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狂乱の森と呼ばれる森の主は魔王の娘だった。

病んでる砂糖

十『少女達の正体』

『では、次に火属性の魔術を使って見てください。お手本を見せるのでしっかりと見ていて下さいね。』

先生が言う。次の瞬間先生の手から

生徒達から感嘆の声が聞こえてくる。碧斗はその火の玉をじっと見て先生の真似をし始めた。

『あっ!』

碧斗の手から先生と同じくらいの大きさの火球が出てきた。周りはすごいすごいと褒め始めて先生は眼鏡を少し直して天才だと碧斗をほめた。元々碧斗の髪の毛は黄緑がかった髪の毛だ。子供にしては高い魔力値だと先生は言っていたが、同じ感じの髪色である私もそうなのだろうか。

『お前の場合だと、魔力値はそこそこに高いから将来的には有望だな。』

木の上から聞き覚えのある声が聞こえた。

『へぇ…そうですか…て、えぇ!?』

思わず大声を出してしまう。幸いクラスメイトたちは気付いていないようだ。木の上から聞こえた声は昨日とこないだに助けてくれたあの少女である。よくよく見れば姿も確認できた。少女はなんでもない事のように木の上に座って実践授業を見ている。

『君はこないだの事どうおもっているんだ?』

少女が私に問いかける。

『家出の件ですか?』

私は疑問を返す。

『そうだ。』

普通であったならば昨日のことについて聞くのだろう。けれどこの少女はもう一週間程たったあの家出の件について聞いてきた。

『特にどうとも思ってませんよ。でも森に人間が住んでいるなんて…』

規格外の大きさの竜にも驚いたが、あの森は昔から子供がふざけ半分で入ればかえってこられないと言い聞かされてきた。なのに、なぜ私と同じくらいの年齢の子があの森にいたのか。迷子になって慌てている様子はなかった。だから住んでいると考えていいだろう。



(謎の少女―糸―目線)
少女―花梨―が森に入ってきてから私は何となく、その少女をつけるようになった。私は糸、という名前で、森の主だと、霧や銀に日頃から言われているのだが、実感がない。玲於が主じゃないかというと、霧には、

『その玲於が屈服してる相手が主だから、我が主は森の主なのですよ!』

と言われ、銀には

『本当に自覚無いのか?』

と言われてしまった。名前は父親が付けてくれたと遠い昔母が言っていたが、千年ほど前の話なので記憶が正しいかどうかはわからない。もしかしたら兄がつけてくれたのかもしれない。
なぜ少女に興味があるか。ただ単に興味があっただけだからだ。
暇だった事もある。昨日、森の集会所のような所で話したことを思い出す。

『森に入ってくる子供なんて珍しいですけど、ただ単に親の仕事の関係で魔物を見慣れた子だったのじゃないんですか?』

霧がいう。

『ご主人様は竜騎士であらせられますけれど、きっとその大きさに驚いたんでしょうね。森で育つ竜と、人間に育てられる竜は大きさの違いが半端じゃないらしいですよ。てか霧さん毎月の会談に出ているくせに出席者の方の職業ちゃんと覚えてないんですか?』

珍しく森に来ている更紗が言う。そして、人間の街で古郡 栞という名前で作家という仕事をしている魔族の栞が言う。栞も滅多に森には帰ってこない。

『もう五百年近く会談に出ていたんですからめんどくさいんでしょう。世代交代する度に名前と職業覚え直しですからね。私は知りませんけど。』

適当に最後を締めた栞に霧はわざとらしく言う。

『そうなんですよぉー、五百年ですよ?何人分の名前覚えたのか忘れるくらい沢山の人に出会って、それと同じくらい沢山の人と別れました。主が会談に最初からずっと出ていたら、今頃この国なかったかもしれませんね。』

『確かに霧さんが言う通りですね、前に玲於が、虐められて瀕死になって、助からないかもって声に出して言っちゃった時、主、絶望しちゃって、アレはちょっと死ぬかと思いましたよ。主は魔力封印されてるとはいえ魔力封印普通に解けますもんね。基準がズレてるから国一つ滅ぼすくらいのことは雑作無いですもんね。』

栞が言っている玲於というのはこの間、あの花梨という娘が来た時にいた竜、玲於の事だ。私ははるか昔この森を魔術で創り、人に虐げられた魔物を助けて、住まわせた。強制ではない。
住みたくないという者は怪我が治った後、野に返した。ほとんどの者はこの森に住み、出ていったあとに戻ってきた者達も受け入れて、普通に暮らした。最初の三百年は平和だった。今だって平和っちゃ平和だが、最初の森は周りに人が住んでいなかったので人が森に侵入してくる心配もなかった。しかし五十年ほど経ったある日。人間が森に入ってきて魔物を倒し、子供だった人間に近い姿をした魔物は連れ去られた。その魔物達は力づくで取り返したのだが、そこからこの森の魔物達と、その初めに来た人間の子孫が今の今までそんな小さな火種をずっと燻らせているなんて今の人間は考えないだろう。私が昔のことを思い出していると少女の声が聞こえた。

『あの!せめて、せめてお名前を教えてくれませんか!?』

『…糸。』

『え?』

聞こえなかったのだろうか。

『糸だよ、名前。ただの人間だ。』

少女はパァっと顔を明るくさせる。

『そっちも名乗れ。』

『私は花梨って言います。でも、竜に言う事聞かせるなんてただの人間ができることじゃないですよね。』

少し冷静になったのか、落ち着いて名乗った。そして少し不思議そうな顔で私を見上げる。

『あっ!』

そんな時、やらかした、と言う感じの声と共に火の玉が花梨のところに飛んできた。私は無属性魔術を使って玉の軌道を逸らした、後ろの壁にぶつかった玉は壁に傷一つ付けることなく消えた。玉を打ったのはこないだの傲慢そうな令嬢だった。

『あぁ!すいません、私、間違えて花梨嬢の方へ打ってしまいました!お怪我は無いですか?』

わざとらしい演技をしながら仰け反って少し変な格好になっている花梨に令嬢が、手を伸ばす。花梨は態勢を立て直して大丈夫ですと微笑んだ。

『大丈夫ですか!?』

ワンテンポ遅れて教師がやってくる。対応が遅すぎやしないだろうか。さっきステータスなるものを見たが、実戦経験者だとも書いてあった気がするが、生徒の数のせいなのだろうか。

『はい、怪我はしてません。』

よかった、というふうにあからさまに教師が胸を撫で下ろす。それにしてもさっきの令嬢はあからさまにこっちに玉を投げようとしていた。コントロールがよいので、私が助けなければ下手したら怪我をしたこんな小娘、死んでいたかもしれない。令嬢本人もコントロールの事は良いと思っているのか、急に軌道を逸れた玉の事を疑問に思っているのだろう魔術を使って私の姿は花梨以外に見えていない。故に今のは花梨の仕業だと他の人間達は考えるだろう。花梨が何か言って誤解を招く前になにか忠告しておかねば。

『おい、花梨。今私の姿はお前以外に見えていない。だから、今の事を聞かれても話題に私のことは出さないでくれ。』

『うん、分かった。』

以外に物分りが良いようだ。今も聞こえないくらいに小さな声で返事をした。

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