Bouquet of flowers to Messiah
The role of the shield
伊織が任務に行った。
そう聞かされたのは俺が任務から戻ってからだった。
「...任務に?」
「えぇ、単独で」
「...どこに」
「...北方へ、よ」
伊織が北方に行くなんて。今北方は毒薬の研究が進んでいると聞いた。ついこの間まで北方に潜入していたのだから間違いはない。
踵を返してチャーチを出て再び北方に向かう。
...伊織を助ける。
それしか頭の中にはなかった。
北方に到着すると俺は伊織の匂いを辿った。ほんの微かに残っている匂いを辿っていくと、地下牢にたどり着いた。地下牢に繋がっている入口は2つ。ひとつは目の前にある扉、そしてもうひとつは、
「...ここから行く」
天井にある通気孔を押し上げて通気孔を辿る。匂いを元に辿れば伊織のところに着くのは簡単だ。
狭い通気孔を抜けて、出口を確保した後、伊織の地下牢に向かうと、中で伊織が倒れていた。
「...伊織...!」
急いで中に降りる。
右手に小瓶が握られていて、試験紙を使うと毒薬であることは明白だった。誤飲したわけではない、どう考えてもやられたとしか。
昴に預かった解毒剤を打ってから伊織を背負う。そして通気孔を抜けて外に出ると、敵が待ち構えていた。タダで返してくれるなんて思ってはいなかったから予想通り。
傷を負うことなく殲滅してチャーチに戻ると、昴が待ち構えていて、伊織を助けてくれた。
「一応終わった、でも目を覚ますかは分からない」
「...わかった、ありがとう昴」
目が覚めるまでそばにいていいと言われたからそばにいることにする。かなり強力だって話だ。
数ヶ月目を覚ますことの無い伊織を、俺はただ見つめるしかなかった。
守れなかった、背中を合わせて戦うと約束したのに。
伊織の背中は守ると誓ったのに。
「...伊織...起きて...」
そう言って目が覚めてくれるなら安いものだ。でも現実問題ありえない。
胸が苦しい。
伊織がいないことが、目を覚まさないことがこんなにも怖くて寂しいなんて。
「...寂しい...怖い...伊織...」
俯いてそっと手を握ってみる。何か変化があるわけじゃない。だとしても、少しでも伊織のそばにいたい。
すると、握った手が動く感触があった。
顔を上げると伊織の瞼が震えて目が開いた。
「...伊織...?」
「...こ、こは...?」
「伊織...!」
「...衛...?どうして...?というかここは...?」
俺は伊織に説明した。ここはチャーチだということ、北方から助けたこと、毒薬を使われていたこと。
「...そう...でしたか...てっきり...私は死ぬものかと...」
「...ごめん、伊織...」
「なぜ謝るんですか?」
「...伊織の事...守るって約束したのに...守れなかった...」
「仕方ありませんよ…でも、衛が来てくれてこれ程ほっとしたことはありません。何故かは私にも分かりませんが…」
申し訳なくて俯くと、伊織は頭を撫でてくれた。
「衛、顔を上げてください。私は感謝してるんですよ?...来てくれてありがとうございました、衛」
名前の通りに守ってくれて。
ふと伊織が笑ってくれると安心した。
寂しさも、怖さも消えた。
俺はずっと伊織だけを守る。
そうして付けられた名前。
一緒に戦うために、お互いの背中を守るために作られた、唯一無二の存在(クローン)。それが俺達。
今度はもう傷つけさせない。誰にも。
そう聞かされたのは俺が任務から戻ってからだった。
「...任務に?」
「えぇ、単独で」
「...どこに」
「...北方へ、よ」
伊織が北方に行くなんて。今北方は毒薬の研究が進んでいると聞いた。ついこの間まで北方に潜入していたのだから間違いはない。
踵を返してチャーチを出て再び北方に向かう。
...伊織を助ける。
それしか頭の中にはなかった。
北方に到着すると俺は伊織の匂いを辿った。ほんの微かに残っている匂いを辿っていくと、地下牢にたどり着いた。地下牢に繋がっている入口は2つ。ひとつは目の前にある扉、そしてもうひとつは、
「...ここから行く」
天井にある通気孔を押し上げて通気孔を辿る。匂いを元に辿れば伊織のところに着くのは簡単だ。
狭い通気孔を抜けて、出口を確保した後、伊織の地下牢に向かうと、中で伊織が倒れていた。
「...伊織...!」
急いで中に降りる。
右手に小瓶が握られていて、試験紙を使うと毒薬であることは明白だった。誤飲したわけではない、どう考えてもやられたとしか。
昴に預かった解毒剤を打ってから伊織を背負う。そして通気孔を抜けて外に出ると、敵が待ち構えていた。タダで返してくれるなんて思ってはいなかったから予想通り。
傷を負うことなく殲滅してチャーチに戻ると、昴が待ち構えていて、伊織を助けてくれた。
「一応終わった、でも目を覚ますかは分からない」
「...わかった、ありがとう昴」
目が覚めるまでそばにいていいと言われたからそばにいることにする。かなり強力だって話だ。
数ヶ月目を覚ますことの無い伊織を、俺はただ見つめるしかなかった。
守れなかった、背中を合わせて戦うと約束したのに。
伊織の背中は守ると誓ったのに。
「...伊織...起きて...」
そう言って目が覚めてくれるなら安いものだ。でも現実問題ありえない。
胸が苦しい。
伊織がいないことが、目を覚まさないことがこんなにも怖くて寂しいなんて。
「...寂しい...怖い...伊織...」
俯いてそっと手を握ってみる。何か変化があるわけじゃない。だとしても、少しでも伊織のそばにいたい。
すると、握った手が動く感触があった。
顔を上げると伊織の瞼が震えて目が開いた。
「...伊織...?」
「...こ、こは...?」
「伊織...!」
「...衛...?どうして...?というかここは...?」
俺は伊織に説明した。ここはチャーチだということ、北方から助けたこと、毒薬を使われていたこと。
「...そう...でしたか...てっきり...私は死ぬものかと...」
「...ごめん、伊織...」
「なぜ謝るんですか?」
「...伊織の事...守るって約束したのに...守れなかった...」
「仕方ありませんよ…でも、衛が来てくれてこれ程ほっとしたことはありません。何故かは私にも分かりませんが…」
申し訳なくて俯くと、伊織は頭を撫でてくれた。
「衛、顔を上げてください。私は感謝してるんですよ?...来てくれてありがとうございました、衛」
名前の通りに守ってくれて。
ふと伊織が笑ってくれると安心した。
寂しさも、怖さも消えた。
俺はずっと伊織だけを守る。
そうして付けられた名前。
一緒に戦うために、お互いの背中を守るために作られた、唯一無二の存在(クローン)。それが俺達。
今度はもう傷つけさせない。誰にも。
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