After-eve

本宮 秋

forming 第3章

                 
幾つになっても人付き合いは、難しい。
大人になっても、小さな街であっても。
体裁、見栄、欲、と本音のせめぎ合い。
どんなに仲が良く信じ合える間柄であっても、多少の本音と建前は生じる。
問題は色んな事があった時、上手く切り替えが出来、大人の対応が出来るかどうか…
まだまだ未熟な自分は、些細な事に拘り自分の気持ちを表現できず、ただ悩む。
他から見れば、大したことでは無い様な事に…。

実際、今回も素直な気持ちでアキさんの店に行き、食欲を満たす為の本能的行動でユウさんの店に行った。
その結果、会い辛さがあったカオリさんとバッタリ会った。
初めから素直になってれば、もっと早くこの些細な悩みも解決出来、楽しい生活が送れていたのに…。

やはり思っていた通り、カオリさんとは直ぐに普通に話せる事が出来た。

ホッとした表情とカオリさんやユウさんと楽しく会話出来てる自分の様子を見て、ユウさんが言った。

「こんな事、言ったらアレだけど…大浦さんのオヤジさんに感謝だな、マコちゃん。」

大浦さんは、三代目の名前。

確かに三代目の親父さんが、亡くなって色々考えさせられたし、寂しさと悲しさからアキさんの所に行った訳だし。

「大浦のオヤジさんは、人付き合い良いし面倒見も良かったからなー。見習わないとな!マコちゃん。」
ユウさんが、少し俯きながら…

ふと気付くと、色んな料理が並べられていた。作り過ぎですよ、ユウさん。

ユウさんも久々に、自分とカオリさんが居たせいか張り切ったみたいだった。
もうちょっとしたパーティー気分。
アキさんも居たらな〜と思う自分。

「アキさん仕事終わったかな?」
同じ事を考えていたカオリさん。

「店は閉めただろうけど 最近何か、一生懸命作ってるからなー、革製品。来ないだろ。」ユウさんが言った。

「あ〜ん。アキさん、私の事 嫌いになっちゃったかな〜?ふしだらな女に見られてるかな〜困ったな〜。マコっ!ちゃんとアキさんに説明してよ!」

「いやいや自分で言って下さいよ。貴方の事でしょ〜。あっ、それから役場の人からもアプローチあるんすか?」

「無いよ!ヤメて!あり得ない。何で知ってるの?」詰め寄るカオリさん。

「アキさん…が、」カオリさんに詰め寄られポロっと言っちゃう自分。

「あちゃー、最悪!どうしよ、ねぇどうしたらいい?」流石に動揺するカオリさん。

「いいんじゃねぇ!カオリがしっかりしてれば。ま、先生の事はちょっとアレだけど。『私、モテ期きちゃったかも』とか言えば?ぷぷぷ。」

冷やかすユウさん。
絶句状態のカオリさんを見て自分も冷やかしてみる。

「ふしだらな女でごめんなさい!とか言ってみたら?ふふふ。」

また…ガラスの灰皿を手にするカオリさん。
何で〜!冗談に決まってるでしょ?
ユウさんに乗っかっただけでしょ〜?

カオリさんは、そっとガラスの灰皿を置き…
「おぃ!ジジイ!お、さ、け!
早く出してよっお酒!いつまでもこんなジュース飲ませやがって、全く!」

怒りをぶつける所が違うと思いますが?
ジュースは貴方が頼んだんでしょ!
ジジイって!アキさんと同い年ですよ!
分かってます?カオリさん!

そう思いながらも自分とユウさんで、慌ててお酒を作りお出しする。
二人とも少し、はにかんだ笑顔で。

くぅ〜と、お酒を飲み、

「大体さぁ〜、パン屋も少し悪くない〜?」
あー、アキさんをパン屋と言い出すと厄介なパターンです。

「いい加減さぁ受け入れても良いでしょ?ダメなの?私じゃ。マコはどう?
わ、た、しは?」

「えっ、わたしは?と言われても何がですか?」
うわー聞かないで下さいよ!今は。
あたふたするじゃないすか…。

「だって前にさぁ〜マコ、私の事好きだけど…って言わなかったっけ?」

ぶーー!何、いきなり。あっーあれだ!

「あれは、そうじゃなくて…アキさん
一途なカオリさんが…って事っすよ!」

自分も忘れてた事、記憶力良いんだよな〜どうでも良い事の記憶が…。

「まぁどっちでもいいけど。なんだろな〜、あっ実は男に目覚めたとか?何かマコに対して優しいじゃん」

カオリさん…くだらないです。
というか、どっちでもいいって事の方が気になるんですけど?

「もういっその事、押し倒すか?既成事実作るしかないでしょ。ちょっとアッチの方は、自信あるし…テヘっ!」
舌を少し出し、片目を瞑りながら…

エロエロ女王 降臨!ですか?

「カオリさん前、自分は恋愛は真面目で純情だって言ったじゃないすか〜。そんなんじゃアキさんドン引きっすよ〜!」

「しょうがないじゃん。打つ手無いんだから。でもな〜色仕掛けは、効果無いか〜?マコとは違って!」

むぅ!悔しいが…その通りなので言い返せない。

ユウさんの電話が鳴る。


「アキが来るって!丁度、マコちゃんとカオリに用があるって。」

「え〜ホント?ヤバい、用ってあれかな?ん〜とうとう今夜、結ばれる?って事だよね。マコちゃん!」
カオリさんが…違う世界に行っちゃってます。

「違うと思いま〜す!自分にも用があるって言ってるんだから。妄想から戻って来てください!カオリさん!」

「ノリわる〜相変わらず。つまんないな〜マコは。って言うか、マコ帰ったら?邪魔!」

キツイっす、カオリさん。

「今晩はー。」

アキさんが来た。何やら荷物を抱えて。

「アキさ〜ん。私はアキさんだけだからね!わかってね。」
今迄とは、別人の様な声のカオリさん。

「ん?あー、はいはい。これ、二人にプレゼント。気にいるかどうかわからないけど。」
そうアキさんが言いながら、自分とカオリさんに大きな袋を手渡す。

「何?見ていいの?」
カオリさんが袋を覗き込みながら…

「どーぞ!」

アキさんのその言葉を聞き、早速取り出す。
白い布に包まれた物は、鞄だった。

濃い赤茶色の革で作られたビジネスバック。
カオリさんは、薄い茶色の革で作られたトートバッグだった。
思わず、二人揃って
「うわ〜スゴい!」

「いいんですか?何か高そうですよ。」
突然のプレゼントに興奮気味な自分。

「私に?い〜の?ホントに?ありがと、うれし〜。」
アキさんに対して興奮気味なカオリさん。

「何かさー、二人ギクシャクしてたから気分良くなるかな?って思って。でも必要無かったかな?仲良くなってるし。」

「アキさ〜ん、マコとは仲悪いままなの。でもアキさんの為に我慢して仲良くする!」

…まぁ、よくそんな言葉がでますね〜。
そんなにバッグが嬉しいのかな?

押し倒す!とか言ってましたよ。
気をつけてください、アキさん!


第3章      終

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