ハキリアリのアンリ

泉 玲

コドモ再来

「ほら、起きなさいアンリ!起きなさいって!」

「ん〜、もうちょっと…す〜す〜」

「あっこら!起きなさい!早く起きないと、朝ご飯食べ損ねるわよ!」

「ん〜、朝ご飯?もうそんな時間…?」

アンリはやっと、むっくりと起き上がった。
これは毎朝恒例の光景だ。アンリは朝にとても弱く、エレナとアンリが隣同士の部屋である事もあり、こうして毎朝エレナが起こしに来てくれるのだ。

目をこすりながらヨタヨタと歩くアンリと、それを見て呆れた様子だが歩調を合わせてあげているエレナの2匹が食堂まで行くと、もう皆が集まっていた。何故か雰囲気が少し張り詰めているようだ。

エレナは素早くゴーデムを見つけると駆け寄っていった。アンリもあわてて後を追いかけた。

「ゴーデム、おはよう。何かあったの?」

「あぁ、エレナか。女王様がやってきて、昨日のコドモの件について話があったんだ。この時期は特にそういう事件が多くなって犠牲になる奴も多いから気を付けろって。ほんと恐ろしいよな。」

そう小声で教えてくれたゴーデムも、顔がこわばっている。よほど深刻な話だったのだと察し、2匹とも言い表せない恐怖を感じた。特に昨日エレナに助けられたアンリは、自分の身は自分で守らねば、と一層気を引き締めた。
その後明るくならない雰囲気のまま、もくもくと朝食を食べた3匹は一緒に刈り場まで行き、それぞれ仕事に移った。

昼休憩の直前、アンリは最後の葉っぱを受け取り運んでいた。少し大きい葉っぱだったせいで他の皆よりペースが遅く、大分遅れてしまっていた。

「はあ、はあ、よいしょっと。」

疲れたアンリは重い葉っぱを下に置いて周りを見た。今はちょうど巣と刈り場の中間地点で、皆の姿はもう見えなくなっていた。

「ほら、ここだよ、昨日葉っぱがゾロゾロ歩いてるのを見たんだ。」

「葉っぱが歩くわけないだろ?何かの見間違いだって。」

その時、上から轟音が降ってきた。昨日の子供が兄を連れてまたやって来たのだ。

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