狂乱の森と呼ばれる森の主は魔王の娘だった。

病んでる砂糖

二十話『精霊』

『…して、王よ。』

呆然と少女と王のやり取りを見ていた雅はやっと口を開いた。

『なんじゃ。』

『この者は一体何者なんですか?』

王は少し考えるように目を閉じた。

『うむ、実はわしも詳しいことは知らなくてな。本人はあの森に住まう精霊だと言っておる。』

雅は驚いて目を見開いた。

『あの森は精霊も住んでいるのですか?』

『そう、私は森の精霊だよー、森の主ともお友達なんだ。』

今喋っている本人がその森の主だと気づくものは一体何人いるだろうか。
雅は何も気付かずに国王に聞く。

『精霊がいるにも関わらず、森を焼き払うのですか…?』

精霊は魔物と違って良いものとされる。精霊は日照りの続く村に雨をふらせたり、住んでいる者との相性にもよるが、部屋を掃除してくれたり、些細だがありがたいものとして扱われることが多い。

『まあ、後の事はそこにいるに涼介(りょうすけ)に頼んでいる。今日は下がって良い。』

『は、はあ…』

雅は戸惑いがちに国王が言った涼介とやらの方に目を向ける。
そこに居たのは灰色の髪の毛の青年がいた。少し病弱そうな印象だが、顔立ちはなかなかに整っており、使用人達が見たらあっという間に噂になるな、と雅は思った。そのとき、突如部屋の中で少女の掠れるような暗い声が聞こえた。

『…主。』

これには糸の登場に何も動じなかった国王と涼介という青年もその目に警戒の色を滲ませた。

こう、何?』

糸が振り向いた。普通であれば気を抜けば直ぐに五十メートル落下さえ易しいところだが糸が振り向いたそこには何も無い空中に浮く少女がいた。




短くてすいません。

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