神様から見た転生者

アイリ

プロローグ

ー天界ー

「……では、お望みの祝福ギフトはこれらが全部で宜しいでしょうか?」

「はい、ありがとうございます」

「……もう一度、忠告しておきます。祝福ギフトの数が多い程、貴方は過酷な運命を辿ることになるでしょう。…それでも、よろしいのですね?」

「ええ、これで夢にまで見たチート生活が出来るんです!夢物語の主人公になれるんですよ!後悔なんて、するわけないじゃないですか!」

「……そうですか。ならば、私から言うことは何もありません。では、良き2度目の人生を!」

「はい!神様、ありがとうございました!」


そう言ってほかの世界からの5人目の転生者となる男は光となって天界から消えていった。新たな人生を歩み始めたのだ。しかし私は、そんな彼を暖かい目で見送るのではなく、憐れな目で見送っていた。

「…はあ」

    溜息をついても、この憂いは消えていかない。その理由は、あの男が自分の忠告を聞かなかったからだろうか。それとも、この展開に飽きてきたのだろうか。

ーーこれで、5人目。

    そう、5人目なのだ。神様である自分の忠告を聞かずに、夢小説とやらの主人公に憧れて、チートを求めてやたらと沢山の祝福ギフトを欲する転生者は。そういう者は大抵、その祝福ギフトに課せられた使命に押し潰されてすぐに死んでいく。3,4つ位ならさほど影響はないのだ。
なのに、チートな生活とやらを求めて10つなどと大量の祝福ギフトを求めるから、あらゆる陰謀や策略に飲まれてすぐに死ぬ。

    転生者は、祝福ーこれからは、スキル、とでも呼ぼうかーの使い方次第でこの後沢山のスキルを獲得できると言うのに。何故か転生者はやたらと生き急ごうとする。前世でそこまでの嫌な思いをしてきたのだろうか。それとも、転生という言葉に浮かれて、英雄や勇者にでもなって世界の覇者となるつもりなのか。確かに転生者達はこの世界で生まれた者達より遥かに技能や身体能力は高くなるようになっている。我ら創造神が彼らにスキルを幾つか授けるのも、それが天界の法則ルールだからだ。
    なのに、彼らと来たら。それでは、せっかく転生できたのにすぐに死んでしまうではないか。

    彼らは転生出来ることがどれだけ運の良い事か、これっぽちも分かっていない。転生する者は、大創造神様に選ばれた特別な魂のみであると言うのに。それも、清らかでこれまでの人生で1度も罪を犯したことのない高潔な魂。なのに彼らはそれを無駄にして死んでいく。

しかし、やはり彼らは目の前に突然現れた転生という選択肢に一時的な欲が出てしまっただけなのだろうとは思う。

    なぜなら彼ら転生者は前世で死ぬ際、必ず良い行いをしているからだ。ある人はトラックとやらの鉄で出来た動く箱に友達が引かれそうになっていた所を助けて死んでいたり、赤の他人が通り魔に殺されそうになっている所を助けて代わりに殺されていたり、挙句の果てには人助けをした帰りに上から落ちてきた鉄の棒の下敷きになって死んだものだったり。

ーそんな彼らが、欲望のみで動くとは到底思えはしないのだが。しかし、それでも。

「先生、やっぱり私はこのような人たちを好きにはなれませんよ…」

私は、かつての大恩人であり自分に様々なことを教えてくれた師匠せんせいでもある人へと思いを馳せたのだった。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品