ハキリアリのアンリ

泉 玲

どうやって出よう

「おい、アンリ、そんなんじゃいつまでたっても出られないぞ。せっかくあいつが良いもん置いてったんだから、使わせてもらおうぜ。ほら、これに乗れよ。」

そう言ってギオスが指差したのは、コドモが入れていったのぼり木だった。

「これに乗る?で、それからどうするんだ?」

アンリがそう聞くと、ギオスは得意げな顔をして答えた。

「簡単さ。アンリ、お前さんがこれに登ったら、俺がこの強い立派な角で挟んで持ち上げるのさ。上の穴に着いたら、お前さんはそこから出られるだろう?」

「あぁ、なるほど!名案だね、ギオス!」

アンリが褒めると、ギオスはますます得意げな顔になった。

「行きは良いけど、帰りはどうするの?」

エレナが落ち着いた声で聞くと、アンリとギオスはあっという顔をして、考え込んだ。

「本当だ。帰りあのツルツルの壁は登れないなぁ。やっぱり皆一緒に出なくちゃいけない。」

そうアンリが言うと、ギオスは驚いた顔をした。

「お前さん、まだ俺をここから出そうって考えてるのかい?無理だって言ったろ。」

「無理かどうかはまだ分からないじゃないか。僕はギオスを置いて自分達だけ逃げるなんて出来ない。とにかく何か作戦を考えてみようよ。」

ギオスはしばらく黙った後、意を決したようにアンリとエレナを見た。

「ありがとうよ、アンリ。まだ諦めなくてもいいんだな。ダメかも知れねえが、とにかく精一杯やってみるぜ!」

そう言ったギオスの顔は晴れ晴れしていて、アンリもホッとしたのだった。


それから3匹は必死で脱出策を相談し始めた。

「貴方がこの木を持って上にぶつけてみても、蓋は開かないの?」

エレナが提案し、ギオスはのぼり木を挟んで持ち上げ、力一杯蓋にぶつけてみた。しかし、蓋はガッガッと音がするばかりで一向に開きそうにない。無理そうだ。

「あのコドモがやって来て蓋開けた時に、素早く飛んで出るのはどうだ?お前さんたち乗せてさぁ。」

今度はギオスの提案。

「うーん、良いと思うけど、向こうも警戒しながら開けるのに、貴方それに捕まらないくらいに素早く飛べるの?」

エレナが反論すると、ギオスは少し考えて肩を落とした。

「飛び立って勢いに乗るまでにちょっと時間かかるからなぁ。」

うーん、と3匹は考え込んでしまった。

あ、とアンリがひらめいた顔をした。

「良い事思いついた!ギオスがこの木を横の壁にぶつけて箱を倒すんだ。そしたらこの土が蓋の穴から外にこぼれるだろ。そこにコドモが来て、蓋を開けて慌てて土を戻している間に飛んで逃げるってどう?」

「うーん、そんなに上手くいくかしら。」

「じゃあ、こういうのはどうだ。箱を倒したら皆土の中に隠れておくんだ。そしたら、コドモは俺たちが逃げたと思って蓋を開ける、そして飛んで逃げるんだ。」

「うーん、上手くいけばいいんだけど。」

そう話し合っているところへ、ベランダの扉をガラッと開けてコドモがやって来た。皆とっさに土の中に隠れた。

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