澄み渡った青空へ――

ノベルバユーザー222490

第三話 知らない事

 待たせたな。私だ。さて、ブローディア君は何をいってくれるんだろうなぁ。楽しみだな? おっと、空が落ちるって?んな、迷信は、私でも作らんぞ。バカにするでない。 代わりに見る位地を落としてやる。これが君らにはちょうどいい。天罰にしては軽いがな。

 僕の名前であるシェフレラや、お姉ちゃんの名前のルピナスみたいに、あの子……箱の中でみつけた彼にもお母さんが名前を付けてくれた。 それが、ブローディア。新しい名前。 元々名前はあったと思うけど、あの子は記憶がなくって、覚えてないってことみたいだった。
 僕は階段を駆け上がり新しい名前を伝えに行こうとしていた。「空が……違う……?って……?」 お姉ちゃんが不思議がってる声を出しているのを聞いて、階段途中で止まる。「うん、普通こんな灰色だっけ?」 ブローディアが窓から見える空を指さしてた。 普通、空は灰色だと思うんだけどな。何か変なのかな。「これが普通ですよ。ブローディアさん」 もう、諦めよう。僕の口調。 とりあえず、階段を上りきった。降りるよりつらいね……。やっぱり。 少し急すぎると思う。この階段。固いし。痛い。「ブローディアって、自分のこと?新しい名前?」 ブローディアが僕に聞いてくる。「その通りです。お母さんが付けてくれたのですよ。新しい名前」「おー。お母さんが新しい名前つけたの!?ブローディア?って名前?」「うん。新しい名前。お姉ちゃんもいい名前だと思うよね!?」 新しい名前を伝えて、反応を見る。「わたしのお母さんは『ねーみんぐせんす』があるよね!すごいいい名前だと思うっ!」 ネーミングセンス。ね。アクセント違うよお姉ちゃん。「ねぇ、どう?気に入ってくれた?ブローディア。」 お姉ちゃんも確認してる。「ああ、いい名前だ、気に入った。」 ブローディアはそういって、新しい名前を受け入れた。「でも、ちょっと長いかも。ブローディア……何かいい略ないかなぁ。」 略……ってねぇ。そのままでもかっこいいと思うの。「あ、略しても、いーい?」 お姉ちゃんはブローディアに問いかける。 今気づいたみたいに言ってるのは良いのかな。 そのブローディアと言えば外を眺めているようだった。見た目の割におとなしい人なのかもしれない。 でも、僕とは違う雰囲気ふんいき。「まぁ、好きにしてよ。もともと君らにつけてもらったんだ。」 寛容かんようで優しげなオーラを纏っているように見える。「フレラ、何かいい案ある?」 お姉ちゃんが僕に聞いてくる。 でも、アイデアなんてない。「うぅー……何も思いつかないよぉ……ごめん。お姉ちゃん」「フレラでもだめかぁ……何かない?ブローディア」 え、本人に直接聞いちゃう? で、できるのかなぁ。「じゃぁ。ブロード。でいいよ。」 あ、決めれるんだ。「ブロード。ブロードね。いいわ、それで呼ぶとぉする!」
 お名前決まったそうです。「そういえば、さっきなんの話してたの?」 耳に軽く入ってきた情報では少なすぎる。 空が違う色だって、ことぐらいしか僕は知らない。聞いてない。「お空の話だよ。えーっと、シェフレラ?だっけ。」「あ、はい。シェフレラです。お姉ちゃんから僕の事、聞いたんですね。」 ブローディアは僕の事を知ってる。なら、お姉ちゃんの名前も分かってるのかな。説明する手間が省けた。「まぁ、そうだ。こっちのルピナスから聞いたよ。」「お姉ちゃんが教えたんだ?」 念のための確認を取る。 ……確認です。「そうだよ。ブロードが、『自分に名前つけるなら、二人の名前を教えてくれ』って。」 なるほどね。いや、既に分かってたけど。「そういえば、なんで空が灰色なことにびっくりしてたんです?」 気になる。空が灰色なのは普通の事だから、驚いてる方が不思議だったんだ。「自分が最後に見た空はもっときれいな青色だったからね。」 青色?空が? 気味が悪い……かも。想像できない。 というか、他の所ってなんだろう。ここの島のどこかなのかな。「それって、どこで見られるのですか?」「わたしも気になる!この島で見れるのかな?でも、ないと思うんだけどなぁ。」 お姉ちゃんもそう言ってる。 灰色以外の空なんて、聞いたこともない。「ここじゃないよ。だって、初めてルピナス達が自分を発見したのは船の中だっただろ?」 ふね……?あの、箱の名前?「『ふね』ってなに?ブロード。わたし、聞いたことないよ?フレラもそうでしょ?」 お姉ちゃんが僕に肯定こうていを求める。 いや、聞くまでもなく知らないって、分かってるでしょ。「うん。見たことはおろか、聞いたこともないよ。知らない言葉。」 これが、多分島民が全員一致での答えのはず。 少なくとも子供は知らないと思うんだけど。 ……ってか、あの箱の事が『ふね』っていうなら見たことはあるってことかな。「そうか、知らないんだ。船のこと。」 ブローディアは少し落胆してるように見えた。 知らないんだから仕方ないでしょ。 何て、言う意味……無いか。「でも、ブローディアが乗っていた箱が、『ふね』って言うんですよね?きっと。」『ふね』なんてものは、この島では見たことすらない。だから、想像するしかない。「そのとーり。へぇ。シェフレラは頭がいいんだね。」 い、いや、これは頭がいいとかそういうことじゃない。 ただの分析……頭なんてそんなに使わないんだけど。「そうだよ!フレラは頭がいいんだよ!だからわたしの自慢なの。」 お姉ちゃんが急に声を上げて言う。 よほどうれしいらしい。
 ……僕も嬉しい。 けど、そんな風に大袈裟おおげさに言われるとちょっと気恥ずかしいかな?「で、ではですけど。その『ふね』って何に使うんですか?ブローディア」 いてもたっても居られなくて、空気を換える。『かんわきゅうだい』って言う、アレかな。 本で読んだことしかないから使い方、合ってるかな……。「そっか、船を知らないから、どうやって使うかも知らないのか。説明しよう。」 そう言って、狭い二階のこの部屋でいきなり空を仰ぎあおぎ始めたブローディア。 口が緩んでいて楽しげに見える。 自慢……?
「船はね、島から島へと渡るんだ。自分の場合は違ったけどさ……」 最後の方は小声で上手く聞き取れなかった。 ちが……った……?
「島から島へって、どうやって!?というか、他の島?なんてあるの?わたし、聞いたことないよ。」 お姉ちゃんが僕の代弁をしてくれた。 でも、ちょっと、勢いありすぎじゃないの? ブローディアが軽く引いてる。 それより、他の所があるなんてのも知らない。 移動器具っていうのは分かったけど。 つまり、ここらへんを走ってるあの車達と同じなんだよね。「……なんだか、自分達の常識とここの島の人達とは大きな差がある気がするよ……。説明が長くなりそうだ。使うときにでも説明するよ。」 ブローディアは諦め気味に言ってる。 確かに。差が大きい。掘れば掘るほどもっと差が広がっていく気がする。「そうですね。もっと大きな差も見つかりそうです。」 相槌を打つことにした。きっともっと差はある。 けど、いま本当に聞いてみたかったのはそこじゃないはずだよね。お姉ちゃん。 話しずれてる事気づいているよね。 そんな意味を込めて 視線をちらっと送ってみる。 って ……こっち、見てないし。お姉ちゃん。ブローディアばっか見過ぎじゃないの。 ねぇ!ってば! 怒りの感情こめて軽くつついてみる。 お姉ちゃんは気付かない。おい。
 僕は知ってる。明らかに僕がお姉ちゃんに偏ってることを。けど、それは良いことだって思ってるのも僕だって分かってる。 つまり、言いたいことはね、 ……っ!?
「それより、空の話。しないとね。始めにそれだったよね?話しそれてしまったし。」 ブローディアが僕の思考ごと遮って、幕を切る。
「自分はね、ヨーロッパから来たんだ。この島から見てどこにあるのか分からないけどさ。ここよりももっと大きなところでね。今は、もう何もないだろうけど。……そんな所だよ。空が青い所は。きっと他のところもそんな感じのはずさ」
 ブローディアはそういった。 そして、続ける。「だけど、詳しい所はどこだか、分からないな。もう、覚えていないんだ。多分ね、自分が覚えているのは基礎知識だけだよ。生きるための。」 そうして、終えた。 僕と、お姉ちゃんに言えることはなかった。 聞きたいことが多すぎたけど、聞けない。
 ブローディアの顔は悲しげで寂しげで、諦めたような顔。 きっと、何も知らない人がみたら、 大丈夫? って、声を掛けたくなったかな。
 部屋の中は空色のように、しらけていた。

 あ、 はーい。私だよー。 え?前の人? ああ、あれはね。出張ったの―。あ、帰ってくることはないよ。 顔が怖い?え、ただの笑顔だぞ。怖いとか言うと、また消されちゃうゾ☆ 真実って怖いよね。 こう、よくあるじゃん。

 お前は、真実を知りすぎた。
 ……バーンッ
 こうやって、人は消えていくんだよ。君たち。

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