Bouquet of flowers to Messiah
Shadow shields
無機質な部屋の中でただ電子音が響く。
規則的に動く心電図は今日も異常を示すことはない。
目の前の培養槽では新たなクローンが作られている。俺は名前をつけて呼んでいる。
様子を見始めて半月、目を閉じたままのこいつは、まだ目覚めはしないだろう。
この状態でもこいつにはかなりの教育をしている。と言っても、脳内に直接情報を流し込んでいるだけだ。
実践は愚か、経験などまるでない。誰かに愛されるという経験も、誰かを愛す経験も、誰かのために生き、誰かを守ることも知らない。そして、こいつがこれからされることも、こいつがこれからどうなるのかも、こいつは知らずに生きていくのだ。
ただ1人の人間として、そしてただ1人のために命を捧げる事だけに作られ、死んでいく感情を一切持たないただの人形。
そしてこいつは、その影として生きていくのだ。
「...お前をメサイアとして受け入れてくれるやつだといいな、XXX」
冷たい培養槽に手を触れる。
熱が伝わる訳じゃない。
気持ちが伝わるわけじゃない。
動くわけじゃない。
たまに動く指が何かを探している。
微かに動く薄い唇が、何かを発しようとしている。
「...どうですか、様子は」
依頼人がやってきて、その手を離す。
ここは怪しい人間しか来ない。
ここはそんなところで、俺はそこの医師兼研究者。
人体実験なんてお手の物。
「相変わらずです。...異常はありません」
「そうですか。あとどれ位で目が覚めますか」
「さぁ...分かりません。正直、目が覚めるのかも怪しいところですし」
「君が弱気になるなんて珍しいこともありますねぇ、衛藤昴君」
依頼人は一嶋晴海。警備局特別公安五係、通称サクラの係長。
この人の考えが一切分からない。何をしようとしてるのかも分かりやしない。
「聞いたことありませんよ、クローン同士のメサイアなんて。...本気ですか」
「えぇ、本気です。君なら多少の無茶を聞いてくれるだろうと思いまして」
「感情を一切持たないなんて無理ですよ。殺すこと、死ぬことに恐怖を持たないようにできても、元のナリは人間。関わっていく人間、環境に左右される」
「それは分かっています。だから接触するまで、メサイアを組むまでは無でいてもらわねば困るのです。...私はこれで失礼します、用事がありますので」
そう言って出て行った。
もう一度培養槽に目を向ける。
さっきと何も変わらない。
もう一度培養槽に触れる。
それはこいつの心みたいに冷たい。
「――――――衛...」
名前を呼ぶと反応する。これは変わらない。
「...また様子見に来るよ」
そう言って研究室を出た。
俺がいなくなっても、研究室には無機質な電子音だけが響いていた。
規則的に動く心電図は今日も異常を示すことはない。
目の前の培養槽では新たなクローンが作られている。俺は名前をつけて呼んでいる。
様子を見始めて半月、目を閉じたままのこいつは、まだ目覚めはしないだろう。
この状態でもこいつにはかなりの教育をしている。と言っても、脳内に直接情報を流し込んでいるだけだ。
実践は愚か、経験などまるでない。誰かに愛されるという経験も、誰かを愛す経験も、誰かのために生き、誰かを守ることも知らない。そして、こいつがこれからされることも、こいつがこれからどうなるのかも、こいつは知らずに生きていくのだ。
ただ1人の人間として、そしてただ1人のために命を捧げる事だけに作られ、死んでいく感情を一切持たないただの人形。
そしてこいつは、その影として生きていくのだ。
「...お前をメサイアとして受け入れてくれるやつだといいな、XXX」
冷たい培養槽に手を触れる。
熱が伝わる訳じゃない。
気持ちが伝わるわけじゃない。
動くわけじゃない。
たまに動く指が何かを探している。
微かに動く薄い唇が、何かを発しようとしている。
「...どうですか、様子は」
依頼人がやってきて、その手を離す。
ここは怪しい人間しか来ない。
ここはそんなところで、俺はそこの医師兼研究者。
人体実験なんてお手の物。
「相変わらずです。...異常はありません」
「そうですか。あとどれ位で目が覚めますか」
「さぁ...分かりません。正直、目が覚めるのかも怪しいところですし」
「君が弱気になるなんて珍しいこともありますねぇ、衛藤昴君」
依頼人は一嶋晴海。警備局特別公安五係、通称サクラの係長。
この人の考えが一切分からない。何をしようとしてるのかも分かりやしない。
「聞いたことありませんよ、クローン同士のメサイアなんて。...本気ですか」
「えぇ、本気です。君なら多少の無茶を聞いてくれるだろうと思いまして」
「感情を一切持たないなんて無理ですよ。殺すこと、死ぬことに恐怖を持たないようにできても、元のナリは人間。関わっていく人間、環境に左右される」
「それは分かっています。だから接触するまで、メサイアを組むまでは無でいてもらわねば困るのです。...私はこれで失礼します、用事がありますので」
そう言って出て行った。
もう一度培養槽に目を向ける。
さっきと何も変わらない。
もう一度培養槽に触れる。
それはこいつの心みたいに冷たい。
「――――――衛...」
名前を呼ぶと反応する。これは変わらない。
「...また様子見に来るよ」
そう言って研究室を出た。
俺がいなくなっても、研究室には無機質な電子音だけが響いていた。
「Bouquet of flowers to Messiah」を読んでいる人はこの作品も読んでいます
-
Regulus
-
2
-
-
Each other's backs
-
2
-
-
気分屋文庫
-
3
-
-
Will you marry me?
-
7
-
-
Messiah
-
5
-
-
徒然なるままに
-
4
-
-
太陽の為に生きる月
-
3
-
-
Regulus
-
1
-
-
One’s day off-Sakura-
-
0
-
-
NIGHTMARE in Church
-
1
-
-
楓と葉霧のあやかし事件帖〜そろそろ冥府へ逝ったらどうだ?〜
-
2
-
-
青春ゲーム!
-
34
-
-
都市伝説の魔術師
-
13
-
-
犬女ちゃん -見た目は美少女、知能は犬並みー(旧題:犬女ちゃんとピュアハート)
-
19
-
-
異世界召喚ゴムパッチン理論 〜自由意志ゼロの二世界往復、異世界で最強でも現世界ではいつも死にそうです
-
23
-
-
可愛いことは、いいことだ!
-
11
-
-
ルームメイトが幽霊で、座敷童。
-
43
-
-
許嫁は土地神さま。
-
33
-
-
雨と一緒に女の子が降ってきた?!
-
24
-
-
オタとツン属性を併せ持つ妹に、なぜか連夜催眠術を施されることに
-
32
-
コメント