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Bouquet of flowers to Messiah

有賀尋

Ties and love and tears of the Raven

暗い闇の中、俺はただ目を閉じてたゆたっていた。
俺は梓音の所へ逝ける。俺が死ねば…サクラ達がいる...。
そう思うとただ気が楽だった。

「...ねーぇー、起きてくんないぃ?」

またうるさい声が聞こえる。俺は仕方なく目を開けた。

「...なんだよ」
「何だよはぁ、こっちのセリフだよぉ?行きたくないのぉ?」
「...俺はサクラを殺した。...生きてなくたって...」
「...バカだねぇ?」

そいつはそう言うと俺の腕を引っ張った。

「...何すんだ」
「ほぉらぁ、早く起きてってぇ。リシンなんて打つわけないでしょぉ?バカバカしいー。君みたいなゴーストドクター1人殺したところで何ともないんだよぉ?」

早く起きて安心させてやりなってばぁ。

そう言うとそいつは腕を掴んで遠くへ投げた。

『覚えといてねぇ?僕らは秘密結社NIGHTMARE。悪夢が見たくなったらいつでも呼んでねぇ?』

...誰が呼ぶかよ、クソが...!

そして俺は激しい痛みと咳き込みで目が覚めた。

「雪斗君!」
「雪!」

うっすら目を開けてぼやける視界の中で声の主を探す。徐々に視界がはっきりしてくると、心配そうに覗き込む百瀬さんと、泣きそうになっている梓音がいた。

「...百瀬...さん...?梓音...?」
正直喋るのも苦痛で仕方なかった。だが...

...俺は...生きてる...?

「...二人とも...生きて...?」
「何言ってるのよ、生きてるわよ」
「...雪...!」
「やっと目が覚めたか、雪斗」
「...ドクター...」

ドクターが顛末を話してくれた。
俺は半年眠っていたらしく、打たれた薬はリシンではなかったがそれなりに強力なものだった。傷が抉られていたおかげで俺は肺炎を起こしかけ、更には精神的干渉のせいで植物状態に近い状態だった。梓音が助けに来てくれて、梓音も脇腹を刺されて重傷、それでも俺を抱えて助けに来てくれた。梓音の目が覚めたのはそれから四日後で、そこからは一時も離れずにそばにいてくれたらしい。

「雪...!」
「...梓音...よかった...生きてた...」
「...あ、当たり前だろっ...!そう簡単に死んでられるかよ…!」

梓音が俯く。俯く時は決まって泣く時だ。そんなのわかりきっている。

「...ま、目が覚めたことだし、邪魔者はいなくなるか。百瀬、ほら行くぞ。お前も報告あるんだろ」
「そうね」

そう言って出ていった。気を遣わせたかな。

「...梓音...っ!」
頭を撫でようと手をのばすが、がっちり固定されている上に傷が痛む。

「動かすなよ、かなり酷かったんだぞ」

そっと梓音が手を取ってくれる。

...生きてる、梓音が...生きてる...

「...生きてる...よかった...俺が殺したんじゃなかったんだな…」
「...何言ってるんだ?雪は誰も殺してない」
「...え...?」
「雪はいつも助けてるだろ。色んなことに悩んでても、絶対に助けてる。ドクター10が百瀬さんから連絡を受けて飛んで帰ってきてくれたんだ。...正直助かったよ、じゃないと俺助けられなかった...」
「梓音...」
「必ず目が覚めるって信じてた。...雪が俺の事を信じて4年待っててくれたのと同じように、ずっとここにいたんだ。だから...だから...!」

梓音の目から雫が落ちる。それは次から次へと落ちてきて、梓音の手を濡らしていく。
こんな時に涙を拭ってやれないのがもどかしい。抱きしめてやれないのももどかしい。

「...待たせてごめんな、梓音。ただいま」

俺はできる限り腕を広げる。知っている。梓音はこれが好きなんだって。
俺にしか見せない姿なんだって。

「...おかえり、雪...!」

気を使って飛び込んできた梓音を受け止める。
そうだ、俺はこの温もりがあるんだ。帰ってくる温もりがある。「おかえり」と言ってくれる声がある。
俺はそのあとしばらくは治療に専念した。梓音もいて、ドクターもいる。夜になれば梓音がやって来て一緒に寝ることもあった。別に嫌じゃないし、梓音が安心できて、俺も安心できた。
2ヶ月に渡って治療してようやく許可がおりたころ、ドクターがまた学会に行くと言い出した。

「んじゃ、ここはよろしくな」
「はいはい、いいからさっさと行ってください」
「相変わらずだな、お前。黒咲、こいつのこと頼んだぞ」
「分かってますって。早くしないと時間」
「おっと、じゃあな」

足軽に出ていくドクターを呆れながら見送る。

「さーて仕事するか、行くぞ梓音」
「あぁ」

風に白衣を翻させて中に戻る。
俺は殺さない。何があっても。

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