影が敵になったら人類滅びました。~前段~

ノベルバユーザー222490

第一話 ガラスの中の世界

「げーむっゲーム!ゲェームゥ~。きどうだぁぁぁ!」思わず軽く歌を歌いながらゲームを起動する。ついうっかり「にゃひひ」とか言った日にはさらに我ながら気持ち悪いと感じざるを得ない。――大体俺はそういうことを言うほどにスポンジ頭な人間ではないのだ――が、これぐらい上機嫌だっていいじゃないか。俺にとってルミナストレイスは現実よりも現実でありたい世界なのだ。ここでは、香月一輝という人間の代わりにロメリアが俺の代わりに動いている。俺よりさらに理想的で、完璧な偶像。これこそファンタジア。これほどにふざけたリアルなんて…… よし入ったな。それでは、任務、開始である。 ロメリアさんは小柄な美少女さんだ。ちゃんとした言葉で話さないとな。俺の汚い言葉とはわけが違うんだ。 っと、その前に、この挨拶だ。「皆さんこんばんわ。今日は何をしましょう?」

 会社にて。俺の脇に置かれた時計を見る。仕事終わりの時刻はとうに1時間は過ぎているだろうか。だが、ノルマが終わらなければ帰ることは許されない。俺が考えるにはこんなもの効率が悪いんだが、どうしようもない。所詮自分で変えれるのは気分ぐらいなもの…。いや、気分すらも仕事によって変えられている気がする。どう考えてもやっぱりリアルの世界は面倒くさい――本日三回目ぐらいの思考に陥りかけてから――いや、どうでもいいようなものだ。ただ、別の世界で生きるためのお金を稼ぐ以外には……価値は無い。断言出来よう。 嫌気が差す仕事が終わり、家に帰ってきた。一人で向かい、一人で働き、誰とも話すこともなくただ、ノルマをクリアするためにひたむきに畜生と化し、一人でどうしようもなく帰る。特別何もすることもなく、何にも興味がわかなかった。帰り先は、俺の誰もいないひっそりとした家。華やかな街の中で、息をひそめた暗い部屋。電気もつけない。邪魔者であり、生活の明るさを下げるだけだ。 肩を痛めつけ、手がすべりそうになる原因の荷物を置いて。ごはん作ったら再び仕事ゲームをしなくてはならない。ごはんは買ってきてもよいのだがな。まぁいい。大体、さっさと遊びたいのだ。速めにしないと、今後に響くからな…今回のイベントは特に。それをクリアすること。それが、自らの任務だ。そう思ってパソコンの前に座る。俺の……お気に入りのコイツ。いつでも、この無理して買えたパソコンはかわいらしいと思う。愛着がどうしようもないほど湧いてくるのは、誰でも分ってくれるだろう。っと、思考がずれた……。帰り道でも攻略は考えたがなるべく無駄な時間は過ごしたくはない。 起動され、明るくなり始める画面の前で思案する。 今日は…………どうしようか。ふと、悩み。一つ答えをだしてみようとした。今日の帰りは早い方だ。まだ、必須事項のイベントをやるまでに時間が空いている。誰かが居るといいのだが。速めにさっさと終わらせて猶予持って遊びたいものだ。パソコンを起し、ゲームを起す。からの、ログイン。仲間やつらはいるようだ、とてもいい情報だな。彼らとの会話もまた一つ日課だ。他愛のない会話をしながら、ゲームを楽しむ。これのために生きているといっても過言ではない。ゲーム、そのために課金して苦しむというのも馬鹿なことだ、と言う人もいるが、俺はそうは思わない。ただ、そこに限度があるというだけだ。限度を超えてやるのが馬鹿馬鹿しいだけだ。まぁ、俺自身無課金でやりきるという事にもあこがれはあったが、よくよく思い直せばゲーム何て楽しむためのものだ。疲れるようになってはどうしようもないだろう。本末転倒と言うものだ。もし疲れたとしても、会話という最高のゲームがある。仲間は素晴らしいものだな。 だが、日々の生活をある程度こなしながらゲームをするということの素晴らしさを一体どれだけの人が知ってくれているだろうか………。いや、多分知らないだろうと思う。ひとまず、『宿題』は終わらせなくてはな。 完全に仕事に入る俺はもう、何も気にしない。がむしゃらではなく。ただ、マシンガンを連射するかのような流麗さで完遂するのみ。
 ――あれからから2時間くらいはたっただろうか。多分今は12時前だ。時計を横目に見ると眠気が急に増してくる。睡魔はやはり強敵であるな。 明日の――金曜日だ。そう、今日木曜日は本来国民の休日だったはずだ―の予定を思い浮かべて、顔をしかめる。そろそろ寝ないと危険か……。寝ることが億劫だった。無駄な気がしてならなかった。ゲームをしていたら体力が回復できたりしないのだろうか。ポーション。魔法。なんでもいいが、在ったらいいのにと願う。エナジードリンク、そいつは違う。ヤク厨はお断りだ。そう思った夜中一時のこと。少し遠くに見える窓からは闇とともに、明かりが見えて暗くなかった。街明かりか……。軽くうとうととしかけた時、イヤホンからチャットが届いた音がする。どうやら友人の一人からのようだ。危うく寝るところだった、感謝しなければな。とりあえずは終わらせているし、寝てもよかったんだが。「やぁ。起きてるかい?面白いものを見つけたんだ。ちょっとそこまで行くから待っててくれないかな」 そういきなり言われても困るんだがね。「はぁ!?……まぁ、分かった。ここにいとく。」「おっけー」 なんとも軽そうな口調で話しかけてきたそいつに、――キャラ名はアルスだっけか――リアルの俺はうつろな目で、画面の中のキャラクターははつらつと答える。現実とは大きな違いだ。大体、二つの世界が……。 いや、どうでもよかったな。それよりも、こんな時間に話しかけてくるのはどうなのか。あいつは……いや、あいつらにとっては今からが本領発揮といったところか。全く、うちのギルドのメンバーは元気な事だ。 それに、今の俺はあまり体調が良くないだけで、普段のことを考えれば当然だったな。彼ら曰く、昼間から働いているから、夜中の方が元気と言う事らしいが。夜行性生物らしいのだが、人間、本来は昼間の生き物なんだがね。 実際はどうなのか。ああ、これも、あいつが良く言う「自分」の情報とやらの一つはどうも胡散臭いからな。すこし遠くから仲間がくる。テレポートで少し遠くに出てからわざわざ走ってこっちに向かってくる。何がしたいんだ。町の中ならどこでも移動は使えたはずなのだが。用があるならぱっと移動してほしいものだな。 睡魔との戦闘はいつだって過酷なんだ。ここで寝てしまうわけにはいかない。そのためにも早く見たいのだが……(画像は非常に近距離で直接渡さなければならないという面倒くさいことがある。彼とは連絡先を交換してないからこそあまり話したくない事の原因であるのだが。 さて。 何故か個人情報がダダ漏れなアルスの到着。口が緩いから本名とか、当然住所までばればれである。いや、正確には彼自身が言っているのだから……もはや作り話であることを疑いたくなるほどなのだが。ただ、その個人情報の出し方がうまいからそれっぽく見える。チャットを送ってきたそいつに聞いてみることにした。近くだったら密会のような形でチャットが出来る。密会では、アイテムの受け渡しが出来たりするのだが…。まぁ、あえてする理由はない。雰囲気だ。一応、利点はあるけどな。「それでー、おもしろいものって?」「まぁ、コイツをみてくれよ。」 一体なんだろうか。口が軽いアルスのネタなんて…。大概どうしようもないと思うのだが。「ちょっとまってね。読んでみる」 コイツが一体なんだと言うのか。 何かが気になったが相変わらずに 彼の意図が全く読めず、意味を尋ねた「いやね、これをもう少し見てくれれば分かると思うんだ。」 と、返された。記事を読め……か。ふむ…。 斜め読みで……要約するとこのゲーム『ルミナストレイス』の主要都市を中心としてヴィル、つまり8つの都市で同時間に黒いアイコンのない謎物体があらわれた。ということらしい。 なんでも、人間のような形をしているのに、npcでもプレイヤーでも、敵でもないという。 そうして、俺はようやく気付く。「……もしや、これは。以前に見かけたあの人型のもやもやと同じということ?」 確認して、確信に至った。「ようやく気付いてくれたね。そういうこと、だ」 以前見かけた――あれはダンジョン内だが――同じように見かけた。 敵でもないなら……と、あの時はバグか何かだろうと思った。 めったにないバグだなとあの時は笑ったものだったが、 どうやら運営は対策していない……となると、おそらくはバグではないんだろう。という結論が出ていた。中にはゲーム内に敵――例えばハッカー――が入り込んでいるのだという荒唐無稽な意見もあった。が、その意見は即座に反対。 つまり、あの不気味で意味の分からないやつは、実はそこら中にいたというわけだ。「お前さん……最近来てないやつがいるのを覚えているか?」 ……わからん。フレンド欄を見て確認したが不明だ。「大魔法好きで良くMp切れを起こすドジな奴のことだよ」「ああ、あいつね……」「ただ、それがなにか関係あるというのね?さっきの記事とさ。」 意味深げに答える友人に多少の興味がわいた。 普段からあまり来ていなかったやつだからそこまで覚えていない……一週間に三度でも着ただろうか。かすかにユーザーネームと普段着ている装備を覚えているぐらいの認知度だ。確か、コメートとかいう名前でやっていただろうか。時々ともにダンジョンに潜るときにはいつも大魔法を使っていたような気がするが……。「そいつがどうしたというのさ。というより、その『コレ』とやらを見たいのだけど?。」「おお、そうだな。こいつのことだ」 そういって写真が送られてくる。……黒いナニカに触れたプレイヤーが消えていくシーンだろうか。黒い……? そういうことか。それもこれは…?まさか。 あいつか。あいつが消えているところか。それをまぁ良くネタにしたものだがな。「この、黒いナニカに喰われたとでもいうの?」「そういうことだ」「たださ、ログアウトするときに映像に乱れが時々起こるなんてことはよくあることじゃんか。」「そういうなら勝手だがな。これは一大ニュースの可能性しかないだろ」「『アカウントが食われた』なんて題でもつければ大受けだぞ。」「まぁ、そうかもしれないけどさぁ。」「というわけだ。ちょっと調査に付き合ってくれないかね。どうせ、暇だろう?この時間は」「……暇ってなぁ。お前さん」「とりあえず、明日からだ。やるだけやってみるとしようぜ」 無理やりかいなぁ「まぁ……いいけど。」

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