狂乱の森と呼ばれる森の主は魔王の娘だった。

病んでる砂糖

番外 十八『雨(後編)』

『…さ!さ……!…らさ!更紗!』

『…!』

目が覚めた。

『更紗姉ちゃん!』

『あ…おい…』

声は掠れてほとんど声にならなかった。

『ああ、まだ起き上がるんじゃない、まずは水を飲め。』

栞が水の入ったコップを差し出す。

『あ…ああ、すみませ…ん…』

水を飲んで頭が少し冴えた。
更紗の周りには栞と葵、碧斗たち栞の弟子と花梨、さらには糸と銀が心配そうに見ていた。

『葵、大丈夫?』
 
葵はほとんど雨に濡れなかったため熱も出なかったそうだ。葵は元気に返事をする。

『うん!更紗姉は?お姉ちゃんは二日も寝てたんだよ?』

『そうなの!?』

『更紗、なにか辛いころはあるか?』

更紗は首を横に振った。

『更紗、本当に大丈夫?』

花梨が心配げに更紗の顔を覗き込む。

『お嬢様、ご心配をおかけしました。こう見えて丈夫なのです。お嬢様はご心配せず友よろしいのです。』

更紗は笑顔で答える。

『そうなの?駆けつけた時はあんなにうなされてたのに?』

まだ心配そうな花梨に更紗は微笑んだ。

『ほんの一時だけでしょう?』

そう言っていると突然店―栞堂に強風が吹いた。目を向けると真がたっている。

『目を覚ましたと聞いたから来た。お前がいないと食事も運ばれないし、本もないから退屈でな。まあ飯を抜いたところでどうということは無いが。』

『すいません、しかしどんなに弱い魔物であっても私たちの仲間なのです。仕事を放棄したのは謝ります。ならばいっそ打ち首に…』 

どこから出したのか更紗が小刀を鞘から抜く。

『あ、まて、早まるな!お前の忠義はわかったから、な、わかったから自害しようとするのはやめろ。』

真やほかの栞達もこれには焦り、今にも自害しそうな勢いの更紗を止めた。

『いや、そういうんじゃなくてな…まあ、なんともないのならいいが…』

更紗から取りあげた小刀を鞘に収め、真が言う。

『あんまり無理するなよ。俺は用事があるからこれで。』

銀はそう言って店を出ていってしまった。

『あと三日は安静にしていないとダメだからね。』

栞がそう言って乱れた布団を直す。

『私もちょっと用事があるからもう行くね、栞、なにかあったら連絡して。』

『主、今日はどこへ?』

栞が素に戻って聞く。

『ちょっとね、中央の方にね。』

楽しそうに笑っていとは店を出ていった。残された面々はそれぞれ看病に当たったり、用事があると出て行ったりした。

碧斗たちはしばらく葵の鬼ごっこに付き合って日没まで町中を走り回ることになった。

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