Bouquet of flowers to Messiah
Just once I want to see
俺が自分のメサイアの有明幸樹に命をかけて散ってすぐのこと。
俺は正直心配で上からずっとハラハラしながら見ていた。でも、幸樹はずっと泣いてばかりで部屋にこもっていた。
ーかけなきゃよかったのか、俺は間違えたのか。
なんて思う時もあったけど、そうじゃないとあの時幸樹は救えなかった。幸樹とずっと一緒にいると約束したのは俺だったのに、その約束破っちゃったな…。
「会いに行けばいいだろう」
そう長谷部に言われた。
「会いに行くって言ったって...」
「でもさ、よっぽどじゃないの、あれ?」
鯰尾が指さす先にはベッドの上で縮こまって、百瀬の問いかけにも首を振る幸樹がいた。
あいつはろくに寝てもいない。そのせいかは分からないが、最近任務にもろくに出してもらえていない。
最近チップを取り出す手術をして、洗脳まで解いているのだから尚更か。
「...幸樹...」
「あぁもう!迷うくらいなら行ってこい!」
「うぉっ!?」
俺は鯰尾に背中を押されて降りていった。...いや、落とされたと言った方が正しい。
落とされたのは夜で、ちょうど満月。幸樹は眠る様子もなく、ただチャーチの庭を歩いていた。
今は1月。
真冬の夜中なんて特に酷く冷えるのに何してんだろ...。
そこで俺は1ついいものを見つけた。
...これだ。
俺はそれにそっと手を伸ばして、念じた。
...どうか、幸樹が見つけてくれますように。
どうか、もう一度幸樹に会わせて。
すると幸樹は俺が念じたものの場所に近づいた。
俺の好きな花、月下美人。
「…月下美人…夜、月の下でのみ咲く花…」
...よかった、気がついてくれた。
そこで俺は幸樹の頬に手を伸ばして触れた。
『来ると思ってたよ、幸樹』
「結月...?」
驚いて見上げられた顔を見て、俺は微笑んで頷いた。
『待っていたんだ、ここで』
「…結月…!」
幸樹の目から涙が溢れた。
あーあー、泣き虫は変わんねぇのな。
そこも可愛いところだけど。
俺は微笑んだまま幸樹の涙を拭った。
幸樹はきっと後から不思議に思うはずだ。本来月下美人が咲く季節は6月から11月までなのだから。
『今日は、月が綺麗に見える。…幸樹、月下美人の花言葉知ってる?』
「…知らない」
俺は幸樹に問いかけた。
どうか、俺の気持ちを知って欲しい。
そう思ったからだ。
『「ただ一度だけ会いたくて」。こんな月夜なら、会いにこられるかなって思ったんだ。上手くいって良かった』
ちゃんと見てた。
ずっとずっと見てた。
それを伝えたくて。
『ずっと泣いているのを見ていた、空からね。やっと来ることができたよ。…なあ、幸樹』
俺は幸樹に真剣な眼差しを向けた。
すると幸樹は自然と顔を上げて真剣に見つめ返してくる。
俺は知っている。
一嶋が幸樹の新しいメサイアを選んでいる事を。
『お前には、少しあとに新たな半身が与えられる。それでも、俺のことを忘れないで欲しいんだ。
その半身なら、お前を守ってくれる。見捨てたりしない。…でも、俺といたことも、覚えていてほしい』
そしてそいつは、幸樹の新たな半身は俺が選んだ。
だからなのか、俺は正直不安だ。今どんな顔をして幸樹を見つめているかわからない。
すると幸樹は俺の頬を両手で挟んだ。
1月の冷気に晒された手は冷たかった。 
「…忘れる訳、ないじゃん。
だって、僕はまだ君の死すら乗り越えられていないんだよ…?
新たなメサイアなんて、いらない…君だけが、結月だけが僕のメサイアだって今でも思ってる。
…でも、君はもういない。忘れない、でも…君に心配かけたくないな」
...あぁ、前を向こうとしてる。
俺はそれが嬉しくなって、笑って頷いた。
『俺のことは気にしなくていい…ただ幸樹が再び笑えるようになれれば、それでいい。
…時間だ、俺はいつでも幸樹のこと見守っているから…愛してる、俺のただ一人のメサイア』
俺はそっと幸樹に口付ける。
そして俺は上の世界へと戻ってきた。
「...言いたいことは言えたか?」
長谷部と鯰尾が近寄ってくる。
「...うん、言えた。幸樹は幸樹なりに前を向こうとしてる。...もう、俺がいなくても大丈夫」
「そんなことはなさそうだけど?君、置き土産してきたでしょ」
「...バレた?」
「当たり前でしょ、あれ見なよ」
幸樹が握っているのは大輪の月下美人。
そこに幸樹は口付けた。
「…僕はまだ乗り越えられていない、でも…頑張ってみるよ、結月…見ていてね」
そうやって上を見て呟いて部屋に戻っていった。一瞬目が合った気がした。
「「ただ一度だけ会いたくて」ね」
「...なんだよ」
「いいや?君らしいなと思ってさ?」
「鯰尾、あまりからかってやるな」
「はーい」
「ただ1度だけ会いたくて」
それは俺も思っていたことだ。
会えなくて、そばにいたくてもいられない、守ってやれない辛さがあるのは幸樹だけじゃない。それは俺もなんだ。
だから俺は「会いたい」と願った。
ずっと見てたよって。
会いたかったって。
そう伝えたくて。
幸樹。
...約束、破ってごめん。
ずっと一緒にいられなくてごめん。
守ってやれなくてごめん。
でも、ずっとそばにいるよ、ずっと見てるよ。
俺のメサイアは、幸樹だ。
それから幸樹の部屋には必ず月下美人が飾られている。百瀬さんにワガママ言ってるみたいだけど、俺は知ってるんだ。
それが、俺と幸樹を繋ぐものだから。
俺はたまに降りて幸樹の部屋にある月下美人に触れる。
今日も俺は幸樹を見守る。
俺ができる、唯一の事。
『...生まれ変わっても、俺は必ず見つけるよ、俺のメサイア』
俺は正直心配で上からずっとハラハラしながら見ていた。でも、幸樹はずっと泣いてばかりで部屋にこもっていた。
ーかけなきゃよかったのか、俺は間違えたのか。
なんて思う時もあったけど、そうじゃないとあの時幸樹は救えなかった。幸樹とずっと一緒にいると約束したのは俺だったのに、その約束破っちゃったな…。
「会いに行けばいいだろう」
そう長谷部に言われた。
「会いに行くって言ったって...」
「でもさ、よっぽどじゃないの、あれ?」
鯰尾が指さす先にはベッドの上で縮こまって、百瀬の問いかけにも首を振る幸樹がいた。
あいつはろくに寝てもいない。そのせいかは分からないが、最近任務にもろくに出してもらえていない。
最近チップを取り出す手術をして、洗脳まで解いているのだから尚更か。
「...幸樹...」
「あぁもう!迷うくらいなら行ってこい!」
「うぉっ!?」
俺は鯰尾に背中を押されて降りていった。...いや、落とされたと言った方が正しい。
落とされたのは夜で、ちょうど満月。幸樹は眠る様子もなく、ただチャーチの庭を歩いていた。
今は1月。
真冬の夜中なんて特に酷く冷えるのに何してんだろ...。
そこで俺は1ついいものを見つけた。
...これだ。
俺はそれにそっと手を伸ばして、念じた。
...どうか、幸樹が見つけてくれますように。
どうか、もう一度幸樹に会わせて。
すると幸樹は俺が念じたものの場所に近づいた。
俺の好きな花、月下美人。
「…月下美人…夜、月の下でのみ咲く花…」
...よかった、気がついてくれた。
そこで俺は幸樹の頬に手を伸ばして触れた。
『来ると思ってたよ、幸樹』
「結月...?」
驚いて見上げられた顔を見て、俺は微笑んで頷いた。
『待っていたんだ、ここで』
「…結月…!」
幸樹の目から涙が溢れた。
あーあー、泣き虫は変わんねぇのな。
そこも可愛いところだけど。
俺は微笑んだまま幸樹の涙を拭った。
幸樹はきっと後から不思議に思うはずだ。本来月下美人が咲く季節は6月から11月までなのだから。
『今日は、月が綺麗に見える。…幸樹、月下美人の花言葉知ってる?』
「…知らない」
俺は幸樹に問いかけた。
どうか、俺の気持ちを知って欲しい。
そう思ったからだ。
『「ただ一度だけ会いたくて」。こんな月夜なら、会いにこられるかなって思ったんだ。上手くいって良かった』
ちゃんと見てた。
ずっとずっと見てた。
それを伝えたくて。
『ずっと泣いているのを見ていた、空からね。やっと来ることができたよ。…なあ、幸樹』
俺は幸樹に真剣な眼差しを向けた。
すると幸樹は自然と顔を上げて真剣に見つめ返してくる。
俺は知っている。
一嶋が幸樹の新しいメサイアを選んでいる事を。
『お前には、少しあとに新たな半身が与えられる。それでも、俺のことを忘れないで欲しいんだ。
その半身なら、お前を守ってくれる。見捨てたりしない。…でも、俺といたことも、覚えていてほしい』
そしてそいつは、幸樹の新たな半身は俺が選んだ。
だからなのか、俺は正直不安だ。今どんな顔をして幸樹を見つめているかわからない。
すると幸樹は俺の頬を両手で挟んだ。
1月の冷気に晒された手は冷たかった。 
「…忘れる訳、ないじゃん。
だって、僕はまだ君の死すら乗り越えられていないんだよ…?
新たなメサイアなんて、いらない…君だけが、結月だけが僕のメサイアだって今でも思ってる。
…でも、君はもういない。忘れない、でも…君に心配かけたくないな」
...あぁ、前を向こうとしてる。
俺はそれが嬉しくなって、笑って頷いた。
『俺のことは気にしなくていい…ただ幸樹が再び笑えるようになれれば、それでいい。
…時間だ、俺はいつでも幸樹のこと見守っているから…愛してる、俺のただ一人のメサイア』
俺はそっと幸樹に口付ける。
そして俺は上の世界へと戻ってきた。
「...言いたいことは言えたか?」
長谷部と鯰尾が近寄ってくる。
「...うん、言えた。幸樹は幸樹なりに前を向こうとしてる。...もう、俺がいなくても大丈夫」
「そんなことはなさそうだけど?君、置き土産してきたでしょ」
「...バレた?」
「当たり前でしょ、あれ見なよ」
幸樹が握っているのは大輪の月下美人。
そこに幸樹は口付けた。
「…僕はまだ乗り越えられていない、でも…頑張ってみるよ、結月…見ていてね」
そうやって上を見て呟いて部屋に戻っていった。一瞬目が合った気がした。
「「ただ一度だけ会いたくて」ね」
「...なんだよ」
「いいや?君らしいなと思ってさ?」
「鯰尾、あまりからかってやるな」
「はーい」
「ただ1度だけ会いたくて」
それは俺も思っていたことだ。
会えなくて、そばにいたくてもいられない、守ってやれない辛さがあるのは幸樹だけじゃない。それは俺もなんだ。
だから俺は「会いたい」と願った。
ずっと見てたよって。
会いたかったって。
そう伝えたくて。
幸樹。
...約束、破ってごめん。
ずっと一緒にいられなくてごめん。
守ってやれなくてごめん。
でも、ずっとそばにいるよ、ずっと見てるよ。
俺のメサイアは、幸樹だ。
それから幸樹の部屋には必ず月下美人が飾られている。百瀬さんにワガママ言ってるみたいだけど、俺は知ってるんだ。
それが、俺と幸樹を繋ぐものだから。
俺はたまに降りて幸樹の部屋にある月下美人に触れる。
今日も俺は幸樹を見守る。
俺ができる、唯一の事。
『...生まれ変わっても、俺は必ず見つけるよ、俺のメサイア』
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