日向ちゃんは甘えたい!

神崎律

9︰イッショ



〈日向絵里〉〈7歳〉  

いじめにあい、学校に行かなくなってから1年が過ぎました。

絵里母「絵里。ご飯、部屋の前に置いておくからね。」

絵里「・・・うん。」

こんな私にまだご飯を作ってくれる。
お母さんは本当に優しいです。

お父さんだって心配してくれる。


そんな2人に、もう迷惑はかけたくないよ。
でも、どうしたらいいんだろ…

そう思いながらも結局何もできず、今日も私は部屋の天井を眺めていました。



〈日向家︰リビング〉


父「絵里、今日もあんな調子か?」


母「えぇ、部屋からでるのは兵藤くんが来る時くらいよ。」

父「そうか…これからどうすればいいんだろうな。」


母「今の私達には難しいわよね…」





陸「絵里〜来たぞ〜」
 

陸くんが来ました。陸くんとは幼稚園の頃から一緒で、いつも私の家に来てくれます。

絵里「陸くん!いらっしゃい!」


陸「今日は何する!?」

絵里「陸くんのお話が聞きたいな」


そうしてりっくんの話を聞いたり、たまに遊んだりするのが空っぽな私の唯一の楽しみでした。

陸「いいぜ!今日学校でさ!海斗がうんこ漏らしてさ!皆大騒ぎだったんだぜ!」
りっくんはいつもこうやって面白い話をしてくれる。内容はともかく。

絵里「そうなんだ、楽しそうだね。」

陸「あぁ、楽しいぞ!新しいクラスのやつは皆いいやつだし!」

絵里「そっか」

陸「もう1回行ってみない?学校」 そう言われて少し胸が傷んだ。やっぱりりっくんも気を使ってくれてる。少し罪悪感がした。

絵里「うん、まぁそのうちね」
そんな返事しかできなかった私に私自身が許せなかった。

 

〈日向家〉〈リビング〉

絵里「あのね、お母さん。私、もう1回学校行きたい。」


母「?!ホントに!?」

絵里「うん。陸くんとならなんとかなる気がするの。」

母「そっか…わかったわ。でもムリはダメよ?」

絵里「うん!ありがと!」


そうして私はもう一度学校に通うことにしました。




〈学校〉

なんとか決意してきたものの、やっぱり周りとの空気の差を感じます。

クラスメイト「ねぇねぇ、絵里ちゃんはなんで休んでたの?」

絵里「!?」

なんて答えればいいのでしょうか。
その時の私は思わず泣きそうになってしまいました。


陸「絵里はな、ちょっとした病気だったんだ。それで、少し休む必要があったんだよ!ね?」


絵里「う、うん。」


クラスメイト「へぇー、もう大丈夫なの?」


絵里「それはまぁ、」
 
陸「大丈夫だよ。俺がずっと一緒にいてやる!だから大丈夫だ。」 


16歳の私からしたら小学生のちょっとした強がりに見えたかもしれません。

でも当時の空っぽだった私にとっては、その言葉に救われ、私にとって、兵藤陸という男の子が全てになりました。


 

〈日向絵里〉〈16歳〉

絵里「その、なんていうか、ゴメンね?話長いし重いしで…」

恵「そんなことないよ!すっごく悲しい話で、すっごく優しい話だった。」

絵里「なんか改めて言われると恥ずかしいな…」

恵「まぁまぁ、スタバついたし、入ろ?」

絵里「うん!」




そして中に入ってりっくん達2人を見つけました。
1人はものすごく幸せそうな顔をして、もう一人は世界の終わりかのような顔をして。


恵「兵藤くんの表情が死んでるけど、葛城なんかしたの?」


海斗「えー?まっさかー」


絵里「りっくん大丈夫?」


陸「あぁ、なんとか。」

絵里「よくわかんないけど、私が一緒にいるからね?大丈夫だからね?」

こうして、修学旅行の準備という題目のデート(?)は終わって行くのでした。

コメント

  • 美浜

    めっちゃ面白いです!
    続きが気になります!

    2
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