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部の中心的な弓道部員だった私が異世界に転生したら長耳族でした

クラヤシキ

第二十六話 「剣豪境劍の戦い 開幕戦 参」

 皆が避難し、誰も居なくなった街のとある一角にある家。そこには4人の家族が住んでいた。その家庭は至って普通の家庭なのだが、一人だけ不思議な男の子がいる。その男の子は毎日毎日外を眺めている。そして、「今日も何も起きないな」と呟くのだ。そして、今日も外を眺めていた。
「シグ、また外を見てるの?」「ん?あぁ、うん」「今日はどう?何か起きそう?」「……うん。起きそう、っていうか起こってる。災害も起きるかも」「本当?」「そうだよ、姉さん。」
 そう言って、彼は女性の方へと顔を向ける。そして、屈託のない笑顔を見せた。
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 ラルダと龍帝ペアが剣聖、もとい『無垢』の降臨者に追い込まれてる間、サテラと魔神王ペアと『戦殺』の降臨者は、遠くに移動していた。何もない平野だ。
「さて、ここなら思う存分行けそうだな」「…どういうつもりだ?」「どういうつもりとはどういう事かな、魔神王殿?」「お前達は街を壊滅しに来たのでは無かったのか?」
 そう聞くと、彼は思いっきり顔をしかめ、怒り気味な声でこう言った。
「勘違いするな。俺はただこの陣営の頂点、つまりお前に忠告しに来ただけだ。無駄な殺生はしない。斬るのは戦意ある者のみ。」「じゃあ、この街に来るまでに街が壊滅したのはどう説明するんだ?」「容姿が人間族だしな。矛先を向けられたりしたのだ。それに、蒼だ……レイシュが何度かつるまれてな。いやぁ、衣服を合計6回も剥かれるとはな、はははははは!」
 降臨者は一人で高笑いする。矛先を向けられただけで壊滅に追いやったというのか?それはおかしいだろ、と魔神王は思った。すると、サテラが口を開いた。
「あの、降臨者さん」「なんだ?小娘」「威嚇されただけで街ひとつを壊滅させたんですか?」「そうだが?」
 そのそっけない返答にサテラがムッとした顔をした。すかさずサテラが言い返す。
「そんなの、おかしいですよ。その人達には何の罪もないのに」「おかしいと思うのか?ほう、小娘にしては上出来だ」「えっ?」「俺もおかしいと思っている。だが、これは宿命だ。俺は変な神に俺に『戦意』を向けるものをひたすら殺せ、と命令した。神の命令は背けば死ぬ。だから従うしか無かった。そして、分かるか?この意味が」
 そう言って降臨者は剣を構えて、右手の人差し指を立て、くいくいと揺らす。挑発だ。もう彼は戦闘態勢に入っている。
「お前達も殲滅対象だ。来い、三撃で仕留めてやる」「サテラ」「分かってますよ。それまで持ちこたえて下さい」「わかった、行くぞっ!」
 その掛け声を合図に魔神王は飛び出した。地面を抉るほどのジャンプ力だ。
「む、上か…」「『鋭撃剣ライオット』」
 魔神王の周りに無数の黒い鋭く尖った槍とも取れる剣が精製される。魔神王は片腕を上げ、唱える。
「降り注げ」
 その合図とともに片腕を勢いよく下ろす。すると無数の剣は降臨者目掛けて勢い良く飛んでいった。そして、ズドドドドドという音がなり砂埃が立つ。魔神王は事を終え、地面に着地した。
「(どうだ…?ダメージは無いと思うが、少しくらいの時間稼ぎには)」「シャァァァァァァアアアアアアアッ!」「くぉっ!?」
 降臨者が砂埃から凄まじい速度で飛び出し、魔神王に衝突する。すると、ガキィィィンッと金属音が鳴り響き、凄まじい暴風がサテラの位置まで飛んで来た。
「っくぅ…!」
 サテラは余りの風の強さに腕で顔を隠したが、その間から少しだけ覗く。そこには、間一髪で『鋭撃剣』で受け止めた魔神王が居た。
「サテラァッ!今だ!」「っ!」
 サテラはこくりと頷き、手を降臨者の方へと向ける。そして、魔力を行使した。
「『牽強付会トラブルギフト』」「っ…!?くっ!」
 サテラが魔力を行使した瞬間、押されていた魔神王が一気に優勢になった。押され始めた降臨者はその場から離れる。そしてその場で剣を落とした。
「どういう事だ…。剣を握る力が出ないどころか剣を持つことさえも出来ないだと?」「私がんですよ。『剣を扱う事が出来ない』という偽りの事象を貴方にこじつける事でその偽りは真実になります」「『譲渡』の魔術師という事か…」「魔術師、では無いと思いますがまあ良いでしょう。あぁ、ついでにこれも受けてもらいます」
 そう言ってパチンッと指を鳴らした。すると、
「何も起きない?」「何も起きないはずが無い。お前は既に敗北している」「なっ、後ろ!?(何故だ…後ろに回られていたら気付く筈…魔神王の魔術か?いや、違う!)」
 咄嗟に前屈みになり横薙ぎを回避する。そのまま、後ろを向き、次の攻撃に対して構えようとする、が。
「遅い」「…!?」
 降臨者が気付き、そっちを向いた頃には遅かった、いや、遅すぎた。もう既に魔神王は回し蹴りの構えを取っており、脚が着弾する寸前だった。
「ぐぁっ!」
 見事に横腹辺りに着弾し、降臨者は吹っ飛ばされる。そして遠くの方の岩に思い切りぶち当たった。
「ふぅ…。いやしかし…」「えぇ、魔神王様は分かったみたいですね。『変質譲渡ストレンジギフト』で降臨者のステータスを全て弱体化させ、貴方のステータスを大幅に上げた事が」「あぁ、俺の本来の力では吹き飛ばす事は出来まい」
 そんな会話をしながら、サテラと魔神王は二人の元へ帰ろうとした。その時だった。ピッと何かがサテラの頬辺りを通り抜けた気がした。
「…血?え?」「…なっ!?」
 魔神王はそれに気付いた。だが、さっきとはまるで風貌が違った。黒く、端がボロボロになった布キレなのは変わらないが、さっきより明らかに歳をとっている。
「礼を言うべきか…?ようやく本来の姿を取り戻したよ」「本来の姿…だと?」「魔神王様、あの方はさっきまでの降臨者とは段違いです。ステータスがねじ曲がりすぎて、判定できません!」「!」「さて、二戦目と行こうじゃないか?」
 そう言って、降臨者はニヤリと笑った。

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