羨ましくないかと言ったら嘘になってしまうけれど、それはわがままな気がして雪に言わずに黙っている。

「何をプレゼントしようかな...雪が喜んでくれるのって何かな…」

そんなことを考えて店を覗きながら探して回る。色んなものがあって選ぶのは楽しかったし、何より喜んでくれるかを考えるのは楽しかった。

しばらく歩いたところで、僕は誰かにつけられているのを感じた。僕だってサクラの端くれ、感じないわけが無い。どうにか撒けないかを考えて歩くと、細路地に入った。いや、誘い込まれたに近い。

...しくった。

雪にこれが知れたら怒られること間違いない。サクラとして失格だ。

僕は素早くGPSをONにする。
何があっても端末は体から離すな、という教えに基づいて見えないところに端末を隠した。
多分僕だと分かっているんだと思う。そうじゃなきゃやらないはずだ。

...ゴースト狩りか...。

とりあえず緊急発信だけはしておかないとまずいかな。
こんな時に冷静になるなんてどうかしてる。でも、何故か冷静なのだ。護身用として一応護身術は心得たものの、軽く意識を飛ばせるだけの威力はある。が、相手だってそう簡単に意識は飛ばないだろう。
後ろから掴まれて肘を鳩尾にくれてやっても相手は倒れなかった。逆に手を逆手に取られてその場に倒される。

「...見つけたぞ、前谷尋」

...ごめん、雪...。

低いその声を最後に僕の意識はなくなった。


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