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部の中心的な弓道部員だった私が異世界に転生したら長耳族でした

クラヤシキ

第六十五話 「再会」

 私が目を覚ますと、また辺りが騒がしくなっていた。一体なんだと言うのだろうか。だけど、さっきみたいに鬱陶しさとかは感じない。眠るって大事だね。

「ん、剣聖もサテラも居ない。もう居間に行ったのかな?」

 私は寝床から起き上がり、寝床から出る。寝床と言っても敷布団とか無いんだけどね。まんま床だけどね。
 私は若干寝ぼけながら居間に向かう。すると、居間に近づくにつれ騒がしさが大きくなっていった。

「何やってるんだ…?」

 私は居間の入り口から居間を覗く。すると、そこでは、クレイさんとクレスが腕相撲で盛り上がっていた。似た者同士か。けどやっぱりおじ様は居ないな。剣聖が昨日、本気で説得する、って言っていたから恐らくそれだろう。

「おはようございます」
「おっ、ラルダか。おはようさん」
「偉く遅い目覚めだな」
「月の世界ではそうでもなかったのか?」
「ん?あぁ。ちゃんと早起きしてたな。まぁ朝昼の概念無かったけどな」

 二人から別々の反応が出る。月の世界では鍛錬があったから早く起きれたけど、今はフリーだ。幾ら寝たって文句は無いはずだ。
 ていうか、サテラとモチヅキはどこに行ったんだろ?此処に居ないのかな?

「サテラとモチヅキはどこに行ったんですか?」
「うーん?あの二人ならさっき、本をいに行くとか言って出て行ったぞ。此処らへんは紙が物凄く貴重だからすげー高いのにな」
「それって住人全滅したから好き放題持っていけるからじゃ…」
「ま、良いんじゃねえの?瓦礫に埋もれてゴミになるよりかは、読まれた方が」

 それで良いのか…?本当にそれで…。
 私は内心穏やかじゃないまま、居間にある椅子に座って、どうやって海を渡るか考えてみた。魔術で橋を作って渡るとか。一番それっぽいけど生半可なそれだと壊れて、海に落ちる。クレスは一応氷魔術を使えるみたいだけど夜じゃないと脆いし。うーん…。

「(どうしてもおじ様が承諾しなかった時の為に何か考えとかなきゃダメなんだけど…やっぱり何も思いつかないな)」

 私は唸りながら、脳をフル回転させるが、何も思いつかない。やっぱり何かグッとくるものが欲しい。
 ____________

 一方で、モチヅキとサテラは誰も居なくなった街を二人で歩いていた。『腐敗』の影響で建物が大方崩れ去り、住人は全員あの大爆発に巻き込まれて消え去った街。

「モチヅキさんはどうしていつも剣を下げてるんですか?」
「安全だとは限らないからだ。もしまた、襲われた時に丸腰って言うのは些か困るからな」
「成る程。でも多分安全だとは思いますよ。瓦礫とか以外は」
「そうだな……。ん、あった」

 モチヅキはそう呟き、一つの建物の前で立ち止まった。屋根はもう存在せず、殆どが消え去ってる建物の前で。

「よいしょっと。んー…。見つけたぞ」

 モチヅキは小さな瓦礫をどかして、一つの赤い本を掘り出した。そして、さらに瓦礫をどかして、もう一冊。

「わぁ…。結構出て来ますね!」
「あぁ。だが………あとは破れてたり、腐ってたりで駄目だ。残念だが、その二冊だけだな」
「二冊だけで十分です!夜に読んでください!」
「うーん…。あの二人が許したらな」

 サテラの嬉々とした声にモチヅキが少し困った様に答える。あの時の剣聖とラルダの威圧が効いたのだろう。それよりも、モチヅキはある事を気にかけていた。

「なんだ…?拠点を出るまではそこまで暑くなかった筈だが…」
「そういえばそうですね…。なんか急に暑くなりましたね」

 そう言い、二人で辺りを見渡す、すると、街道から蜃気楼が上がっていることに気が付いた。明らかにおかしい。今の季節柄、こんなに気温が高くなることは無い。

「何者かの魔力か?いや…魔力は検知出来ない。じゃあ何故?……サテラは其処の日陰に座ってろ。ちょっと見てくる」
「は、はい」

 モチヅキはサテラを安全な日陰にやり、廃街となった場所を歩く。顔からは汗が様々な箇所からしたたり落ちている。モチヅキはそれを腕で拭いながら進み、開けた場所に出た。つい先日、旧英雄と剣聖がぶつかった場所に。
 其処には人物が二人立っていた。一人は夕日の様な明るい赤色の髪色、瞳をした槍使い。物凄いラフな格好で女性としてそれで良いのかと思ってしまう。
 もう一人は魔導師の装いをした女性だった。こちらは見覚えがある。

「久し振りだな」
「えぇ。久し振りね、モチヅキ」
「ウェイン、あっちでの責務は終わったのか……つあ!」

 突然首元に槍先を突き立てられ、反応が出来ず後退りする。流れ反射で鞘から少し刃を出した。

「いきなり槍を突き立てるとは些か無礼極まりないと思うのだが?」
「悪いな。何故かお前を見ると槍を突き立てたくなった」

 女は槍を目の前で振り回し、槍先を下ろした。モチヅキはその一瞬だけで、一流の槍使いだと察した。モチヅキは出し掛けた剣を鞘に収め、再び向き直った。

「こら、シリア。その人にあまり戦意を向けないの。殺されちゃうわよ?」
「ん。そうは思えないが…。ここはウェインの言葉を信じよう。すまなかった」
「なに、殺しはしない。分からせるだけだ」
「へー。『戦殺』も丸くなったわね?やっぱりサテラちゃんの所為だったりする?」
「………はっはっは」

 モチヅキは笑ってその話を濁し、本題に移った。

「そういえばお前達は何故ここに?それとこの異常な暑さはなんだ?」
「私達は真実を知りにきたの。あの時、街を破壊して失踪した魔神王の正体を暴くためにね。それとこの異常な暑さはシリアの『烈火(ブロウディング・フレア)』によるもの。今は正午過ぎだからもう少ししたら収まるわ」

 ウェインがこの暑さなのに汗一つかいていないのは恐らく氷魔術で暑さを緩和しているからだろう。なんて羨ましい事だ。

「成る程な。じゃあ、付いてくるといい。皆揃っている。其処で考えようじゃないか」
「ん?それってどういう?」
「まぁ付いてくれば分かる。おーい、サテラ!」
「はーい!あっ、ウェインさんとシリアさん!」
「やっぱり一緒に居るのね。凄い甘やかしてるみたいだけど?」
「…やめてくれ、恥ずかしい」

 モチヅキが俯くと、それを見てウェインがいやらしい笑みをした。ウェイン並みのからかいらしい。

「それにしてもどうしてこっちに来たんですか?」
「んー?なんて言った方が良いかしら?」
「失踪した魔神王の行方を知りにきた」
「あら正直…シリアらしい」
「…はぁ。成る程」

 サテラはシリアが言った言葉に対して少々音を小さくして返答した。サテラは魔神王がもう既に死んでいることは知らないが、先日の旧英雄を見て、何かを察しているのだろう。

「思えば、此処も酷い有り様ね。塵になったところもあるし、あとものが腐った匂いとかも凄い。何より、色々な魔力の残滓が渦巻いてる。此処で何があったの?」
「…拠点に着いたら言おう」
「……そう。貴方達も大変だったのね」

 声音はいつもと変わらないが空気が重くなったので、ウェインは察して、これ以上の詮索はよした。四人は帰路に着いた。

 ______________

 ウェインとシリアはその巨大なクレーターを見て、驚ろいた。目を見開き、口を開けて、その景色を見ている。

「何これー!?」
「こんな大きな凹み…穴?どうやって作るというんだ?しかも海水はちゃんと堰きとめられてるし…」
「旧英雄の最期の足掻きってやつだな」
「旧英雄…?あのおとぎ話の?」
「あぁ」
「実在してたとはね…」
「こっちだ」

 会話を打ち切り、モチヅキはクレーターの底へと続く階段へと誘う。三人はそれに無言でついて行く。
 長い階段を下り終え、モチヅキが立ち止まり、ウェインとシリアの方に向き直り、こう言った。

「此処が俺たちの仮拠点だ。中に入ってくれ」
「え?そんな簡単に通してくれるの?」
「ん?…あぁそうか。ちょっと待っててくれ。クレイを呼んでくる。サテラはもう中に入って良いぞ」
「はーい」

 二人はそそくさと中へと入って行った。こう見ると二人は本当に親子みたいだな、とウェインは思うのだった。
 3分ぐらいが経ち、漸くクレイが顔を出した。クレイはウェインとシリアの顔を交互に見渡し、眉間に皺を寄せたあと、デカイ声で叫んだ。

「えぇぇっ!?なんでウェインがこっち来てんの!?あとなんでシリアを釈放してんだお前!」
「いきなりうっさいわねあんたは!!釈放せざるを得なかったのよ!」
「だからってお前…!……あ。すまねぇ、まぁ中に入ってくれや」

 クレイは何かを言おうとしたが、急にしおらしくなり、顔を引っ込めた。隣を見るとシリアが怖い顔をしていたので、約束通りやってくれた様だ。とりあえず入れと言われたので、二人は拠点へと足を踏み出した。

 ____________

 いきなりクレイさんが拠点を出て大声を上げたので凄いビックリした。響き過ぎて何か聞き取れなかったけど、クレイさんの大音声に隠れて聞き覚えのある女性の声が聞こえたのでそういう事なのだろう。

「お邪魔しまーす…中も綺麗ね」
「ふむ、牢獄よりはマシだな。それに魔力遮断されているのか、全く暑さを感じない」

 ふと後ろから聞き覚えのある声がするので振り返る。其処にはやはり、見覚えのある女性が立っていた。片方は知らない人だけど。
 そして見覚えのある方の女性と目が合った。目が合い、少しの間が生じる。しばらくして漸く女性が口を開いた。

「もしかしてだけどさ……」
「はい」
「ラルダちゃん、かな?」
「そうですよ、久し振りです。ウェインさん」
「やだ!なんでそんな大きくなってるの!?えぇぇぇ?サテラちゃんと同じくらいだったのに!」

 ウェインさんは口元を抑えて、面白いぐらいの反応を見せてくれた。相変わらずブレッブレだなぁ。

「ん?ラルダ、知り合いか?」
「うん、月の世界に行く前までずっとお世話になってたウェインさん。もう一人の方は分からないけど…」
「シリアだ。初めましてだな」
「あっ、はい。初めましてラルダです」

 シリアさんは、無表情で私の方を見てきて、簡単な挨拶をして、会話を打ち切った。無愛想な人なのかな?
 なんて考えていると、ウェインさんが口元を抑えながら肩を叩いてきた。耳を貸して欲しいらしい。

「(ねぇ…あの青髪の男の人は誰?)」
「(元月神のクレスです。もう月神は辞めちゃったから只の人間ですけどとても頼りになる人ですよ)」
「(へぇ、あいつより良いわね…)」
「(変な事考えてませんか?)」

 悪いが、見え見えである。今のウェインさんは下心丸出しである。まぁしょうがないか、クレス、側から見れば普通にカッコいいしね。私はクレイさんも目つき鋭くてカッコいいと思うけどね。

「……ラルダ、何か思いつきましたか?………あっ、久し振りですね」
「剣聖、まだ居たのね」
「そりゃ仲間ですから」
「仲間なんだ」
「仲間ですよ。ラルダもクレスもそう言ってくれてます。それよりラルダ、何か思いつきましたか?」
「うーん…。それが全く良いのが思い浮かばない」

 剣聖はと言うと体感4時間にも及ぶ説得の末、諦めたのだ。なので私にこうして一任して、剣聖は寝たり起きたりを繰り返して度々私に聞いてくる。
 しかし何も思い浮かばないので困ったものである。氷魔術とか岩魔術とかが有れば、頑丈な橋を作って渡れるけど…ん?

「あの、ウェインさんって氷魔術の使い手でしたよね?」
「え?うん、そうだけど」
「行けるかもしれないよ剣聖!」
「え?え?何?」
「実は、今海を渡ろうとしてまして、龍帝に乗せて貰おうとひたすら私が説得してたんですけど、龍族の郷に行くのが嫌らしくてずっと滞ってたんですよ」
「あぁ…あの人は龍族嫌いだから仕方ないわ。」
「それで、何故海を渡れるんですか?」
「それに関しては俺も聞こう」

 クレスも会話の環に入ってきた。氷術師が二人居るし、加えて両方がとても優秀な人材である事で可能になる。クレスは言うて神から人間に降りただけで父である神の力を得ている訳だし。昼はウェインさんが氷魔術で橋を伸ばしてクレスが魔力で維持して、夜はクレスが氷魔術で橋を伸ばしてウェインさんが魔力で維持するっていうのをローテーションでやれば次の大地に着ける、という算段だ。

「クレスとウェインさんが居ないと出来ないんだけどさ。ずーっと一直線に氷張ってって魔力でひたすら頑丈にしてを繰り返すんだけど。出来るかな?」
「少なくとも俺は夜しか出来ないぞ。昼とか朝は魔力の量も質も微妙だからな」
「うん、だからウェインさんには昼、ずっと作業をしてもらわなきゃいけない。その代わり夜はずっとクレスがする。行ける気がするくない?」
「やって見なきゃ分からないですよね。全員乗った時に割れて全員水浸しとか最悪ですし」
「まず吾(わたし)が居るからどの道氷は溶けるぞ」

 全員がその言葉がした方に向く。すると其処ではシリアさんが椅子に座って紅茶のようなものを飲んでいた。クレスが淹れた奴か。

「シリアさん、どうしてですか?」
「吾(わたし)がそういう魔力の持ち主でな。今は魔力遮断されているから何ともないが、本来なら灼熱だ」
「俺の魔力の昼版って感じか。俺の場合夜になると極寒になる」
「二人が居ると最悪な事になりそうね…」
「でも、それに関しては大丈夫じゃない?クレスが使ってるその魔力制御の魔道具があるんだし、それを量産すればさ」
「それもそうだな」

 湧いた問題を解決してその計画が一番丸いと判断した私達はその話を切り上げた。そして、最も重要な事を私はウェインさんに聞くのを忘れていたので聞く事にする。

「ウェインさん達は私達と同行してくれますか?貴方の力が必要なんですが…」
「勿論!私で良ければ力を貸すよ!ただ、一つ良いかしら?」
「何ですか?」
「貴方達が見たっていう旧英雄、私に教えてくれないかしら」

 ウェインさんが私に顔を近付けて言ってきた。旧英雄の情報と引き換えにって事か。そんな事で助力してくれるなら助かる。バンバン教えよう。いや、私より剣聖やクレスの方が知ってるんだけどね。

「そんなことで良いなら、教えます」
「そう。交渉成立ね」

 そう言ってウェインさんは笑った。漸く事が進んだ気がする。後は、橋を架けるだけだ。

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