狂乱の森と呼ばれる森の主は魔王の娘だった。

病んでる砂糖

三『心配』

目が覚めた。私は森の木の根を枕に眠っていたようだ。身を起こすと、少女と青年が私のことを見ていた。

『この顔…。君、雨波 雅の娘ではないか?』

青年が聞いてきた。何故ばれた。

『な、なんでその事を…。』

青年はぽんと手を叩く。

『じゃあ更紗さらさが探している娘ってこいつの事じゃない?』

更紗とはうちの屋敷で働く使用人だ。

(え!?うそ!更紗はこの森まで来て私を探しに来たの!?)

すると私の心の中の声を見透かしたように青年が言った。

『え?君知らないのか、更紗は魔物だぞ、そんでもってここの森出身だし。』

『更紗が魔物なのは知ってるけど…。』

そう思ったとき森の入り口が騒がしくなったのを何となく感じた。

『母上様が来ているようだ?』

挑発的に青年が言う。

『何でそんなこと…。』

と私が言うと青年が言った。

『耳をすませば君も聞こえるんじゃないかな?』

青年に言われた通りにすると、僅かだが声が聞こえた。それは聞き間違いでなければ、確実に母の声だった。

『ちょっと行ってくる。』

青年は森の入口の方へ走っていってしまった。残されたのは私と、森の主と思われる少女。ここまで考えて私は首を傾げる。私はなんで自分と同い年くらいの少女を見て森の主だと思ったのだろうか。ああ、たしか竜が少女のことを主と呼んだからだった気がする。

『私が森の主だと思う理由はそれだけ?』

こちらの心を見透かしたように少女が言った。さっきの青年と言いこの少女といい、心を読む魔術みたいのを使っているのだろうか。

『まあそんな物じゃないけどそれらしいのは使ってるね。』

恐ろしくて変なこと考えられないな。などと考えていると青年が戻ってきた。後ろには青年の言葉通りに母がいた。

『花梨!ここにいたのか、なにか学園であったのか…?』

『べ、別にそんなんじゃないよ。』

母は気づかなかったようだが私は少女が学園と聞いてなにか考え込んだのを見た。

『話は家で聞くから帰るぞ。』

私は青年の方に目を向ける。少女は何処かへ姿を消していた。

『霧さん、すいませんうちの娘が…。』

母は青年に頭を下げる。

『いえ、それより、更紗を労ってやった方がいいと思いますよ。あいつ褒められるの好きですから。』

この二人は知り合いなのだろうか。私が二人をぼうっと見ていると、霧と呼ばれた青年がこちらに振り返った。

『ちゃんと心配してくれる親がいるのなら、こんなところに来ては行けない。』

そういう青年に聞く。

『あなたは?』

『ぼくはここの住人で魔物だ。君たち人間とは違う。』

さっき私をからかった時のような軽さはなく青年の顔は悲しげだった。それにしてもこの人が魔物だとは全然気付かなかった。

『普段はこんな見た目をしているんだ。』

青年ー霧ーは、私が1回瞬きをしたその次の瞬間に狐の耳と尻尾が生えた姿になった。私が目をぱちぱちしてると母が私の手を引っ張った。

『もう帰るよ。』

『うん。』

少女はいなかったが、霧は森の出口まで送ってくれた。霧は別れ際に念を押すように、

『もうここには来ては行けないよ。』

と優しく言った。私は頷いて母と森を出た。外では警備兵の人達が待っていて、私と母を見るなりこれで隊長に怒られなくて済む、とか戻ってこなかったらクビになっていた、などと言っていた。母は苦笑して、お騒がせしました、と警備兵の人達に頭を下げていた。私はその姿をぼーっと眺めて、母と一緒に家に帰ったのだった。

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