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Bouquet of flowers to Messiah

有賀尋

Black Gemini〜Black sea ep.1〜

小さい頃に両親が急に死んだ。
いや、正確には殺された。
よく覚えていない。だけど唯一覚えていることといえば、双子の弟を必死に守っていたという記憶。
急に押し入れに隠されて、「出てくるな、声を出すな」と言われて必死に押し殺していた記憶しかない。
銃声が、悲鳴と怒号が残っている。せめて弟に聞こえないように耳を塞いでいたから、それは俺にだけ鮮明に残っている。
何も聞こえなくなって、そっと押し入れを開けるとそこには真っ赤な血の海に人が倒れている光景。父親なのか母親なのか、それとも襲ってきた奴らなのか分からないほどにズタズタなその景色に、俺達双子はただ呆然とした。何が起きたのかも分からないまま俺達は母親が準備してくれていた、俺達が背負うには少し大きいリュックを1人ひとつずつ背負って、手を繋いで家を出た。
リュックの中には何日かの着替え、食料、お金、必要最低限のものが詰め込んであった。俺達は2人のお金をほんのちょっとずつ使って生き延びた。今思えば、よくできたもんだと思う。

「君達双子?」

その時だったと思う。
人生を変える出会いをしたのは。
俺はしがみついている弟を庇って警戒しながら答えた。

「...誰だ」
「そんなに警戒しなくていいよ、君たちのものを取ったりしないから」
「...何の用だ」
「君達、僕と一緒に来ない?仲間を増やそうとしてるんだ」

俺は話を聞いた。
その人は「前谷尋まえたにひろ」と名乗った。尋さんは18歳だと言っていた。その時俺達双子は8歳。尋さんはすごい組織のリーダーで、簡単に言うとネットワークに乗り込んで情報を引っ張ってきて売っているんだと言っていた。
でも俺達はパソコンなんて触ったこともなければ言葉も知らない。

「俺達、パソコンなんてわかんないよ、触った事もないし」
「大丈夫、教えるよ。それに君たちの事を無闇に聞いたりもしない。でもせめて名前だけ教えてくれない?」

俺は弟と顔を見合わせてから答えた。

「...柚原海斗ゆのはらかいと
「...柚原愛斗ゆのはらあいと
「どちらがお兄ちゃん?」
「俺だよ」
「そっか、海斗がお兄ちゃんか」
「うん」
「コードネームを決めないとね。そうだな...海と愛...よし、海斗はBlack sea、愛斗はBlack loverにしよう、それぞれ名前が入っているし」

黒い海と黒い愛。
意味はわからないけどコードネームなんてそんなもんなのかなと思った。

「家に案内するよ、おいで」
「...家?尋さん家があるの?」
「尋さんじゃなくていいよ、呼びたいように呼んで」
「尋さんのコードネームは?」
「僕の?僕はー...」

それから俺達は尋さんに勉強を教わりながらハッキングの練習だったり、色んなことを教えてくれた。覚えることは大変だったけど、尋さんがいたおかげで楽しかった。いた事もない、「お兄ちゃん」だと錯覚するまでに。
俺と愛斗はどこに行くにも何をするにも一緒だった。寝る時も、ご飯を食べる時もずっと。
その中で尋さんは潜入とハッキングを、教えてくれた。子どもながらに役に立って嬉しかった。
でも、眠れば夢を見るようになった。
あの時の銃声や悲鳴、光景。全てが目の前にありありと浮かんでくる。飛び起きることもしょっちゅうあって、その度に俺は生きていていいのかを問いかけたくなった。

「...尋さん」

夜でも忙しく仕事をしている尋さんの部屋に入っていくと、尋さんが振り向いた。
俺達がいつ入ってきてもいいように尋さんはいつでも部屋のドアを開けてくれている。

「海斗、どうしたの?」

なんと説明したらいいのか。

無言で立っていると尋さんは「おいで」と言ってくれた。言葉に甘えて尋さんに近寄る。

「どうしたの?寝れない?」
「...ううん」
「夢を見たの?」
「...うん」

そう答えると尋さんは俺を連れて部屋を出た。行く先は愛斗のところ。
部屋につくと俺をベッドに寝せてその傍に尋さんが座ってくれた。

「夢を見ないように僕がここにいてあげるから寝な?」
「...でも...俺...怖いよ...」
「どうして?」
「...俺...生きてていいのかな...お父さんとお母さんと一緒に...」
「海斗、それ以上は愛斗が泣いちゃうよ?」

尋さんがそう言うと、寝ている愛斗が背中に抱きついてきた。
それはまるで「行かないで」と言っているようだった。泣きそうになって愛斗の方を向いて抱きしめた。

「俺...どうしたらいい...?」
「それは海斗が決めることだよ。...でもそうだな...愛斗を守ってあげなよ。何があっても離れないで、愛斗を離さないで」
「愛斗を...守る...」
「それは海斗がお兄ちゃんだからじゃなくて、愛斗を大切だと思うなら、って事だよ」
「...うん...」

尋さんがそっと頭を撫でてくれた。
その手が優しくていつの間にか目を閉じて眠っていた。起きた頃にはいつも起きるより少し早い時間で、尋さんはいなかったし、まだ愛斗は眠っていた。

愛斗を守らなきゃ。
愛斗は俺が絶対守ってみせる。

そう誓って愛斗を抱きしめた。

「...ん...海斗...?」

抱きしめすぎたのか愛斗が目を覚ました。

「あ、ごめん、起こした?」
「...ううん...大丈夫...」
「まだ寝てていいよ?まだ早いから」

そう言ってそっと頭を撫でた。すると愛斗はまた目を閉じた。
引っ込み思案の愛斗。泣き虫で、俺の背中にずっとくっついている愛斗。それはきっとずっと変わらない。
気がつけば俺も寝ていたようで、起きた時には先に起きていた愛斗と目が合った。

「...あ、起きた?」
「うん...俺も寝てた...?」
「寝てたよ?」
「おはよ、愛斗」
「おはよう、海斗」

2人で笑って朝が始まる。俺達の朝だ。


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