外国人と私

あん

Ep.13

『明日からは部活ないの?』
『テスト終わるまでないよ』
『じゃあちゃんと教えろよ』
『逆にちゃんと教わってください。さっむ』
お店から出るとまだ6月に入ろうとしてないから夜は寒くてブレザーを持ってこなかった自分を憎む。
『え』
私の頭にバサッとかけられたブレザー。
『いいよ、大丈夫!』
私がブレザーをミンジュンに返そうとするとミンジュンは私の肩にブレザーをかけてくる。
『俺寒くないから使えって』
ミンジュンの優しさにちょっと鼓動が早くなるけどブレザーから香る柔軟剤のいい香りに心が穏やかになる。
『いい匂い』
『やめろ変態』
『褒めてるんだからいいじゃん』
『お前もだけどね』
その優しい言い方。いきなりすぎてハゲそうなんだけど。
『なんかいつも匂わないのに部活終わりいい匂いした』
『汗臭いって言われたからね』
『俺、香水の匂い嫌いなんだけどお前のはいい』
うん、分かる。あんだけ香水つけまくってる女子に囲まれてたら気持ち悪くなるよね。
そばにいる私がそうだもん。
『って、人のこと変態って言えないじゃん』
『俺はいーの』
『意味わかんない』
『わかんなくない』
なんて、最近の日常会話になりつつある特に意味もない話で楽しいんだから不思議。
『じゃあまた明日』
『明日はちゃんと教えろよ』
『だからなんで私のせい?』
『あ、そうだ』
たまにあるんだけどミンジュンって人の話聞かない子なのかな。
ズボンのポケットから携帯を取り出す。
『ん、出して』
早くと言わんばかりに手を出してくる。
私がカバンから携帯を取り出すと私の手から携帯を奪って勝手にいじってすぐに返された。
『なにしたの?』
『連絡先交換してなかったから』
『する必要ある?』
交換できて実際嬉しかったのに素直にそう言えない。
『お前、かわいくねーな』
『はい?』
『嘘でも嬉しいとかありがとうとか言えよ。他の女子には教えてないんだから』
『ミンジュンの連絡先知ってるって広まったら私つぶされる』
『つぶされろ』
真顔でそんな事言わないでよ。ほんと怖いんだからあなたの取り巻き。
『もし、なんかされたら俺に連絡してくればいいだけだろ?そしたら俺がどうにかする』
そっぽを向いていうミンジュン。暗くてあんまり分かんないけど耳が赤い気がする。
『じゃあまたな』
『あ、じゃあね!』
ミンジュンの背中に手を振る。
家に入るとリビングにはお兄ちゃんがいて
「あれ、それもしかしてミンジュンの?」
最後変な感じになったからすっかり忘れてたブレザー。
「なんだお前らいい感じじゃん」
お兄ちゃんはニヤニヤしてる。
『違うよ!寒いって言ったら貸してくれただけ!返し忘れた!』
「いや、韓国語で言われても俺わかんないんだけど」
病気かな。最近ミンジュンと話しすぎて韓国語が日本語よりすんなり出てくる。
「俺はあいついいと思うよ?」
優しい笑顔でそう言うお兄ちゃん。
「好きならさもっと素直にならなきゃね、杏ちゃん」
「その呼び方やめて気持ち悪い」
お兄ちゃんの唯一嫌いなところは私が嫌がる杏ちゃん呼びをするところ。
お兄ちゃんに言われると気持ち悪い。

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