外国人と私

あん

Ep.42

下に降り、ミンジュンを探す。
人だかりができてるからすぐわかる。
「すごい人気だね、あんな奴放っておいてあれ行こうよ」
優馬先輩がそう言ってるのも聞き流して、私は人だかりの中に入っていく。
そこには機嫌の悪そうなミンジュンが座っていた。
『遅い』
私を見ていきなり話しだしたミンジュンの韓国語に驚く周りの女子たち。
『ごめん、結構混んでて』
『行くぞ』
人だかりから抜け出すミンジュンの背中を追う。
『楽しかった?』
『全然』
『だろうな』
ミンジュンの隣を歩くのは恥ずかしくて少し後ろを歩く。
『話しにくいから隣歩けよ』
私に合わせてゆっくり歩いてくれるミンジュン。
でも表情はまだ穏やかにはならなくて。
『何見てんだよ』
声もいつもより低い。ミンジュンと会って他の人より長い時間一緒にいた気がするけど、まだわからないことがたくさんある。
『なんで怒ってるの?』
ミンジュンの機嫌の直し方を知りたい。
『怒ってない』
『今日楽しくない?』
今何を考えてるのか知りたい。
『別に』
『じゃあなんで、』
ミンジュンの前に立とうとすると少しの段差につまずいて転びそうになる。
ミンジュンは簡単に私のことを掴んで支えてくれるけどすぐに離して歩き出す。
『危ないからちゃんと俺の傍にいて』
なんでそういうことを言うのか知りたい。
『それもちゃんと上まで締めて』
水から上がるたびに着るパーカーのチャックを指差される。
『ねぇ、ミンジュン』
『黙って』
怒ってるはずなのに私の腕を引く手は優しくて。
『ねぇってば』
『なに』
いきなり止まったミンジュンの背中に思いっきり顔をぶつける。
『ごめんね、楽しくないよね。お兄ちゃんに言っておくから先帰ろう?』
私がそう言うとミンジュンはため息をついて振り返る。
『確かにあいつに取られて楽しくないよ、ほんとはこうやって2人きりで回りたいけどお前が困った顔するから無理矢理できない』
私が困ってたの気付いてたんだ。なのに私はミンジュンのこと何も分かってなくて。
『ねぇ、頼むから俺にしてよ』


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