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部の中心的な弓道部員だった私が異世界に転生したら長耳族でした

クラヤシキ

第二十三話 「第二の人生初の試み」

「おじ様」「ん?」「長耳族エルフの子供たちって私含めて何人ぐらい?」
そう尋ねた。結構前に聞いた話だけど、おじ様が森が焼失した話をその子達にした時、その子達が帰る場所が亡くなったと嘆いていたらしく、皆ショックのあまり気力を無くしてずっとこもりっきりらしい。なら私が活気を取り戻させてやろう。そう思った訳だ。
「大体150人前後かなぁ…」「えっ?少なくない?」「そりゃあ、あの森に一族丸ごとって訳でも無いしね。それで?君は一体何をする気かな?」
何故かおじ様の言葉に圧を感じ、口を紡ぐ。だけど怖気付くな、私。
「私の仲間は皆こもりっきりっていうのは事実だよね?」「そうだね、事実だよ」「その子達を私が活気づけてやろうと思ったんだよ…。私も、故郷も親も奪われたからショックだけど…ずっと殻に篭ってるより前に進んだ方が良いじゃん、だから」「あの子達をどうにかするのか?良い心掛けだけど難しいだろう。それでもするのかい?」「この憎悪は私だけが持つ物じゃない。皆で背負った方が復讐が果たされた時、何倍も心が晴れやかになると思うの」「ふぅん。君の意見はよく分かった。じゃあ案内しようじゃないか」
おじ様はそう言うと、椅子から立ち上がった。
「さ、行こうか」「うん。サテラも行こう」「ふえっ?あぁ、はい」
サテラが目を覚まし、立ち上がる。私も立ち上がり、おじ様について行った。
_____________
「さっ、ここだよ」「わぁ…」
おじ様に付いて歩き、たどり着いたのだけど。予想以上だった。もうちょっと古ぼけた感じの家かと思ったけど、公民館みたいな平家だった。デカイ。そう思いつつ私達は中へと入り、廊下を歩み、一つの扉の前で止まる。そこで、おじ様が言う。
「良いかいラルダ。僕らは此処で待機だ。自分の思いを伝えて、伝わらなかったら直ぐに戻って来るんだ。分かったかな?」「うん。じゃあ行ってきます」「頑張ってください」「あぁ、行っておいで」
二人からそう言われ、私は頷き、扉へと向き直る。そして、その扉を勢い良く開けて中に入る。
「っ!?うっ…」
中に入って漂うのは陰の気に満ちた空気。多分だけど、この部屋に入ったらまず誰しもが思うだろう。この部屋は、最悪だと。
「…………誰だ?」
薄暗闇から声がして、その方向を向くと何やら蠢く物があり、自然と目が合った。私は眼帯を逆の眼に付け、開眼する。すると、その姿が顕になった。
「長耳族…生き残りか?いいや…背丈的に同年代……別のところから来た部類か」「貴方は…?」
その男は全身ボロボロで、やつれていた。だが、眼は虚ろではなく、その眼光は射殺さんばかりだ。この男はタフだな。と即座に察した。
「俺はシグラス。この部屋を統べる者、らしいが…まぁ気にするな。お前はここに入れられた訳では無いな、何の用だ?」「えぇ、私は貴方達をここから出す為に来たの」「出すだと?」
シグラスと名乗った男の眼光が一層強くなる。正直言って泣きそうだ。体はもう眼光にやられたらしく、震えている。クソっ、こんな怖い人が子供なの!?
「えぇ。今、貴方達の戦力が必要不可欠なの。だから、協力してほしい。こんな所で篭ってても何も…」「ふざけるな。あの一件で心が滅入った俺達を戦力にするだと?この陣営のお偉いさんは偉いアホみたいな事を考えるな」「……」「ましてやお前のその服装を見るに、よほど裕福なんだな。そんな家もあって親も居そうな裕福な奴がよくノコノコとやってきたもんだ!」「……あぁ?」
裕福?裕福だと?はぁ。やっぱりこういう点でズバズバ言ってくるあたり子供なのかな?私もキレるわ。服着てるだけで裕福ならこんなもん脱いでやるよ。そう思い、私は衣服を脱ぎ始めた。最近、少々胸元が柔らかくなってきた気がするのだ。いい成長だねぇ、うんうん!
「!?」「おらどうした?何を驚いてんだよ、クソ雑魚メンタルエルフが!」「えっ、あの……」「黙って聞いてれば裕福だの、親がいるだの、自分の帰る家があるだの好き放題言いやがって!こっちも同じだよ!故郷が焼かれて、家が無くなって、親も死体すら無いって言われて何処にいるかわからない状態!毎日毎日泣きそうだわ!親に会いたいって何回も思ったし、平和な生活送りたいって思ったこともある!確かに私は貴方達から見たら裕福かもしれないけど、貴方達と思ってる事は一緒だと思うから!」「一緒だからなんだと……」「うるせぇっ!人が喋ってる途中に口を出すとかマナーもなってねぇんじゃねぇのか!?お前そろそろ一人前として認められる歳じゃねぇの?そんなんなのにマナーなってねぇとか終わってんじゃん!まだ私のが一人前だわ!」「ぐっ…」
正直ただ愚痴を並べてるだけだから大して意味は無い。だけどシグラスに対しては凄い効いてるようだ。ここの頂点だって事だし、まくし立てられた事ないんだろうな。はっ、豆腐メンタルはこれだから。
「ふぅー。まぁ簡単に言うとだな…。『憎悪を向ける矛先』ってのは、私も貴方達も同じだって事だ。」「……」「話はそれだけだ。明日までにここの奴らと話し合いな。そんでまた、明日の夕刻頃ここに来る。その時にはどうするか決めとけよ?」
そう言い捨て、私は服を持って扉を開ける。その時、ふと何処からか、矢を放つ音が聞こえた。だが残念、私はそんなのではやられない。
「『雷閃』」
バチっ!と音がし、私目掛けて飛んできた矢は瞬く間に感電し、私の真後ろで地に落ちた。私はキレそうになりながら言う。
「言い忘れたけど…シグラス君がここで最強ならそう言うのは控えなよ?だって…」

「大人の長耳族がいない今、私が最強だからね。だって、こんな陰撃ちしか出来ないような奴に負けるわけないもん」
そう言い捨てて、今度こそ部屋の外に出る。出る間際、部屋の奴らがザワついたような気がした。外に出ると一気に空気が代わり、心地良さすら覚えた。
「せんぱっ…!?その格好は何をされたんですか?」「ラルダ、大丈夫だったかい?……って失礼」
いきなりサテラに抱きつかれるけど、私のその姿に驚き、1歩引いた。おじ様に関しては気づいた瞬間目をそらした。そりゃ裸だもんねー。
「あはは、特に何もされてないよ。でも良かった、話が通じる奴で。もっと話を聞かないクソ野郎かと思ったよ」「先輩…口が悪いです」「その感じ、話が通ったのかい?」「ううん。明日までに決めといてって言っといた。でもまぁ、あいつらの事だし、どうせ彼処から出ないだろうなぁ」「改めて聞くけど君はどうしてあの子達をそこまでして外に出したいんだい?」「私が弱いからだよ。帝王クラスの魔力を持っててもそれを扱える程の魔力総量を持ち合わせてないし、弓の技術も大してない。だから群れて行動するの。弱い者こそ群れて動いた方が強くなるからね」「君らしい考え方だね」「でしょ?」
君らしい、ってこれぐらい普通考えればわかる事だよね。イワシの原理よイワシ。あっ、イワシ居ないのか。まぁ、そんな事はどうでもいいか。私達はしばらくそういう会話をしながら、家へと戻った。家に帰って、少し一休みして気づいたのだが、あの二人が居ないのだ。何処に行ったのだろう。
「おじ様、ウェインさんとクレイさんは何処に行ったの?」「あぁ、北東方で《降臨者》が確認されたらしいから、迎撃の為にそこへ向かったんだよ。恐らく、あと2週間弱は帰ってこない」
私はゾクッとした。前もなんかこんな事があった気がしたからだ。また、負ける事になるかもしれない。今ここで兵力が落ちれば、確実に敗走する事になる。しかし、私がそんな事を思っても何も変わらないので何も言わない事にした。しかし、《降臨者》にこの陣営きっての魔術師が向かったとしても勝てない事ぐらい目に見えてるはずなのに。どうしてウェルトはあの二人を向かわせたのか、私には全然分からなかった。
______________
翌日、陽が傾き、日没前の時刻になった頃、私は再びあの部屋の前に訪れた。正直、あいつらが私に協力してくれるわけ無いと思っているが、夕刻には行くという約束なので来たのだ。私は恐る恐る扉を開ける。そこに広がっていたのは……。
「あれ?部屋間違えた?」
陰の気に満ちた空間は一転して、とても騒がしくなっていた。うん?これは一体どういう事だ?何?え?色々どぎまぎしてると、シグラスがやってきた。
「おう来たか!」「族長!?」「おい皆!新族長がやって来たぞ!」「うぉぉおおおおおおおおおっ!!」「え、えぇぇぇぇっ!?」
歓声が響き渡る。ちょっ、族長って何!?いや、なんで私!?族長ってもっとこう、威厳がある人がなるんじゃ無いの!?
「おいおい、族長なんだからピシッとしろピシッと!」「わっ!ととっ…いやシグラス君?これはどういう意味かな?」「族長殿が言った憎悪の矛先は皆同じ、という言葉に皆心に来てな。満場一致でお前に付いて行こうと言ったんだ」「えっと、つまり、引きこもるの辞めるって事?」「そういう事だな」「そう、なら良かった!」
あんな言葉で心にくるって一体どんだけチョロいんだ。なんて思ったけど、彼らは「同調リンク」を持っている。胸の内が筒抜けなのだ。
「そういえば、おじさ…【龍帝】が此処には150人弱居るって聞いたけど、少なくない?見た感じ60人程度だけど…」「あぁ、元々はそんぐらい居たが、族長殿みたいに事態をすんなり受け入れて、ここを出て行く者も居たんだ。今ではこんだけだよ」「結局テメェらは豆腐メンタルの隠キャだったって事だな」「豆腐…?まぁ、そうだな。ところで族長殿…」「さっきから族長族長って、なんかむず痒いから私の事はラルダって呼んで。あと普通にお前とかで呼んでくれて構わないよ」「え?あぁ分かった」「んで何?」「此処から俺達を引っ張り出してくれた事を感謝する」「お安い御用。だって私達は同種の同胞なかまだよ?」「それもそうだな」
私とシグラスは笑う。大きな声で笑いあった。
こうして(何故か)私が新族長を請け負う事になった。正直、私にこの役が務まるか分からないけど、誠心誠意頑張って行こうと思うし、この長耳族を魔族陣営の戦力に数えられる様に鍛えて行こうと思う。勿論私自身も強くならなきゃ駄目だけど。
余談だけど、私とシグラスの会話がすっごい弾んでいるのを見ていた長耳族達は「あいつら良い関係になりそうだな」と呟いていたらしい。正直、シグラスはそういう目で見ていない。はっきり友人以下仲間以上と言える。



その三日後、《降臨者》がロンゴヴィギナ北東部付近に姿を現した。

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